20歳の独立日記〜83日目〜
8月1日(水曜日)
水戸駅の近くに「元吉田」という地名がある。ここは昔、水戸藩参謀の吉田正和という戦国武将が治めていた地域である。というナレーションが脳内再生される。
吉田正和という戦国武将はいないし、水戸藩の参謀のことも一切知らない。恐らく、夏の暑さのせいだ。
自販機で缶コーヒーを買い、一息つく。家から30分ほど歩けば水戸駅だ。だが今日も暑い。その時、横を通り過ぎる影を見た。
馬だ。馬の上には甲冑を着けた、武将が真っ直ぐに前を見つめている。
「よし。」
武将は馬を走らせた。速い。速い。初めて馬が走るところを見た。ぼくも付いていきたくなった。僕も走る、走る。
缶コーヒーを片手に全速力で付いて行く。不思議と足は軽い。そしてどんどん加速する。気づけば僕は馬になっていた。僕の上には甲冑を着けた吉田正和が鎮座している。
そんなことを考えながら暑いアスファルトの上を歩いていた。元・吉田。今の正式な名前はなんだ。そういえば大阪には「元田中」があった。
お気持ちだけでも飛び上がって喜びます