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ミスチル歌詞から紐解く 全曲解説 「SOUNDTRACKS」[Documentary film]

ミスチル20thオリジナルアルバム「SOUNDTRACKS」の6番目に収録されている曲です。歌詞全文を引用させていただきます。

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今日は何も無かった
特別なことは何も
いつもと同じ道を通って
同じドアを開けて

昨日は少し笑った
その後で寂しくなった
君の笑顔にあと幾つ逢えるだろう
そんなこと ふと思って

誰に目にも触れないドキュメンタリーフィルムを
今日も独り回し続ける
そこにある光のまま
きっと隠しきれない僕の心を映すだろう
君が笑うと
泣きそうな僕を

希望や夢を歌った
BGMなんてなくても
幸せが微かに聞こえてくるから
そっと耳をすましてみる

ある時は悲しみが
多くのものを奪い去っても
次のシーンを笑って迎えるための
演出だって思えばいい

枯れた花びらがテーブルを汚して
あらゆるものに「終わり」があることを
リアルに切り取ってしまうけれど
そこに紛れもない命が宿ってるから
君と見ていた
愛おしい命が

誰の目にも触れないドキュメンタリーフィルムを
今日も独り回し続ける
君の笑顔を繋ぎながら
きっと隠しきれない僕の心を映すだろう
君が笑うと
愛おしくて 泣きそうな僕を

<出典>Documentary film/Mr.Children 作詞:桜井和寿

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インタビューの中でベースの中川さんはこのアルバムの核にある曲であるべきだ。レコーディングの一発目にこれを録ったときの音の衝撃も今までに感じたことのないものだった。だからアルバムとして絶対にいいのができるという予感があった。と言わしめるほどの曲。この曲から「SOUNDTRACKS」は始まったといっても過言ではない曲。

制作自体は桜井さんがウカスカジーでの活動で、ドイツにいってサッカーのワールドカップの取材にいったときにGAKUさんからの提案で、バスの長時間移動中に作ったとのこと。その時から<誰の目にも触れないドキュメンタリーフィルムを>っていうサビの言葉だけはあって、いつかこれが乗る歌ができてくるのを待ちながら生活していたらできて、これはすごくいい曲だと思ったんだけど、すごくいい曲というのは今までにどこかでMr.Childrenとして通ってきたメロディーでもあるのかなと思い大事に育てたとのこと。サッカー命の桜井さんの例えで、自分の小さな子供がサッカーを始めた時にボールに左足でタッチしたとき、将来のメッシかもしれないと思う気持ちだった。この歌が本当にメッシなのか。何度も何度もデモを取り直して、確認作業をしてレコーディングを終えた時に本当に天才メッシだったと、間違いじゃなかったと思えた感じといっています。

さらに桜井さんは<今日は何も無かった>とはじまる歌詞について、年齢を重ねるっていうこともあると思うし、晩年にいい作品を残す作家さんみたいなちょっと死の匂いがする感じ。<君が笑うと 泣きそうな僕を>ってここまで切実なことはなかなかおきないけど、そこまで切実に思える相手がいることをなんでもない日常と対比させながら描きたかったとのこと。

わたしなりのこの曲の聴きどころを2点。

初めの方で<昨日は少し笑った>に入ったあたりでワンテンポ遅れてJENこと鈴木さんのドラムが入ってきますが、このドラムが何とも言えない曲の厚みを出すとともに、ゾクゾクします。このアルバム制作にあたり、鈴木さんはドラムの新たなテクニックも習得し、歌や曲の魅力を惹き出す、ドラムの本当の弾き方、引き方を発見したと、はしゃいでいます。

もう一点は総勢32名のスタッフがサビの部分でユニゾンで歌っている点。とてもそんな大人数の声がかぶさっているとは聞こえませんが曲に深みをもたらしている。

この2点はどちらもサム・スミスのプロデューサー&エンジニアのスティーヴの力量が大きい。このプロデューサーはインタヴューの中でも頻繁に登場しますので相当の実力の持ち主であり、ミスチルに新しい名作をもたらした立役者と言えそうです。前作の「重力と呼吸」に続き、洗練された削ぎ落としを強く感じます。桜井さん曰く、ポラロイドカメラの撮ったばかりなのに、歴史や深みを感じさせる感じ。音として私が一番感じる特徴は「セピア色」。サウンドとして円熟していて、クリア、だけれども残響でとてつもなく奥深い。このアルバムで、スティーヴなどの新たな能力を重ねる事で突き抜けた完成に至っていると確信します。

「Documetary film」まさに名曲。この記事の内容を踏まえて聞いてもらえるとより曲の深みがますかもしれません。

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