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『セクシー田中さん』の最終巻を読んで

漫画オタクを名乗る程でもないが、人並みには漫画が好きだ。面白い作品があればすぐに課金ができるよう、コミックシーモアには月5,000円支払っている。

ある日、いつものようにシーモアで無料漫画を読み漁っていた時に、『セクシー田中さん』と出会った。夢中になって読み進め、当時出ていた最新巻まであっという間に読み終えた。

田中さんは、女性漫画には珍しい主人公だ。一般的な主人公は”それなりの見た目”をしていることが多いが、田中さんは基本スッピンで映えないメガネ姿。一般的な主人公は”それなりの恋愛経験がある”ことが多いが、田中さんは一度も恋愛経験がない。

規格外、だけど、共感ができた。
田中さんは不器用だけど真っ直ぐで、人に対して誠実で。こうありたいと思う要素がたくさん詰まった人だった。そういう面がありながらも、おもちゃのミニカーのように、直進させてもいつの間にか少し左に曲がったり右に曲がったり、そんなことを繰り返しながらもその都度前を向き直して着実に前に進んでいく、そんな人生の歩み方に思わず自分を重ねていた。

だから、田中さんが朱里や笙野、三好さんと関わりながら、互いにポジティブな影響を受け、与え、そして各々の人生を照らしていく姿に、希望をもらった。私は田中さんのようにはなれないかもしれないけど、でも自分の周りにいてくれる家族や友人に愛を与えられる人でありたいと思った。

アンパンマンの作者、やなせたかしさんのエッセイに以下の文章が書かれていた。

「ひとはみんな、よろこばせごっこをして生きています。
 それが、このいかにもさびしげな人生のささやかなたのしみになります。」

『ボクと、正義と、アンパンマン』やなせたかし

田中さんは、意図して「よろこばせごっこ」をしていないけど、結果として周囲を喜ばせている。心がほんわりと暖かくなって明日もまた頑張ろうと思える、そんな関わり方をしている。


最終巻も、そんな田中さんの姿が描かれていた。
ここから、田中さんと三好さんの関係性はどうなっていくのだろう、笙野と田中さんの関係性も気になる、朱里はメイクの仕事をしていくのかな、エリナがどう関わってくるのだろう。続きが気になる、続きが早く読みたい、毎度読了後にもつ感想を、今回ももった。


『セクシー田中さん』は、今後も時折読み返しては人生の軌道を修正させてもらう作品であることには間違いはないし、そんな漫画に出会えたことに感謝をしている。

でも、やっぱり、こんな終わり方は悲しい。
『セクシー田中さん』だからこそ、悲しい。
先生の作品を、今後も読み続けたかった。

一読者にはああなってしまった背景に何があったかはわからない。でも、でも、関係各所が出した報告書を読んで、先生が真摯に作品を守ろうとしていたことだけはわかった。だから、余計に悲しい。報告書以降、何もなかったかのようにあの事象が流れていくように見えるのが、どうしても受け止めきれない自分がいる。

本当は最終巻の感想を「悲しい」で終わらせたくなかったけど、どうしようもできない自分の感情があるのもまた事実だから、自分の思うままに文章を打つことにした。


今はまだどうしても冷静になれない自分がいるから、また時が経ったタイミングで『セクシー田中さん』を読んで、田中さんの懸命な姿に希望をもらいたい。

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