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令和6年-労基法・問1-B「均等待遇」
今回は、令和6年-労基法・問1-B「均等待遇」です。
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「労働基準法3条は労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、特定の信条を有することを、雇入れを拒む理由として定めることも、右にいう労働条件に関する差別取扱として、右規定に違反するものと解される。」とするのが、最高裁判所の判例である。
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「均等待遇」に関する問題です。
次の問題をみてください。
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【 H21-1-B 】
労働基準法第3条が禁止する労働条件についての差別的取扱いには、雇入れにおける差別も含まれるとするのが最高裁判所の判例である。
【 H28-1-ウ 】
労働基準法第3条は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、労働条件について差別することを禁じているが、これは雇入れ後における労働条件についての制限であって、雇入れそのものを制限する規定ではないとするのが、最高裁判所の判例である。
【 H9-2-D 】
労働基準法第3条では、信条による労働条件の差別的取扱いを禁止しているが、企業における労働者の雇入れについては、特定の思想、信条を有する者をその故をもって雇い入れることを拒んでも、直ちに違法とすることができない。
【 H11-1-A 】
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間について差別的取扱いを行ってはならず、このことは解雇や安全衛生についても同様である。
【 H2-1-A 】
「労働条件」とは、賃金、労働時間はもちろんのこと、解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件をすべて含む労働者の職場における一切の待遇をいう。
【 H30-4-イ 】
労働基準法第3条にいう「賃金、労働時間その他の労働条件」について、解雇の意思表示そのものは労働条件とはいえないため、労働協約や就業規則等で解雇の理由が規定されていても、「労働条件」にはあたらない。
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ここで挙げた問題は、「均等待遇」に関するもののうち差別禁止の対象となる「労働条件」に含まれるものは何か?というのが論点です。
まず、【 R6-1-B 】は、「雇入れ」が対象となるような記載で、【 H21-1-B 】では、「雇入れ」を含むとしています。
労働基準法で保護する労働条件というのは、【 H28-1-ウ 】にあるように、雇い入れた後の労働条件ですから、労働基準法3条が禁止する労働条件についての差別的取扱いには、「雇入れ」における差別は含まれません。
ですので、【 R6-1-B 】と【 H21-1-B 】は誤り、【 H28-1-ウ 】は正しいです。
この点を、より具体的に出題したのが、【 H9-2-D 】で、
「特定の思想、信条を有する者をその故をもって雇い入れることを拒んでも、直ちに違法とすることができない」
とあります。
これは、そのとおりです。
雇入れは、「均等待遇」で規定している労働条件には入らないので、「雇い入れることを拒んでも」、つまり、差別的取扱いをしても、それだけで、直ちに違法とすることはできないことになります。
【 H11-1-A 】と【 H2-1-A 】では、いくつかの事項を列挙しています。
これら列挙している事項はいずれも「労働条件」に含まれます。
そして、「雇入れ」のような、余分な記述はありません。したがって、正しいです。
【 H30-4-イ 】では、「解雇の意思表示」に関して「労働条件」にはあたらないとしています。
解雇の意思表示そのものは労働条件とはいえません。ただ、労働協約、就業規則等で解雇の基準又は理由が規定されていれば、それは労働するに当たっての条件として労働条件となるので、誤りです。
1つの事項だけを挙げて、それが労働条件となるか否かを問う問題があったり、いくつかの労働条件を列挙するような問題もありますが、いくつかの労働条件を列挙し、その中に、さりげなく「雇入れ」など労働条件とならない事項を入れて、誤りにするなんて問題が出題されるってことがあるので、いくつも列挙されているときは、そのような事項を見逃したりしないよう、注意しましょう。