托卵
あんな大人しい老竜に振り落とされるなんて、運の無い奴。
同期の嘲弄をベッドの上で聞く。
左足は元に戻らないそうだ。両の足で操る通常の騎竜に乗るのは、この先も不可能と言われた。
「育者への道もある、気を落とさないで」
医者の取り成しが耳を滑る。
「いよっ」
三日後、豪放に笑う飼育担当の学園教官が訪ねて来た。
「育舎の白竜のだ。暇ならそれ、温っためてろや」
投げ渡されたのは、卵。
生まれた仔は、白竜では無かった。
育舎の担当は「いつ混じったかさっぱり」と首を傾げた。
真っ青な鱗を持ち、長距離を高速で飛ぶその珍しい翼竜は俺によく懐き、訓練で言葉まで理解するようになった。
俺は、王室のメッセンジャーとして、今日も空を駆ける。
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@Tw300ss 第72回 お題「運(うん)」 ジャンル「オリジナル」
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Twitter300字ss企画内にて一年間、個人的に連作チャレンジ中、2021年の1作目です。
よろしければ次回もお楽しみに(´-`)