#04 鬼が見ている
顔が角張っていて、エラが張っている。歌が下手。話が面白くない。他人に興味がない。ファッションセンスが無いから、通年同じような服を着ている。どんな女性と付き合っても、幸せにできない。どこの会社に行っても通用しない。
僕が実際に言われた言葉の数々だ。
だけど、僕の顔を好きだと言ってくれた人もいた。綺麗な歌だね。一緒にいて幸せだよと言ってくれる人も少なからず、いた。
ある人から見ればマイナスなところも、別の人にはプラスに感じることもある。決して、一人の視点から発せられる言葉を鵜呑みにしてはいけない。
太陽の塔は僕の地元にある。高さ70メートルの塔で、その上部の顔についた目は日没とともに光る。ボクの母は面白半分で、我が子に「あれは鬼だよ。悪いことをすると窓から入ってくるよ」と伝えた。僕は小学二年生の遠足で本来の名前を知った。そして専門学校に入って、岡本太郎の思想に触れた。
岡本太郎は万博のテーマ「人類の進歩と調和」に異を唱え、会場全体に睨みを効かせるために塔の顔を怖くしたらしい。
あながち、母の言った「鬼」も間違いじゃなかった。
お気持ちだけでも飛び上がって喜びます