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サマーゴーストを見た

2021.11.21「サマーゴースト トークイベント付き上映会@TOHOシネマズ池袋」に行きました。

少し前に三秋縋にハマってから「あおぞらとくもりぞら」のコミカライズを買って、その漫画担当が今作でアニメ映画初監督を手掛けるloundraw氏だった。

(↑noteとPixivで全話無料公開されてるんですけどこれ本当に良いので全員見てください、あともう数話で完結というところから数年公開が途絶えているので最後の最後だけは原作(こちらも三秋縋のサイトで全編公開されている)を読んで脳内で補完してください)

存在こそ知ってはいたものの全然詳しくはなかったので、そのまま調べてみたら彼がアニメ制作スタジオを設立してその1作目を公開するということを知り、当時既に公開されていた情報を見たら、夏。幽霊。花火。少年少女。それだけでわたしが好きな要素が詰め込まれているアニメ映画だとわかっていたので期待していて、その上、後の情報解禁でわたしの好きなGuianoというミュージシャンが一部劇伴を担当することも発表されたのでこれは行くしかないと、極力事前情報も入れないようにして楽しみに待っていた。

(↑ポップソングのMV出たの嬉しいね~~)

そして劇場公開直後にいつ行こうかなあと悩んでいたらこのイベントの存在を知り、せっかくならとチケットを取って当日に至る。

入るやいなや入場特典としてクリアファイルとポストカード(こちらはトークショーのみらしい)を頂くも、その存在を知らずに小さい鞄で来てしまったので仕舞う場所がなく、仕方がないのでクリアファイルを膝に乗せながら鑑賞。そんなことをしていたのはわたしだけだったのでかなり恥ずかしかった。

ここからは本編の感想に入ります(直接的ではないが微妙にネタバレ有り)

わたしは何かに対して感想文を書くことがずっと苦手で、たまには「好き」とか「良い」の一言だけで片付けないでより深く考えてみようと思い、リハビリ的な感じでこのnoteを書き出しているので、的外れなことを書いてそうだなーと思わなくもないですが、まあ書きたくて書いているだけなので、ぜんぶ目を瞑ってください。

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本作はアニメならではの表現が印象的で、あるシーンの室内に降る雨の描写とか地下にある海底みたいなところとか、単純な美しさだけではない、アニメでしか描けないような演出がたくさんあってそれが本当に良かった。特に滑走路での幽体離脱のシーンは、ああいう実写や漫画では描けない、アニメーション特有のカタルシスを感じるシーンを見るためにアニメ映画を見ている節があるのでこれは劇場まで見に来て良かったなと思えたし、かなり印象的だった。

映像面だけでなく、主人公・友也がキャンバスの前でインスピレーションを膨らませている時に母親から呼ばれるシーンでの音楽の使い方とか、不穏な場面で印象的に響くある気味の悪い効果音とか、物覚えの悪いわたしでも記憶に残るくらい普通のアニメとかではあんまり見慣れないような面白い箇所がたくさんあって、それはやはり本作が、イラストレーターや漫画、小説や音楽活動での作詞など、色んな媒体での創作を経たloundraw氏が手掛けたからこそで、それぞれの媒体に適した物の見せ方があるように、アニメ映画ならではの見せ方みたいなものに特に鋭く向き合った結果なのかもなあと感じた。(氏が手掛ける他の作品も追ってみたいと思った。)

見せ方という点では、死がテーマとして扱われているけれど死がもたらすグロテスクさみたいなものは全編通して極力描写せず(スーツケース周りとか特に)、いじめの描写もいじめられているという状況を視覚的にはわかるようにした上で極力むごくは映さないようにしている風に見えたり、そういう映すもの/映さないものの取捨選択とか、少年少女がメインの話なのに恋愛的な要素が一切無く(とは言っても美術館のシーンとかはめちゃくちゃロマンチックで最高なんですけど)あくまでも彼、彼女らと幽霊、生者と死者という対比の図を貫いたところとかが今作の美しさや雰囲気作りの一端を担っているんだろうなあと感じた。

そして映画を見終わってすぐに目の前でその監督であるloundraw氏や脚本を担当した作家の安達寛高(乙一)氏、プロデューサーの石井龍氏の3名が登壇し、直に話が聞ける贅沢さはすごかった。こういう舞台挨拶とはまた違うけれどそういう類いの映画イベントを生で見るのは初めてだったし、製作陣のみということもあって、目の前で濃い制作秘話が聞ける体験は貴重だった。

トークショーで、当初の脚本案ではあったもののやむなくカットした箇所がいくつかあると語られていた通り、40分にぎっちりと詰め込んでいる感じが強く、後々の作品ではもっと長い尺での映画も見てみたいと思った。

例えば、冒頭で1年後のシーンを見せてからメインの物語が始まるのだけれど、そこからはいかにも話や人物の説明ですみたいな台詞が続いて、それは捉え方によってはとても違和感のある描写だったけれど、前置きのパートがめちゃくちゃ簡潔に短くまとめられているというのは40分という尺の制限の中で本当に描きたい部分をより強く描きたいという意思(そのために極力それ以外の部分を短くする、というかそうせざるを得ないのだろうけど)が感じられて、そのようなものは映画全体を通して随所にあった。

メインの3人が抱える悩みの描写も、初めこそ割とよくあるような感じだなーと思ったけれど、そこからの展開でどんどんと引き込まれていったし、それぞれの結末も含めて良かった。先程書いたように、一番初めのシーンで1年後の場面を見せて、結果辿り着いたその結末で3人はどうなったのか、の対比というか伏線回収が良かった。たくさん散らばらせた要素がどうなっていくのか終始気になりながら見れて、それらをちゃんと回収していった。そして最後、ある絵のシーンがあるんですけど、あんなのやられたら良いとしか言えないです。サマーゴースト、予想通りわたし好みで、想像以上に好きな映画でした。

どうやらこのトークショー付き上映の追加開催も決まったみたいで来月頭までにかけて3回くらい同じ会場でゲストを変えつつやるらしい。すごい。

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帰り道、池袋のど真ん中を直のクリアファイル片手に歩く不審者になってしまった点に目を瞑れば本当に良い一日になりました。行く時はでかめの鞄で行こうな!!!!あと眼鏡を忘れて若干後悔したのでそれも気を付けて…………

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