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水底に棲むもの

 ずっと、暗くて冷たい場所に居た。
 寂しい、寂しい。
 ゆらゆらと伸ばした指先が、不意に外気に触れた。
 冷たい夜気の気配。
 恐る恐る周囲を探ると、何か温かいものに触れた。
 ああ、温かい… 温かい!
 暴れるそれを組み伏せて、皆が我先にと縋った。
 満足のいく頃には、それは死にかけていた。
 冷たくなったそれに、私達は狼狽た。
 通りすがりに介抱され一命を取り留めたそれは「加減を覚えろ」と言い、以降私達を懐に抱いて歩くようになった。

 遠い所にきた。
 ふと濁った水の匂いがした。
 私達に染み付いたそれと同じ匂い。
 袖を引いて、あれの元へと導いた。

 また少し遠くへきた。
 潮の香りと温い日向。
 小さいのは大きいのと、波打ち際で泳ぎの練習をしている。

@Tw300ss  第67回  お題「泳ぐ」   ジャンル「オリジナル」

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Twitter300字ss企画内にて個人的に連作チャレンジ中、今回7作目です。
よろしければ前作も覗いてみて下さい(´-`)

【前のお話:橋の向こう】
https://note.com/1_ten_5/n/nd15ad48df5bc