昔地下鉄のホームで知らないおじさんに渡された金ピカの受話器
二十歳くらいの時、地下鉄のホームで電車待ちをしていた。
近くにいたおじさんが大きい声で電話してて
ちょっとうるさくて振り向いたら
金ピカの受話器を当てて話をしているおじさんが…
ってここは外だぞ…
受話器のコードを見るとおじさんの古くさいスーツのポケットに繋がっている
私は電話するおじさんを唖然として見つめる(もう目はそらせなかった…)
しばらくして電話を切ったおじさんはこちらを見ると
「欲しいか?」
私はなんかやべーと思いながら頷いた
おじさんはポケットから携帯を取り出し(親機はこれだった)イヤホンジャックから受話器を引き抜き
「やるよ!まだ発売前だから自慢していいぞ」
と金ピカのそれを私にくれた
電車が来たのでおじさんと電車に乗る
おじさんは発売するのは黒だから金はこれしかないんだ、自慢して良いよと教えてくれて一駅で降りていった
数ヵ月後に本当にヴィレヴァンで黒い受話器を売ってるのを見かけた
面白グッズ開発会社のナンパなおじさんだったのね
人の少ない地下鉄のホームの暗い雰囲気と
肩幅やたら広いおじさんのスーツと
金ピカの受話器の
なんともいえない雰囲気と
受話器を受け取った時の謎の高揚感がすごく記憶に残っている
ギャラクシー銀座の世界観だった
分かる人にだけわかってほしい
「おしゃぶ」な感じ。