【22日目】村上春樹がzoomに参加したら(あるいはねじまき鳥クロニクルの読了)
目の前にある青色のアイコンが何を意味しているのか、僕には理解できなかった。僕はそれを開くこともできたし、そのまま寝てしまうこともできた。しかしひとつだけ言えることがあるとすれば、それをクリックすると僕は好むと好まざるとに関わらず、会議に参加しなくてはいけないということだ。
「ミーティングIDを入力してください」
やれやれ。僕は求められたとおりに、あらかじめ決められていた6桁の数字を打ち込んだ。かまうもんか、と僕は思った。何かが起こるのなら、起こればいい。何かが起こりたいのなら起こればいい。かまわない。
どれくらいの時間が経っただろうか。突然目の前が明るくなり、そこには見覚えのある顔が並んでいた。
僕は以前にもここへ来たことがある。あるいはそれは気のせいかもしれない。でも僕は確実にこの場所を知っている。
「40分」と女は言った。「私たちには40分しか残されていないの」
「40分?」と僕はききかえした。
「ええ、きっかり40分。長いと言えば長いし、短いと言えば短い。そのあいだあなたはマイクをオフにしておいてもかまわないし、バーチャル背景にしたってかまわない。でもカメラだけはしっかりとつけておかないといけないの。あなたが好むと好まざるとに関わらずね」
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