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SCGK(スーパーチビ助ゴールキーパー)①
私は170cmに満たないゴールキーパーでした。
キーパーになった頃は小さい方では無かったのですが、伸びなかったのです
フランスに行ったばかりの頃は学校の部活は週一しかなく、その他はみんな地元のクラブに所属していた。
私はサバットのジムにいたので、地元クラブに通っておらず、なんとなく遊びのような部活を楽しんでいた。
コーチにフランス人はいたが、生徒は日本人学校なので日本人で、日本の部活に比べるとレベルは低く、海外なのでグラウンドは芝という環境に見合わないレベルでサッカーをしていたと思う。
練習試合をたまにフランスの学生とやるが、ほぼ一方的にやられるだけで試合の形は為していなかった。
ところが、三年生になった時である。
日本から前にいた学校を県大会優勝に導いた先生がやって来た。現役時代は関西での大学サッカー得点王にもなっていた人だ。その先生が顧問になった。
そして部活を日本の部活のように毎日厳しくやる部活に変えると言い出したのだ。
私はホームステイから寮に戻り、もう内部推薦の勉強にも専念したかったし、サッカーはそこまでやる気は無かった。
その時である。サッカー部のキャプテンが私の部屋を訪ねて来た。サッカー部のキャプテンとは、中学時代の日本でのサッカー部でも一緒だったし、その時も彼はキャプテンだった。彼はサッカーが上手く、フランスの地元クラブでも高校生ながらシニアの試合に出て得点を決めて新聞に載っていた。空手もやっていて喧嘩も強く番長的な存在でもあった。その彼が「風呂に行こう」と大浴場に私を誘った。まだ早い時間で人はおらずふたりだった。
彼は風呂で裸の付き合いをしながら私に「○○先生がサッカー部を立て直そうとしている。お前に副キャプテンをやって欲しい」と説得してきたのである。
背も高くなく、特段に上手いと言えるわけでもない私。一個下に中学時代熊本県代表だった私より背の高いキーパーがいた。彼は地元クラブでサッカーをやり、プロも意識していた。もうキーパーは正直いる。なのになぜそんな事を言うのか分からず「いや、もうサッカーは辞めるつもりやから…」と言ったが彼は素っ裸のまま「頼む」と頭を下げたのである。正直彼が頭を下げてる所など見た事がなく、先輩に対しても上から行けるキャラだっただけに「は?え?なんで??」と思った。
言う事を聞かないなら殴る
と言い始めてもおかしくはないと思うのだが、素っ裸でお願いし続けたのである。
これは本気だ
私は「分かった。一緒にやろう」と言ってしまっていた。
そうしてサッカー部に残る事と、副キャプテンを引き受ける事を承諾したのである。
「ありがとう」ほっとしたようにキャプテンは言った。
ただ、あの時口説いてくれて良かったと思う。その一年は後にも先にも最も濃いサッカー人生だったように思うし、中学から通じて6年間一緒にサッカーをした相手はキャプテンにとっても私にとっても唯一の人物となったからである。
それでは、次回からその一年のお話をします。
今日はこの辺で
一丁