20200804 畑迫ICT利用促進会議まとめ
はじめまして、2020年6月より津和野町地域おこし協力隊として活動を始めました秋田出身の渡辺郁海と申します。よろしくお願いいたします。
題名にもありますが、まずもって「ICTって何?」という方もいると思うので簡単に説明します。ICTとは、Information and Communication Technology(情報通信技術)の略称です。ITが、Information Technology(情報技術)の略称であるのに対し、ICTにはCommunication、つまり通信という意味が含まれることがわかります。ITは原理的な情報技術そのものの意味合いが強いのに対し、ICTは社会生活に適用・応用させ人やモノが繋がるための技術という意味合いでよく使われます。海外ではITよりもICTという用語のほうが一般的であるともいわれています。
ICTについて簡単に説明したところで、2020年8月4日に行ったICT利用促進会議の内容について、まとめていきたいと思います。ICT利用促進のパートナーとしてソフトバンク、島根県西部県民センターの方と共に、意見交換を行いました。
会議前には畑迫の観光資源を知るために、地区内を巡り、畑迫には優れたコンテンツがあるという認識を共有することができました。
その後行われた会議の議論内容は以下の通りです。
ソフトバンク側のソリューション紹介
ソフトバンクの持つソリューション事例をご紹介いただきました。例えば、オレンジセーフティネット、e-kakashi、MONET、スマートコーチです。以下で概要を述べますので、興味のある方は詳しく調べてみてください。
オレンジセーフティネットは、認知症徘徊者の捜索支援サービスで、地域の住民が協力して徘徊者の情報を共有することで、事故等を未然に防ごうとするものです。
e-kakashiは、農業を科学的に支援し、最適な生育環境へナビゲートするサービスです。経験に基づく農業を行ってきた高齢農家から、若手農家が技術の継承をうまくできない問題を解決できるものとして期待されます。
スマートコーチは、指導者に恵まれない地域にいる生徒でも、遠隔地にいる指導者に部活動の動画を送付し、返ってきた添削動画によって遠隔指導を受けられる仕組みを提供するサービスです。
MONETは、移動で困る人々をゼロにするため、移動に関する新しい価値を生み出すことを目的としたサービスです。現状の取り組みについて端的に表せば車のIoTに関するデータプラットフォームといえます。将来的には自動運転車の運行システム構築の円滑化等を視野に入れており、現在は有人車によるオンデマンドバスの運行等により運行データを収集しながら、移動の問題を解決しようとしています。
その他にもソリューション事例はありますが、代表的なものを挙げさせていただきました。
長野県伊那市の移動診察車事例紹介
遠隔医療の点で畑迫と類似性のある、長野県伊那市の事例をソフトバンク側からご紹介いただきました。伊那市とMONET Technologies株式会社が連携し実施された、医師による診察を遠隔で受けられる移動診察車の実証実験事例です。
まず、看護師が車両で患者の自宅などを訪問します。車両内でビデオ通話により医師が遠隔診察を行い、看護師が医師の指示に従って患者の検査や必要な処置を施すという仕組みです。車両はMONETの配車プラットフォームと連携させ、効率的なルートで患者の自宅などを訪問できるようにしています。
畑迫遠隔医療相談会について
畑迫公民館で先日行われた、ビデオ通話機能を利用した遠隔医療相談会の動画について、感想を共有しました。
畑迫公民館長は、はじめ診察を受けたがる方が少なかったが、一人二人と経るごとに、皆さん進んで受けたがるようになり、遠隔相談に対する心理的なハードルを下げられたように感じたと嬉しそうに話していました。
ソフトバンクの社員の方は、構想をしている自治体は多くある中で、実際に実行に移し、前向きな成果を残せている点が素晴らしいという意見がありました。
また、相談会を実施することで見えてきた課題について議論を重ねました。
課題のひとつとして、相談会に参加いただいた方の男女比に差があり、男性が少なかったことが挙げられます。男性にとっても参加しやすい環境をどう作っていくのか、この点について前向きな議論を交わすことができました。
ウェアラブル端末を利用したバイタルデータの遠隔医療への活用についても検討を行い、ソフトバンク側からは、可能ではあると思うが、システム構築には相応の費用がかかるとの返答をいただきました。
そうした課題に関する議論の中で、移動手段の乏しい高齢者が公民館まで移動する手段をどうするのかという話が出てきました。
高齢者の移動問題について
西部県民センターとソフトバンク側から、自動運転車によるオンデマンドバス導入の意見がありました。これは、現状においては技術的な問題があるので広がりにくい話ではありますが、将来を見据えて今動いていく必要のある、未来につながる話だろうと感じます。
また、津和野町中心部や畑迫地区を巡るツアーバスの導入検討も話題に上がりました。そのバスがツアーで稼働していないときは、オンデマンドバスとして利用することで、収益性も多少上げることができるのではという見解でした。津和野町中心部から畑迫への観光客誘客の観点から、ツアーバスは検討に値する議論です。
7月31日に行った畑迫まちづくり委員会とのご飯会では、相談会等に際して公民館へ移動する場合には、自治会ごとに互助運送を行ってもらうことが必要という意見が出ました。
こういった議論の中で、より住民の負担が少なく継続性のある仕組みを実現するべく考え続けていきたいと思います。
関係人口創出について
種々の議論をする中で、畑迫地区の関係人口創出の話題も出ました。西部県民センターの方が関わっている島根県の教育事業の仕組みの中で、地域留学をする仕組みが高校生までは整っているのに大学生になるとぷっつり切れてしまうことが課題であると話していただきました。しかし逆に畑迫にとってはこれはチャンスではないかと。短期滞在型でもいいので、畑迫で大学生の地域留学パッケージを作ったらおもしろいのではというご提案でした。
BtoCの話だけでなく、BtoBの関係人口創出も可能であるとも教えていただきました。例えばカゴメの事例で、社員研修の場の提供や、試食会地域・各種農産物の提供地域としての関わり方などが考えられるとのことでした。
地域の人材マップ作成検討
「畑迫の農業マップを作りたい」
地区内には、農業や手仕事の匠がたくさんいるけれども、点在していて、どこに誰がいるのかわからない。それを見えるようにして、いろんな人をつなげたい。
畑迫公民館長のそんな思いから、話がどんどん広がっていきました。
まずは農業や手仕事の匠、いずれ地域の様々な人材の情報を掘り起こしてマッピングする。マッピングを高校生のフィールドワークとして行うことで、高校生が畑迫と関わって学ぶ場にできる、マッピングにGoogleMaps等を活用しICT教育にもつなげる、大人も子どもたちと関わる機会を持ちつつ触発されてICTについて興味を持つ、そんな好循環が期待できます。
小さな拠点事業で作っていく交流拠点や宿泊拠点を、匠たちと観光客を体験ツアーでつなげるハブにしてもおもしろい。
掘り起こして見えるようになった地域の人たちを、SNSでつなげてオンライン上で地域のコミュニティをつくる。それをツールとして、独居の見守りなど様々な使い道で活用していく。
実際に形にできそうで、なおかつワクワクする議論ができました。
今後の方針
今回の会議で、様々な課題やできそうなことが少しずつ見えてきました。今後ソフトバンクと連携して相互にICTソリューションの提案をしつつ、利用促進に向けて話を具体化させていきます。
今後も集まって話をする場を設けていく方針を共有しましたので、都度、進捗をまとめていきたいと思います。
後記
「畑迫の住民の半分程度は高齢者。ICTの活用を進めても、高齢者がそれに対応するデバイスや知識を持っていない場合、どうすればいいんだろう。」自分の中で、そんな問いが長くありました。
そこで、「畑迫の高齢者の方って何人くらいスマートフォンを使ってるもんでしょう。」という疑問を会議で投げかけてみました。
「70歳くらいまでは使ってる人多いが、70歳以上の人はほとんど持ってないんじゃないかな。70歳くらいまでの人でもFacebookとかの使い方はようわからんし、どう便利なのかもわからんって人が多いと思う。」という答えが返ってきました。
たぶん使っていない人もスマートフォンが便利なもんなんだろうなあと思ってはいるけれど、実際に何が便利なのか、自分がどこまで使いこなせるのか、よくわからんから使わなくていいなあ、という人が多いんじゃないかなと感じました。
メッセージや電話くらいしか使わない人も、どんなアプリが自分の生活を便利にするのかようわからんし、使い方もわからんくて不安って人が多いんだと思います。
そういう人たちが使ってみたくなって、なおかつ使いやすくて、住民の皆さんの生活が便利になるサービスを作っていきたいなあと思ってます。