来し方 行く末
砂漠の谷底で、空を見ていた。
何も持たず薄物一枚の私に、氷点下の夜は超えられまい… キャラバンは私を捨てたのだ。
「おいっ、大丈夫か?」
抱き起こされ、薄目を開けた。
ぬるい水が口元を伝う。
私は跳ね起きると、水筒に齧り付いた。
私を死地から拾ったのも、またキャラバンだった。
拾い拾われ、留まる者も去りゆく者も、入れ替わり立ち替わり…
長い長い間、そんな風景を見続けてきた。
一月前に去った二人はどうしているだろう。
私が拾った子と、その子が拾った子。
キャラバンの絆で結ばれた、私の家族。
「違える道筋その先に、清き風の導きあらんことを」
祈りは毎日欠かさない。
紗が揺らぎ、暗い天幕の内に光が差す。
「よぉ、婆ぁ… 今帰ったぜ」
--------------------
Twitter300字ss 第91回 お題「来る」 ジャンル「オリジナル」
--------------------
Twitter300字ss企画内にて今年いっぱいの連作延長戦、竜の棲む世界を舞台にしたシリーズ12作目、最終回です!お付き合いありがとうございました!(´▽`)
【前のお話:竜の眼】
https://note.com/1_ten_5/n/n2493bfae0a34