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旭化成はなぜ“全社員”にIT教育をせざるをえなくなったのか?
「ITの専門人材の育成を!」
これは企業のDX化を促すため、政府が2016年から声高らかに掲げている言葉なのですが、元DX化担当の目線で言うと、専門人材だけでは、まずDX化は成功しません。
今回は、あの旭化成が2024年4月以降4万人いる“全従業員”をデジタル人材にすることを発表した理由と背景を軸に、企業がDX化を成功させるために何が必要なのかについてお伝えしたいと思います。
旭化成が“全社員”を対象にデジタル教育を開始!
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旭化成は2024年4月以降を「デジタルノーマル期」と位置付け、国内外の全従業員4万人をデジタル人材にすることを掲げました。
具体的には、独自のデジタルスキル学習プログラムを5段階のレベルに分け、修了者にデジタル署名のバッチを発行するというもの。
レベル1と2を「デジタル入門人材」
レベル3を「デジタル活用人材」
レベル4と5を「デジタルプロフェッショナル人材」
2025年3月までにデジタルプロフェッショナル人材を2500人にするという目標が設定されており、2023年12月時点で、1551人の人材が既に該当しています。
なぜ“全社員”なのか?
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このプログラムの重要なポイントは、DX教育の対象が「全社員」であることです。これには2つの理由があります。
一つは「設計段階から社員がDX化に“協力する体質”を作るため」です。
システムを作る際、あらゆる業務パターンを網羅的に洗い出した上で作り始めないと、後でコストが爆上がりしたり、実現場で使えないシステムができあがります。
そのため、設計段階から関係する”全社員”の協力は必須なのですが、社員は自身の業務で忙しいため、基本的に非協力的です。
DX化を進めたい経営者は命令しさえすれば、資本力のある樗木企業でもDX化を失敗したり、進まなかったりする最も大きな要因であり、全社員へのDX化教育を行うことで、社員の間にDX化を進めないといけないという「空気感」を作ることが最も大事なのです。
「想像」できないとデータは活用できない
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DX教育の対象が全社員である2つ目の理由は「社員がどうデータを活用できるのか?」を意識できないと、データの収集・集計コストが爆上がりすることです。
IT専門人材さえ採用すればDX化が進むと勘違いしている経営者が最も見落としている部分はココで、データは先に活用像を描かないと、そもそも正しく収集することができません。
「データを取り合えずとって、活用法は後から考える」こともできなくはないですが、その場合、データを収集する設計に多大なコストをかける必要が出てしまいます。
DX化は中小企業の方が成功しやすい
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DX化を成功させるためには、全社員の参加と協力が不可欠であるということは、逆に言うと社員数が多くなるほど難しくなります。
もちろんDX化の規模感にもよりますが、基本的に中小企業の方がDX化を進めやすく、また、DX化のメリットの一つである「必要な人員を削減」の恩恵を受けやすい。
※社員数300名以下の中小企業は、有効求人倍率が未だ3倍以上をキープしており、長期的に見れば人員確保し続ける方が難しい
是非、中小企業ほど『教育』の部分に注意をしながら、DX化を進めて欲しいと思います。