生産性の向上は一朝一夕にならず
こんにちは。ホワイトボックス(株)コンサルティング部の阿部です。
私はいまだに紙の新聞を愛用しているのですが、「生産性の向上」というワードを見ない日はありません。
ただAIやDXという言葉を日々耳にはしますが、具体的的な取り組み方やどうすれば生産性が上がるのかを教えてくれる人は必ずしも周囲に多くありません。
▽無駄が悪い訳ではなく
ところで、最近の企業の採用事情を見ていると即戦力になる中途採用が増えていて、経験ある人物を増やすことで生産性を上げているようにも思えてしまいます。
しかしこの例などは企業が目先にこだわる傾向を示していて、長期的視野に立てば若手が育たないことによって、寒々しい将来が待っているようにも感じてしまいます。
何が本当の意味での生産性の向上に寄与するかを吟味する必要があります。
私は結果として無駄だったということも、なぜダメだったのかを考え次に活かしていくことで、無駄に終わった失敗も何かしらの将来の種になる可能性があると思っています。多くの無駄を経験することで、より早いやり方、より上手いやり方が模索されます。
このような過程で生まれた優れた手法は個人の職人技にすることなく、標準化することでより多くの人がその方法を身につけることが期待できます。より多くの人が優れたやり方を身につければ、より優れた多くのモノや技術を広めることができ、その恩恵の波はさらに拡散していくことが期待されます。
▽生産性の向上が意味するところ
生産性の向上ということを簡潔に表現すれば、個人の技能技術や知識を高めることによってこれまでできなかったことができるようになること、例えば8時間で10できていた仕事が、工夫や努力によって20できるようになれば、生産性が上がったといえます。
しかし、個人の能力が伸びるまでには時間を要します。新芽に向かって「伸びろ、伸びろ」と声をかけてもなかなか伸びてくれませんし、伸ばそうとして引っ張ったら途中からちぎれてしまうか、あるいは根から抜けてしまうことは明らかです。丁寧な指導やコミュニケーションを取りながら進捗を見守り、必要に応じて支援する胆力のようなものが求められる所以です。
戦時中、史上最大級の主砲を備えた戦艦大和や、優れた運動性能と航続距離約3,000kmを誇った零戦を開発した日本とは対照的に、アメリカは戦闘機を標準化して大量生産することに成功しました。
個で優る日本が負けた理由の一つとされていますが、このことなどは優れた技能技術をもっていても、それを標準化できなければ真に広く貢献することが難しいことを教訓として教えてくれています。
すっかりパワーワード化している「生産性の向上」という言葉に踊らされることなく、真に寄与するやり方を考え模索し力を蓄えていくことが個人レベルでは大切だと考えています。
2022.01.25 阿部 勇司