20歳の独立日記〜38日目〜
6月17日(日曜日)
7月から20年間住んだ大阪を離れて、
茨城県に住む。
なんのこっちゃという話だ。
6月の13日にこんなツイートをした。
たくさんの人に拡散してもらって、色んな地方のシェアハウスから「うちに来ますか?」というお声がけを頂いた。その中から茨城を選んだのは、実家から一番遠かったから。ただそれだけ。
僕の中で0円で泊まれるシェアハウス「京橋URA」は、自分の価値観をぶち壊してくれた。
お金はガソリンだと思う。ガソリンが無くちゃ走れない。だけど、走る方向を間違えると、どれだけガソリンがあっても足りない。
茨城県水戸市。
グーグルアースで見た。
とてものどかな街だ。
田舎から都会に出て来た友人たちは、「やっぱり都会の方がいいよ」と言う。僕は都会にしか住んだことがないから、田舎に住んでみたい。
物価も安いだろうから、あんまりせかせか働かないつもりだ。やりたい人とやりたい仕事をやり続けたい。
「今、頂いているお仕事が茨城県に行ったら無くなるんじゃない?」
無くなるのはイヤだけど、減ることに対して恐怖感はない。移住が原因で減る仕事ならこっちから願い下げというか、それは僕じゃなくてもできる仕事だと思う。
まだまだ出来てないけれど、これからどんどん自分の価値を高めていきたい。
そのために「やらない仕事リスト」を作成した。といっても、2つだけ。
・大規模なWeb更新
・デザイン自由なTシャツ制作
ゆっくり時間をかけて、セルフブランディングを心がけていく。自分の価値をもっと高める。20歳の独立日記があるおかげで、自分を追い込める。
やるしかない。
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僕の中学校は荒れていた。
授業中にガムを噛んでいるやつ、廊下でキャッチボールをしているやつがいた。体育館裏にはタバコの吸い殻がたくさんあった。窓ガラスもよく割れるし、大変だった。
不良グループの中に、小学校の時に仲がよかった女の子がいた。すごく可愛い女の子で、笑った時に見える八重歯が好きだった。
だからその子が、学校の正門に座り込んでタバコを吸っているのを見たときはショックだった。
先生たちは皆、迷惑をかけない限り不良グループのことは、見て見ぬふりをしていた気がする。それ以外の子たちの教育に力を入れたほうがラクだ。
実際僕もこいつらは将来どうなるんだろうと思っていた。高校入試の勉強もせず、学校の定期テストも受けず、毎晩朝まで遊んで。どんな一生を歩むんだろう。
高校生になって地元のコンビニでバイトをした。そこの前には見慣れた不良グループが、ほぼ毎日たむろしていた。
そこにその女の子もいた。
子連れだった。
お父さんは誰なんだろう、職業は?月収はいくらだ?暮らしていけるのか?シングルマザーだった場合は?水商売で稼いでるのか?
そんな事を話せる関係でもなく、バイトの時間は終わった。
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それから4年後、僕は成人式に向かっていた。成人式会場では、振袖を着た女の子やスーツを着た男の子がグループを作って、話し込んでいた。久しぶりに会うと、話は盛り上がるものだ。
中でも盛り上がっていたのは袴を着て、髪が金色や赤色の人が多いグループだった。皆、ワイワイ楽しんでいる。そこに女の子の姿は無かった。
式が終わり、同窓会が開かれた。
中学のときの先生方も来ていて、お世話になった美術の先生にデザイナーになったことを報告したりした。
先生と写真を撮ったり、部活のメンバーと写真を撮ったりするうちに一緒に来た友達とはぐれてしまった。
探していると、女の子が小さい女の子を連れて来ていた。
「久しぶり」
なぜかすんなり口から出てきた。
それから同窓会が終わるまで、20分くらい2人きりで話した。
不良グループの中の女の子の、知り合いの男の子と結婚して子どもができたこと。でも、子どもが1歳になるときに他にオンナを作って逃げたこと。その浮気相手が自分にその人を紹介してくれた女の子だったこと。
「で、今は何してるの?」
「今は心斎橋にあるアパレルメーカーで正社員として働いてるよ」
月収もそこそこあるらしかった。夜は遅くならないし、休みもしっかりあるらしい。
「アパレルメーカーのマネージャーと、来年結婚するねんよ。」
ニコッと笑った彼女の八重歯は、7年前と変わらずに可愛いかった。
北野武監督の映画、「キッズ・リターン」を見た。2人の高校生《まーちゃんとシンジ》が大人になって再会する話。
不良、ボクサー、ヤクザ、タバコ、酒。数えきれない失敗を繰り返した2人の少年が大人になって再開する。
2人は母校の高校に向かう。
「俺たち、もう終わっちゃったのかな」
「バーカ。まだ始まっちゃいねーよ」
頑張れなくたっていい。しんどかったら逃げてもいい。だから死んじゃダメ。
大好きな映画がまた1つ増えた。
お気持ちだけでも飛び上がって喜びます