私たちが豚革を通じて伝えたいこと
この文章を読んでいる方のなかには、豚革を使うことに対して
「革のために命を落とすのはかわいそう…」
「牛革とどう違うの?」
「合成皮革のほうがいいのでは?」
など、さまざまな反応があるかもしれません。
私たちは、次のような想いを込めて、Saiの製品を作っています。
「Respect all living things
〜いのちと個性を大切にする〜」
豚革を扱う私たちが、なぜいのちや個性について語るのか、少しお話しさせてください。
豚革は食肉となった豚さんの皮から作られる
豚革は、豚さんが食肉となった際に一緒にとれるものです。
豚革のためだけに命を犠牲にすることはありません。
さまざまな価値観をもつ現代では、肉食を選ばない方もいるのは承知しています。
しかし、多くの方にとっては、豚肉は今でも美味しさとエネルギーを与えてくれる身近な食材でしょう。そうした恵みを与えてくれる豚さんへの感謝の想いを込めて、私たちは豚革を使っています。
しかし、日常的に食肉と一緒に皮がとれる一方で、国内全体では豚革を使った製品はあまり多くありません。
国内で豚革製品が少ない理由
豚革製品が少ない背景としては、「本革といえば牛革」というイメージが根強いことや、豚革の特性から加工しづらかったことなどが挙げられます。そのため、豚の原皮(げんぴ)は、9割近くが海外に輸出されている状況です。さらに、本革の他にもフェイクレザーなどの合成皮革が広まってきたことで、国内で豚革の利用機会は減少しています。
※原皮とは…レザーになる前の豚さんの生の皮
豚革が東京のクラフト産業を支えていることを知ってほしい
意外と知られていませんが、東京スカイツリーが立つ東京都墨田区は、古くから日本一の豚革加工の産地でもあります。しかしながら、国内で豚革を使う機会が減ることで、担い手が少なくなりつつあるのが現状です。
私たちは、牛革や合成皮革を否定するつもりはありません。
しかしながら、豚革のストーリーが知られていないために、豚革が選ばれることなく利用機会が減っていくことや、長年培われてきた東京の革加工技術がなくなることを危惧しています。
豚革の傷は生きていた豚さんの個性
先ほど豚革は加工しづらいとお伝えしましたが、それは原皮の段階で傷がついていることが多いのが理由です。
かつて多くの革製品では、こうした傷を避けながら、美しい革製品を作るのが良しとされてきました。そういった時代では、豚革が選ばれなかったのは仕方のないことかもしれません。
しかし、革の傷は、豚さんたちが生きていた頃に仲間と過ごしていた証でもあります。活発な豚さんほど、じゃれ合いによる傷が多いです。私たち人間の性格が多様なのと同じく、豚革の傷の程度もさまざま。そうした豚さんたちの個性が革から伝わるよう、私たちは傷も極力残して製品にしています。
豚革の特徴は柔らかな肌ざわりとしなやかさ
豚革の特徴は、ずっと触れていたくなるような柔らかさ。豚さんの皮膚は、人と肌質が似ているため、私たちにとってなじみやすく感じられます。頑丈さでは牛革にやや劣るものの、しなやかさがあり、日常的に手に取る小物製品に適しています。
このように、私たちSaiは豚革の持ち味を活かし、お客様に長く大切にお使いいただけるような製品を作りました。さまざまな素材や価値観がある中で、豚革が選択肢の一つとして手にとってもらえたら嬉しいです。