ナンバー
某ナンバー〇〇というロックバンドの二度目の解散コンサート。という事がある。副島卓郎はその日自身が主催しているトロロイモという名前のバンドのライブが昼の部に早稲田であったので終えてから行こうと思っていた。
副島のバンドはその日ギタリストの機材トラブルに見舞われてエフェクターの電源アダプターが故障したことによって殆どギターにエフェクトがかけられない状態となりなかなかシビアな演奏を余儀なくされた。
副島達のバンド『トロロイモ』の一行はライブ終了後一通り挨拶を済ませるとナンバー〇〇の二度目の解散コンサート会場であるところのぴあアリーナへと向かった。
横浜のみなとみらいに在る会場キャパシティー1万人収容のぴあアリーナに到着すると既に観客入場は終わり係員が入場口を閉めて片付けていた。どうやら当日券の追加販売もないらしかった。
副島はナンバー〇〇が好きだった。全く興味を示さないトロロイモの他のメンバーをトヨタのプロボックスに押し込めて会場の近くまで来てはみたもののやはり、というか当然入る事も出来ずに会場の側で。
仕方がないのでぴあアリーナの正面からゆっくりとプロボックスを移動させ裏口の方に回ってみると搬入口の様なところがあった。機材車、関係者の車と思しき車両が駐車してありバイクも数台止まっていた。
その中にSR400があった。
『あれ、、SRがあるな、、、、』
向○のSR
かもしれない。副島はそう呟くと勝手に関係者用の駐車スペースにプロボックスを止めて車を降りた。
ナンバー〇〇のボーカリスト向○はSRに乗っているらしい。それは某小説家に譲り受けたものらしい。それを副島はブログか何かをチェックしていたので知っていた。
『ちょっと、、、副島さん、、、怒られるから帰りましょうよ、、、当日券無かったんだし、しょうがなくないすか?、、、、どっかで肉食って帰りましょ、、、』
トロロイモのギタリスト上木原が面倒臭そうに車の中から咎めた。
副島は向○のものかもしれないSR400の前で棒立ちになり何かぶつぶつ言っている。
『会場のキャパ10000人で入場料が9900円という事は、、、絵?hobo hobo一億じゃん、、、、やば、、、、これがほんとのバリやばい、、、、てゆうか、、、、』
『ちょっと、、、副島さん?、、、、どこいくんすか?』
上木原の問い掛けも耳に入らないらしい副島は茫然自失的にふらふらと楽屋口と書かれた入り口に向かった。
入り口に係員と思しき若者が座っていた。
『おい、、、、お兄ちゃんさ、、、』
「はい?」
『お前は何、、この会場のスタッフかなんかなのかね?』
「はあ、、、えっと関係者の方ですか?」
『あ?、、、ちげえよ、、、ただの今日入れなかったファンだよ、、、』
「ああ、、、そうなんですか、、、即完でしたもんねえ、、、、」
『入れろよ、、、、』
「はい?」
『お前に1万円やるから黙って通させろ、、、、』
「いやあ、、、それはちょっとお、、、、何かあった場合、、、責任問題になってしまいますのでえ、、、、」
『かてえ事は抜きにしようや、、、どうせバレやしねえよ、、、、』
「いやあ、、、すみません、、、無理です」
ぴあアリーナの位置するみなとみらいエリアはイルミネーションも輝き年末感満載でキラキラしていた。人が溢れていた。赤レンガ倉庫あたりで何かクリスマス関連のイベントが行われているのかもしれなかった。