極私的オタク遍歴(2010年代半ば)

オタク文化に関してやたら考えてしまう。けれど、ビッグウェーブには乗れていなかったという感覚がある。だいたい中学・高校、つまり思春期に触れたものが重要になるわけだけれど、そのときにビッグウェーブの中にいたわけではない。

中学に入るか入らないかのときには一応オタク文化に参入していた。深夜アニメを初めて見たのは、『生徒会役員共』の2期だった気がする。ライトノベルを初めて読んだのもその頃だ。日日日『ささみさん@がんばらない』だった。何年も後に、日日日はセカイ系批判の作品(『ちーちゃんは悠久の向こう』)を書いた人として時々言及されることを知った。入り口を間違えたのだろうか?

その頃にはカゲプロも流行っていた。個人的にはそれ以前のニコニコ動画的な、初音ミク等のキャラクターにフォーカスしたボーカロイドの流れの方に面白さを感じていたので、カゲプロには深入りしなかった(アニメの独特の雰囲気には惹かれていたのだけれど、なぜか)。ハニーワークスも同様の理由で遠ざけていた。

ライトノベルは、その後、中学の間に綾里けいし『B.A.D』、伏見つかさ『エロマンガ先生』、川上稔『境界線上のホライゾン』、時雨沢恵一『キノの旅』を読んだ。『B.A.D』は絵と内容のギャップが大きく、かなり暗めで心に刺さった。『キノの旅』も鬱な話があって忘れられなかったらした。『境界線上のホライゾン』はページ数が多くて戦闘シーンが冗長だったが、世界観設定が凝っていて面白かった。『エロマンガ先生』は面白かったが、続きが読みたいとまでは思わなかった。『緋弾のアリア』も借りて読んだ。必ず「次回に続く!」という感じになるので、区切りをつけてほしいと思って途中で辞めた。

メディアミックスを踏まえて考えると、その時期のライトノベルは、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』や『僕は友達が少ない』や『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』などのラブコメが主流になってきていたはずだ。しかし、身の回りではそこまでではなかった。『バカとテストと召喚獣』や『まよチキ』などの、少し前のライトノベルがまだ強かった。

『生徒会役員共』以外のアニメだと『中二病でも恋がしたい!』の2期を見たことも覚えている。恋愛部分も良かった気はするが、その当時は中二病描写のイリュージョンの面白さの方が印象に残った(なぜか、京アニ作品はその後何年間も見なかった)。『ソードアート・オンライン』や『ノーゲームノーライフ』、『魔法科高校の劣等生』といった異世界ものも断片的に見た。面白かったので、原作を本屋で立ち読みした覚えもある。だが、なぜか深入りしなかった。『セーラームーン』の再放送がやっていたのも印象に残っている。恥ずかしくて録画しなかったが、こっそりリアルタイムで見た(断片的にだけれど)。

『ウルトラマンギンガ』が2013年に始まっていて、久しぶりのウルトラマンのTVシリーズだったので、楽しく見ていた。小学生のときに見た『ウルトラマンメビウス』が好きだったので、特撮への興味が復活したのだった。『ウルトラマンオーブ』まで、その興味が持続した。特撮は仮面ライダーの方が主流のようだったので、そっちも押さえたいと思い、『仮面ライダードライブ』も見た。

二次元的なものは、少女漫画的なものからも影響を受けた気もする。クラスの人が、青い鳥文庫の「泣いちゃいそうだよ」シリーズを読んでいるのを見て、なぜか読みたくなった。実際読んでみると、ピュアな恋愛もので、胸キュンする。恥ずかしさもあり、たくさんは読まなかったが、心に刻まれた。中学の図書館では『ハチミツにはつこい』のノベライズ版がものすごく人気だったのを覚えている。読んでみた。幼馴染への恋愛感情を自覚するところにすごくときめいた。ケータイ小説ブームの残滓があり、中学の図書館にはケータイ小説が置いてあった。banbi『幼なじみ』が良かった。「妹みたい」と思われていたヒロインが頑張って恋人になるのがすごいなと思った。章ごとに語り手が変わるのが新鮮だった。母親が買っていた少女漫画『ラストゲーム』も好きだった。鈍感なヒロインと、彼女を振り向かせようとして何年もかかる幼馴染の主人公との掛け合いが微笑ましかった。

思春期の自意識みたいなものは、辻村深月で満たしていた覚えがある。『オーダーメイド殺人クラブ』が刺さった。『家族シアター』や『サクラ咲く』も良かった。辻村深月の、家族への信頼みたいなものは、自分にとってはしっくりきた。思春期を考えようとするときに、ライトノベルのラブコメに行かなかったのが分岐点だったのだろうか。

高校になると、漫画・ライトノベル・アニメの方が語る人が多いことに気がつき、特撮を離れることにした。そっちの方が共通の話題になる。しかも、二次元はより現実逃避の効率が良い。そのような感じで。現実の生活は疲れが溜まるので、二次元によって現実から離れることは癒やしだった。

それでも、完全な現実逃避には抵抗があった。きらら系アニメは高校の頃はあまり良い印象が無かった。女性キャラクターだけの世界を愛でるのは、さすがに現実逃避の度合いが高過ぎるのではないか、と批判的に感じていた。

高校で出会ったオタク(的な人)は、ラブライブが好きな人が多かった。しかし一番多かったのはラブコメ好きだった。

その影響で、ラブコメも摂取しようと思い、しかしなかなか腰が重く、『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』を少し読んだくらいだった。それと、ラブコメかどうかは微妙だが、『涼宮ハルヒの憂鬱』を読んだ。アニメとしてラブコメをまとまって摂取するのは、大学に入って知り合いに(半ば強制的に)布教されてからである。『冴えない彼女の育てかた』の魅力を熱弁する人もいたが、巻数が多そうなので触れなかった。

ラブコメも気になってはいたが、高校ではむしろ女児向けのもの(魔法少女もの?)の方が気になっていた。『カードキャプターさくら』のクリアカード編が2018年にアニメ化していて、なぜか惹きつけられて、クロウカード編とさくらカード編を原作漫画版で読んだ。『HUGっとプリキュア』がネットで話題になっていたので、後続の『スタートゥインクルプリキュア』を見た。

『魔法少女まどか⭐︎マギカ』は、「マミさんが衝撃」というので盛り上がったことがあり、断片だけ覚えた。大学に入ってからちゃんと見た。もっと早く見ておけば良かったと思った。

『君の名は。』はすごいと思った。映像も音楽も物語も。その当時は見事に新海誠にやられた(『天気の子』はもっとすごいと思って、けれどもその後色々評価がぐるぐるしていて、難しい)。高校中(とまではいかないけれど、クラス中)、『君の名は。』の話題で持ちきりだったような覚えがある。特撮から離れていたせいか、なぜか『シン・ゴジラ』は見に行かなかった。

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は気になる人を誘って見に行ったので、現実のレベルで印象に残った。『君の名は。』のようなカタルシスを目指さないアニメだったが、つまらなくはなかった。

身の回りでは、『聲の形』はなぜか話題にならなかった。けれど、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が話題になって、その流れで京アニ作品自体がたくさん語られるようになっていった。

『ポプテピピック』も楽しかった。上坂すみれを初めて知った。『はたらく細胞』は勉強になった。血小板推しの人が多かった気がする。「ロリがかわいいから」だったらしい。『邪神ちゃんドロップキック』もほのぼのしていないけれど癒やしだった(きらら系に違和感を持っているのに「邪神ちゃん」は平気とは、自分でも矛盾している)。

『かぐや様は告らせたい』は、積極的に摂取したラブコメだった。自分の中で、コメディのキレを大事にしていることが分かった。鈴木雅之がオープニングを歌っていたおかげで、親と一緒に見るという経験もできた。







よろしければサポートお願いします。サポートで本が買えます、勉強が進みます!