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都市部のローカル線 ~城北線~


ローカル線について

 ローカル線とは利用人数が少ない公共交通機関の路線のことをいうが、はっきりとした定義はされていない。
 というのも、「利用人数が少ない」といっても、「一日の利用客がN人以下の路線をローカル線という」といった明確な基準がない。
 だが、ローカル線は大きく下の2つに分けられると考えている。

 ① とにかく利用客が少なく、日常利用している人が片手で数えられるくらいの路線。

 ② 近くを走る路線と比べて利用客が著しく少ない路線。

 ①のパターンは沿線に民家がほとんどないケースで、「ローカル線」と聞くとこっちをイメージする人が多い。そのため、この記事のタイトルの「都市部のローカル線」という表現に対して違和感を覚える人が多いと考えている。
 この手の路線は近年、観光地化して収益を増やそうという動きがあり、注目されている。
例を挙げると、JR飯田線では日常利用している人がほとんどいない駅(秘境駅という)が点在しており、そのような駅を巡るための臨時列車を走らせることで観光客を集めている。
※下記リンク参照

https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000043820.pdf

余談ですが、トップクラスの秘境駅と知られている糠南駅への訪問は別記事でとりあげましたので良ければこちらもご覧いただけますと幸いです。

 それに対し、②のパターンは沿線にそこそこ人が住んでいるケースである。利用が伸び悩んでいる理由は

・事業者の規模が小さく、大量輸送に必要な設備への投資ができない
・主要駅へのアクセスが不便すぎる

のどちらかにあてはまっていることが多い。
今回とりあげる城北線もこの2つが理由で利用客が少ないので都市部を走るローカル線となっている。

城北線の概要

区間

枇杷島駅~勝川駅の11.2kmを結ぶ
枇杷島駅は愛知県清須市、勝川駅は愛知県春日井市に位置し、いずれも名古屋への通勤圏内にある。


事業者

東海交通事業
(JR東海の子会社)

建設目的

 貨物列車が通る線路として建設された。
 もし、この路線がない場合は中央線から名古屋貨物ターミナルまで向かうためには、
 ① 中央線で名古屋まで行く
 ② 一旦、東海道線の稲沢まで行く
 ③ 向きを変えて名古屋貨物ターミナルに行く
といった順番で行かなくてはならない。(下の図)

特に進行方向を変える際には電車とは違い貨物列車は、機関車を反対側に付け替えなくてはいけないので手間がかかる。

そこで、勝川から枇杷島までを結ぶ路線を敷くことで、向きを変えることなく、そのまま名古屋貨物ターミナルまで行けるようにし(下図)、貨物列車の本数を増やすことを計画した。

図の赤線の箇所を通るように考えた

計画がうまくいかなかった理由

 城北線の着工に入った1976年の段階で、貨物輸送は自動車が主流になり鉄道貨物は衰退の道に入っていた。
 JR東海は採算が見込めないと判断し、途中で工事は中止となった。
 ところが工事を中止したのはあまりにも遅く、城北線はほぼ完成している状態であった。
 一切使われないまま放置するわけにもいかず、完成された区間のみで旅客営業をすることになり、今に至る。
 もともと旅客輸送を行うことを考慮されていないため、駅がある場所は周りの路線と比べて不便な場所にあるので利用客は少ない。
 あと、名古屋に乗り入れていないのが致命傷である。

城北線の風景

今年の夏に枇杷島駅から勝川駅まで乗車した。

枇杷島駅の乗り場はJRの枇杷島駅と同じ改札内にある。
枇杷島駅構内にはICカードで入れてしまうが、城北線の乗車にはICカードが使えないことに注意しなくてはいけない。

やってきた車両は1両の気動車だ。
ローカル線で当たり前の光景だが、ここは名古屋の隣の駅であるので不思議な感覚だ。

城北線は高架線になっており、名古屋近辺の街並みを楽しむことはできる。
高架線なのに架線がないのは珍しい。

多くの貨物列車を通すために複線で作られた。
だが、1時間に1本の頻度で1両の気動車が走るだけの今では単線で十分である。

大きくカーブして敷設しているので、用地買収にはそこそこ苦労しただろう

高速道路の隣を快走する。
本来の建設目的である貨物輸送の役割はすぐ隣にある高速道路に奪われた。

終点の勝川駅
枇杷島駅を除いたすべての駅が高架駅になっている。

お金がなく、エスカレーターもエレベーターもないので身体障がい者や高齢者が使うのは難しい。
ホームへは階段で向かうしかない。

中央線の勝川駅

中央線に乗り換えることができるが、500m離れていて不便となっている。
中央線から貨物列車が乗り入れられるようにする予定だったので、このあたりは建設に至らなかった区間である。

中央線の高架下をずっと進むと中央線の勝川駅に到着する。
かなり離れているが道中に案内はあるので道に迷いづらい。

中央線の勝川駅は真ん中に大きいスペースがある。
これは城北線が乗り入れられるように確保している。
地元自治体は城北線が中央線の勝川駅まで乗り入れるように要望しているが、費用の関係で計画の実行には至らない。


 こんな謎多き路線だが、列車の時間に合わせられれば名古屋に用事があるついでに乗ってこれる路線となっている。
 そんな都市部のローカル線に1回乗車して不思議な光景を体感できればと思う。

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