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220315  南会津訪問記 ~現地FWを経て感じたこと~

昨年度仕事関係でご縁があった南会津町に、「現地ツアー」という形で初めて訪問しました。訪れた場所から、そして出会った人から得た気付きをまとめました。

目次
・鹿革ワークショップ
・かんじきウォーク
・会津酒造
・参加者間ブレスト
・個人の感想 

鹿革ワークショップ


震災・原発事故から11年。中通りや会津地方はもう見た目では何の影響もないように見えるが、実際は現在に至るまで原発事故の影響で、狩った動物の肉が食べられない・木が売れない状態にある。個別に検査をして対応ができるものもあるが、風評被害やコストの問題があり、結果手つかずの状態に。その影響で尾瀬の湿原や南会津の森でニホンジカが増え、食害が問題になり、年間数百頭~数千頭が害獣として駆除され、そのまま捨てられている。 

そんな状況に疑問を持ち、「捨てるだけのシカのいのちを活かしたい」とシカ革製品をつくるプロジェクトを立ち上げたのが、今回お世話になった小山さん。小山さんとのセッションでは、カラフルな原色に染め上げた鹿革を自身で縫い合わせ、オリジナルの名刺入れを作成した。普段は裁縫をしない参加者も多かったが、みな集中して、アドバイスをもらいながらそれぞれの作品を完成させた。一時間ほどの作業時間だが、程よい充実感と疲労が参加者の顔から見て取れた。 

 このプロジェクトの肝は、「名刺入れ」という観点と「エシカル視点」でのモノのチョイスにあると考える。名刺入れは主に初めましての挨拶の場面で登場するため、このような個性的な名刺入れであると必ずどのような経緯で作成したかが話題にあがる。そうすることで自然と問題提起を行い、周りの関心を高めることができるのだ。また、手芸品製作体験は自身の身の回りの品々に対する考え方を見つめ直すいい機会になる。ただなんとなく購入するのではなく、背景情報や自身のポリシーを持って判断をする大切さを改めて教えてくれた。 

かんじきウォーク


かんじき(樏、橇、檋、梮)とは、泥上や雪上など不安定な地面を歩くための民具で、靴・わらじなどの下に着用する。履くと接地面積が増え体重が分散されることから、雪に深くめり込まず、さらに斜面などでずり落ちにくくする効果があるのだ。世界各地の豪雪地域で類似の道具が見られ、日本でも縄文時代の遺跡から履き物用の竹や縄が出土している。 

今回体験したかんじきウォークを主催していただいたのはNPO法人森林野会で、普段は会津地方の山林の保全を目的に活動している団体だ。昭和初期ごろまで田畑であった里山が、少子高齢化の影響を受け手入れがなされず荒廃し、獣の住処となっていたところを整備し、現在では遊歩道やビオトープなど、観光客や地域の子どもたちが気軽に日本の自然や文化に触れられる場所と提供している。 

ツアーは高野地域、阿賀川支流沿いをスタート地点とし、自然の動物の生活跡や特徴的な草木の解説を聞きながらまっさらな雪原を踏破していく。リーダーの星さんの言葉で印象的だったのは、自然散策のような事業は「関わる人の数だけできることがある」こと。シニア世代のIターン・Uターンが進むことで、「地元紙の人にとってのあたりまえや苦労が、実は都会の人のワクワクだったりする」といった視点を共有でき、それぞれの経験や趣味を生かしたプログラムが実施されているのだ。人生百年時代を感じさせる、パワフルで積極的なスタッフさん達が、訪れた参加者に元気を与えてくれた。 

会津酒造


元禄年間創業で300年以上の歴史を持つ会津酒造は、創業当初からの変わらぬ仕込み蔵で今も酒造りを行っている。今は酒造業に専念されているが、かつては銀行業や政治の世界にも進出していた歴史を持つ。高品質の秘訣は会津が生む良質な軟水。日本酒のおよそ70%は水によって構成されており、蔵の井戸から直接取水している。 

現在は9代目にあたる若い兄弟によって運営されており、今まで培ってきた「會津ブランド」を残しつつも、品評会で高めた技術力を生かして、毎年新たな味にチャレンジをしている点が注目されている。渡部裕高専務による各ブランドの味の説明を受けたのち、参加者は試飲を楽しんだ。南会津町では乾杯は地元の日本酒で行う「乾杯条例」が制定されており、道の駅や主要駅である会津田島駅などでは日本酒の自動販売機が設置されるなど、町をあげて特産品の支援を行っている。 

飲み比べ体験を通して感じたのは、「本物に出会う大切さ」だ。近年若者世代の日本酒離れが顕著になっており、その原因として安いお酒の流通、アルコール度数が高いこと、料理との組み合わせや各ブランドの特徴の違いを学ぶ機会の不足が挙げられている。会津酒造でも、これらの原因に対して、広報活動の強化やアルコール度数の低いお酒の製造に取り組んでいるそうだ。参加者にとって酒蔵訪問は、細かな味の違いを知り、現地で本物の日本酒の「シズル感」を楽しむ貴重な機会となった。 

・参加者間ブレスト


ツアーの最後に、運営側・参加者・地元の方がブレインストーミングを行い、訪問者として町に対して感じたことを共有する時間が設けられた。上記の体験の他、地元のカフェ・居酒屋・スナック・温泉への訪問を行っていたこともあり、「人はいかにしてモノ・体験をチョイスし、敬遠するのか」という観点で議論が展開された。その中で、訪問も含めてその地方に縁がある人の数を指す「関係人口」を増やすためには、学生向けの研修や今回のような季節を感じられるツアーなど、最初のきっかけをつくることが訪問のハードルを下げる一要因になるのではないかとの意見が多く出た。 

現地ツアーの大きなメリットは、個人訪問では難しい、地元の人との交流が出来ることだ。スナックや地元の居酒屋、酒蔵も1人じゃハードル高いが、一度グループで訪れていい時間を過ごせると一気に親近感が湧く。そして、地元の人たちが集う場所であるからこそ、ニッチで深い南会津を知ることができる。一度訪問した場所であっても季節や年が違うと景色や出来ることも大きく変わるため、その時々の魅力的なコンセプトときっかけを作り、たくさんの人に刺さるよう発信することが重要だ。 

一方で、地域を訪れる理由が「新天地として挑戦する場所」である人もいれば、「帰ってくる場所」である人もいて、一人一人背景が違っている点を忘れてはならない。移住促進や後継者育成はテーマとして意識しつつも前に出しすぎると、気軽にツアーで訪れることができなくなる不安も参加者にはあるようだ。ファンになってもらうことを前提に、長い時間をかけて芽が出るもの、伏線として体験を提供していくことが自治体にとっても個人にとっても、心地よい距離感なのかもしれない。

・個人的感想


大学一年生のとき、「国際協力に生きてくるよ」という先生のアドバイスもあって上勝インターンを経験しました。それを皮切りに、気づけば毎年どこかの田舎へ滞在しています。ただ、何回経験しても毎年が挑戦であり、かなりの緊張感を伴います。1番の魅力は、緊張している自分を奮い立たせないといけない「ストレッチゾーン」から旅が始まっても、気づけば素敵な出会いがあって、心地よい「コンフォートゾーン」へ変化していくところです。自分のゆかりの土地や人が増えて、周りよりも少し視野が広くなって賢くなった気分になれます。これは海外挑戦と同じ感覚です。今回でいえば、半分冗談ですが、日本酒2合くらい飲んだことや、スナックに日付変わるまでいたことは、また新たな自分を発見したなという感じです。

属する集団や場所を離れることで今の自分が俯瞰できることも地方訪問を続ける理由の一つ。自分の興味関心を自由に主張出来ることで、考えていることを整理でき、専門外の方からの効果的なアドバイスも貰える。今回でいえば「若者男子」であることが構成メンバーの中ではユニークな属性で、その立場を意識した発言になっているかを考えることは、外国で必ず意識しないといけない思考であり、いい練習になります。属性を代表できるだけの発信をするためにはもっと周りとの関わりを増やしていかないといけないなと留学前に気づけてよかったです。 

今回出会った人たちはWriterとしての活動をしている方が多く、圧倒的な質問力にすごく刺激を受けました。情報は得るものではなく取りに行くものという意識を常にもって、アンテナを張っている姿勢が素敵でした。議論の中で印象に残っているが3つ。 

・世界と日本、都会と地方はつながっている。経験の吸収還元の繰り返しであり、区別して考えなくて良い(かいちゃん)
関係者を多く集めることで視点が多様化する。内部の人の意見を尊重しつつ、経験や技術をもたらし情報を整理することで、発展を共創していくのが外部の人間の役割(小西さん)
何故わからないのかと傲らず、目線を合わせ、情報を受けとる側の思考を分析して、乖離をなくしていくことが大事(野田さん) 

主語は地方活性化の文脈でも、国際協力にも、さらには普段の社会生活にも繋がってくるような心に残るメッセージでした。皆さんと比べるとまだまだ未熟だなぁと感じたので、一言・一足に意志を持って、攻めの姿勢で学んでいきたいと思います!改めて、みんなで作る現地ツアー、とても有意義な時間になりました!運営側の皆様、参加者の皆様、ありがとうございました!シズル感で心がいっぱいです笑

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