「ライカ様を使ってた俺」という思い出作りに成功
思えば嫉みの多い人生である。
大小様々なコンプレックスを抱いて生きているのだが、その最大の対象は写真だ。
わたしは趣味程度に写真を撮っているフツーの人ではあるが、いい写真を見ると猛烈に嫉妬してしまう。
「どうせいいカメラ(高価なカメラ)使ってるんでしょ?」とか「どうせいいレンズ(高価なレンズ)使ってるんでしょ?」となり、「お金がある人はいいですね!」と思ってしまうのである。
過日、フォトグラファーを生業としている親友から美術館へ行こうと誘いを受けた。待ち合わせ場所にメルセデス社のゲレンデなる高級車で現れ、Tシャツ(ヨウジヤマモト)・短パン(ヨウジヤマモト)・サンダル(マルジェラ)・グラサン(イッセイミヤケ)の身なりに首からライカをぶら下げている。
そして極め付けは、彼がめちゃめちゃいい写真を撮ってしまうことだ。
親友とはいえ、わたしは彼に対して嫉妬しまくりである。(とりあえず金くれ ※心の声)
月日が流れ、そんなわたしがライカのMを購入する時がやってきた。レンズはズミクロンの50mmと35mm。わたしはいいカメラ(高価なカメラ)といいレンズ(高価なレンズ)を手に入れた。涙が出た。人生最大級の達成感だった。
それからしばらく、わたしは首からライカ様をぶら下げて、謎の無敵感に満ち溢れ、シャッター音を聞く度に高揚し、あらゆる被写体にカメラを向け続けた。
が、甘かった。甘すぎた。ライカ様を持ってしても一向にいい写真は撮れなかった。その時わたしは初めて、冷徹なる現実を肌で知った。
ただ単純に彼の撮る写真がよかっただけだった。いいカメラ(高価なカメラ)といいレンズ(高価なレンズ)は、全く関係なかったのだ。
認めたく無いが、そもそもわたしとライカ様との相性は良くなっかった。ライカ様には「Pモード(通称プロフェッショナルモード)」が搭載されておらず、全てがマニュアル操作で、動き回る我が子を撮るのに不向き過ぎた。
こうしてわたしは、「ライカ様を使ってた俺」という思い出作りに成功し、売却することとした。
わたしはいまGR IIIxを使っている。Pモード&オートフォーカスを駆使し、全能感に満ち溢れている。最強のカメラを手に入れた。
2023年1月27日(金)