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衝撃の西成
大阪に来て7年の私が
行けていなかった西成。
今日、初めてその地を踏みました。
まず初めにお断りしておきたいのは、
私は今日だれも西成にお住まいであったり
西成でお仕事されている方と
話すことはなかったという点です。
なので私が特定のどなたかとお話して
勝手に西成という土地のイメージを
持ってお話しているわけではないです。
ただ、だからこそ、
言葉など交わさずとも、
今回の西成訪問は私にとって衝撃的で
海外旅行に行ったほどの
(私が行った海外はインドと中国です)
カルチャーショックを受ける出来事が
2つありました。たった1時間の間に。
私が14時半に降り立ったのは
大阪メトロ四ツ橋線・岸里駅。
ひとくちに西成区といっても広いので
先に説明しますが、
私の今日の目的地は西天下茶屋駅近くの
丸八精肉店さんでした。
メディアで取り上げられることも多々ある
有名なお店です。
本来ならその西天下茶屋駅で
降りるべきなのですが、
南海線の駅なので大阪北部に住む私には
少々使いづらい立地なので
歩いて10分ほどで
たどり着ける岸里駅を選びました。
交通量も商店も多い岸里駅から
歩いて5分ほどで
中央通商店街の入口に到着。
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大阪は商店街が元気なイメージでしたが、
ここはそうでもないようでした。
店の8割ほどは閉まっていたかな。
でも目的だった丸八精肉店さんは
開いていました!
思っていたより踏切が近くて
下町感がありました。
この道路、自転車の往来がすごく多い。
私の後ろを通る60代前後の老爺は
「ごめんなー」と律儀に言ってくれました。
優しい。
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ただ、丸八さんはイートインスペースは
ないので、パックに入れてもらった
熱いホルモンを食べる空間を欲した私は、
近くに西皿池公園なる地を発見し、
セブンイレブンで買った黒ラベルと
箸欲しさに求めたミニカップヌードル味噌を
携えて公園にたどり着いた。
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400グラム1000円のホルモン。
よほど猛臭を放つとみえ、
ビニールの梱包は見た目より厳重で、
思ったより開封に時間を要した。
あとは黒ラベルの開封…と
なにげなく缶のタブをプシュッと
やった瞬間だった。
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50mほど先の
中央奥のすべり台辺りにいた
約30羽の鳩が一斉に私めがけて
飛んできた。
マジで恐怖。
私としては、ホルモンを開封した
タイミングならまだ恐怖度は低かった。
うまそうな臭いに咄嗟に反応したんだな、と
思えるからである。
だが奴らは缶ビールを開ける音で来た。
完全にパブロフの犬、条件反射だ。
ハト30羽に飛びつかれる恐怖のあと
私に去来したのはそのことだ。
いったいこの公園で、
何百人、何千人の先人たちが
缶ビールを開け、その肴を
彼らに与えたことだろう。
その証拠が彼らの姿である。
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肥えに肥えている。
私でなくとも、
彼らに一口たりとも餌を与えない
決意を固めるはずだ。
だが条件反射に従うがまま
やってきた彼らは私の周りを
あてもなく彷徨するばかりで、
ものの2分もすると
痺れを切らした鳩2羽が
私のベンチの傍らに乗ってくるではないか。
ホルモンは惜しかったが、
ここで味噌味の香りを漂わせたら
全部鳩の餌食なので、
私の(最初で最後の)西皿池公園の
滞在時間はホルモン開封1分、
缶ビール開栓の3秒、ホルモン閉封1分の
計2分3秒であった。
缶ビールは惜しかったが
1/3ほどを捨て、
岸里駅に戻り、四ツ橋線に乗った。
ところがここで第2の問題が発生する。
味噌臭いのだ。
ホルモンはパウチに入ったものを
ポリ袋に入れ、
さらに白ビニール袋で梱包しているのだが
全く効果を成していなかった。
乗車するまで、ホームまでは外気で
全く私には判別できなかったのだが、
車内に入るともうそれは一瞬だった。
目の前のサラリーマン40代男2人組の
視線が痛い。
かくして私は隣の花園町駅で
下車せざるを得なくなってしまった。
駅のベンチでもう一度、梱包し直した。
テープ系統を持っていないので、
あくまで今所持している袋の隙間を
極力減らすことしかできないが、
最善を尽くし、次の電車に乗車した。
ただ、次の大国町駅に着くまでに
再び味噌が私の鼻腔を擽る。
いや、これはマズい…
大国町駅なら駅の近くにたしか
スーパーがあったはずだ。
そこでポリ袋を数枚拝借しよう。
そう思って大国町駅に近づき
減速した車内で扉に近づいた私に、
思いがけない方向から天の光が差した。
天佑とは、あたりめの香りだった。
気のせいかと思った。
だが、たしかにあたりめの臭いなので
ふと、ドア左の眼下の席に目をやる。
そこにはワンカップ宝焼酎を左手に携えた
白髪の老爺が無言で
ローソンのあたりめをしゃぶる姿があった。
降りようと思った駅が近づき、
立ったものの降りずに
もといた席に踵を返す。
私にはあとにも先にも経験がなかった。
ともかくも、その日が私にとっては
今日だった。
一度もその偉大なる先人と
目線を合わせることはなかった。
それどころか、
気づいたら彼はどこかの駅で降りていた。
でも彼の存在は、
私が肥後橋まで乗車する勇気をいただくには
十分すぎた。
満足な旅だった。
満足だったので乱文をしたためてしまいました。
追伸
大阪メトロ四ツ橋線は
なんば以北と以南で
日付変更線か何か跨いでいませんか。
客層が違いすぎて焦ります。