誇り
仕事柄、お客様に呈茶をすることがよくあります。受付が終わり、最後にお客様に飲みものを聞いて出すのですが、コーヒーメーカーのボタンを押し間違えて作り間違えてしまうことがあります。その時は、もったいないので自分で飲みます。この前もそんなことがありまして、作り間違えたホットコーヒーを飲んでいました。それが引き金となり、昔の記憶が蘇り、頭の中をグルグル回りました。
大学4年の箱根駅伝終了後、自分は閉会式の会場に入れなかったので、外で選手の荷物番をしていました。襷を繋げなかった現実、もう箱根駅伝を目指せない、4年間長かったなど、色んな感情が頭の中を埋め尽くし、頭の中がカオスな状態になっていました。よく分からない感情を抱えたまま待っていたのですが、足先や手先が冷えてきたので、一緒に待っていたマネージャーとコンビニに行き、自分はその時何故だか、普段飲みもしないホットコーヒーを購入しました。朝が早かったせいもあるのか、カフェインを欲していたのかもしれません。熱すぎてちびちび飲んでいたら、あっという間に冷え切ってしまいました。冷え切ったコーヒーの味、微かに香る紙カップの匂い、冷たいビル風。これが箱根駅伝の洗礼かと突きつけられ、その思いが増幅しました。紙カップに入ったホットコーヒーを飲むと、時々思い出してあの時感じた色々な感情を噛み締めます。
最後の箱根駅伝は最下位で襷も繋がりませんでした。後輩の泣く姿に何をしてやればいいか分からず立ち尽くしました。それでも、思い出す度に自分はあの場所にいたんだなって思います。学生スポーツなのに、正月三が日にこんなに人が集まって応援してくれる。あの場所にある意味テレビの向こう側の人として。締めの言葉が見つからないので、我らの流儀っていう漫画の最後の言葉使わせてください。
結局、夢の途中で敗れた者の痛みなんて当事者にならなければ分からないってことを、俺たちも後思い知るのだけれど、その痛みは、あの時、あの場所で彼らと共に戦わなければ知ることのできなかった痛みであり、俺の誇りとなった。