柳井(山口県柳井市)~白壁の町と静かな街~
何度も色々なところへ行っていると、「通ったことは何度もあるが、行ったことは1度もない」という街が出てくる。今回足を運んだ柳井も、それらの街の1つだ。
青春18きっぷを使って山陽本線を移動する際、ほぼ必ずと言っていいほど、この街を素通りする。かつては寝台特急が朝夜に行き交っていたが、今では普通列車が毎時1~2本通るだけの1地方都市だ。
この旅の途中、山口県東部で丁度滞在する時間を作れることに気が付いた。「今まで何度も通過はしているが、そういえば行ったことはないな」と思い、今回初めて、立ち寄ってみることにした。
駅のホームを降りて、駅前をまずは見渡してみる。この日は平日ということもあってか、人の姿はまばらであった。左右を見渡しても特段栄えている感じはなく、メインストリートが一本、お店を多数連ねて鎮座している。街の形というのは、地形や歴史に合わせて多種多様ではある。とはいえ、地方で少し人口が多いくらいの街というのは、大体こんな感じであるような気はする。
そのメインストリートを進み、中心部の方へ足を運んでみる。柳井川の橋を越えると、伝統的な街並みが保存されている地区へ入る。柳井は江戸時代の街並みを保存している街で、それを観光要素として売りにしている。実際のところ、そういった日本的旧市街が観光名所になっている街というのは、探せばいくらでもある。この街にしかないものは、果たしてなんだろうかと思いつつ、足を進める。
しばらく歩くと、保存地区の建物が姿を現す。柳井の街は、白壁に塗られた建物が軒を連ねる。建物の屋根を彩っているのは金魚提灯というもので、津軽発祥らしい。数百年前の時代に、遠く東北の文化が流入してきていることを考えると、歴史のロマンというか、そういうものを感じる。
「カニが路上を通ります」とは、なんともユニークな看板だなと思う。ここで言うカニとは、ドブによくいるタイプのカニだろうか。このような道の真ん中を通るような生物ではないような気もするが、実際このように書いているのだから、通ることが多いのだろう。
建物と建物の間に佇む路地には、それぞれ名前がついているようだ。訪日外国人を意識してか、ご丁寧に英語の説明までされてある。昨今の情勢では、役割を果たすのは難しいだろうけど、再び日の目を見ることはあるだろうか。
別の路地へ足を運ぶと、左右に聳える白壁に出迎えられた。大通りの整備された街並みは、なんとなく今風のそれっぽい観光地という印象を受けたが、このように狭い空間に敷き詰められたように鎮座していると、なるほど一昔前の風景という感じもする。それゆえに、1本建っている電柱が惜しい気もするが、時代は21世紀であるから、やむを得ない。
名物らしい醤油アイスを食べてみる。醤油をかけたソフトクリームというのも、割とどこにでもある気はする。もう少し舌が繊細にならないと、少なくともかけられている醤油の違いは分からない。美味しかったのは美味しかったので、その辺は別にいいんだけども。
駅前には、いかにも20世紀に建てられたような雰囲気のビジネスホテルが鎮座していた。ここまで外観がボロボロだと、営業しているのか否かというのも判別しがたい。都会にもたまにこういう建造物が残っていたりするが、地方の小都市クラスだとどうだろうか?こういう建物を見ると、「昔は栄えていたんだろうな」と、寂寥感に近いものを感じてしまう。
以上、わずか数時間であったが、柳井の街を訪問した。観光地である白壁の街並みは、他の保存地区のような風景ながら、この地にしかない文化の一端を見ることもできた。一方、全体的な街並みというのは、今ひとつ活気に欠けた、地方の小都市という感じであった。商業施設等は駅の南側に広がっているようで、そちらには行っていないので見ていないだけかもしれない。この街は当然駅中心部だけというわけではないので、いつの日か機会があれば、もっと海沿いの方も見てみたいと思う。
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