手段の目的化に要注意を!
日本において度々見かける「手段の目的化」ですが、非常に危険ですので、要注意を。
ということが今回のお話です。
手段で成長した日本
日本人は手段にこだわりを持ちます。多分、日本が成長してきた歴史にもあるのだと最近感じています。
1960年代、日本は高度経済成長期をむかえ、人々は豊かになりました。
道路や鉄道のインフラ、家電3種の神器など、モノを手に入れることで、人々の暮らしが大きく変化していった時代、まさにモノの時代でした。
「モノさえあれば幸せで、モノを購入することで生活を良くすることができる。」
そんな時代でした。
日本にはしっかりしたインフラがあるのだから、海外に比べて豊かな生活が送れる。
そのような話もよく聞きました。
モノという手段が手に入りさえすれば、目的を達成できる。というある種の文化が形成されていったのでしょう。私自身もモノを購入することで要求を満たす。なんてことをすることがあります。日本人の中にはそういう文化が根付いているのでしょう。
モノだけで実現できない「目的」の時代へ
近年、この傾向が徐々に変わりつつあります。リアルからデジタルへの変化により現物から体験に変化しているのです。
その昔であれば、音楽も映像も、コンテンツを封入したパッケージに価値があり、モノの取引を行うことが当たり前でした。家には多くのコンテンツパッケージを並べ、ショーケースのようにしているお宅もあったでしょう。
しかしながら、今やデジタル時代、パッケージからオンラインコンテンツに変わりそもそもパッケージ自体を所有する必要がなくなりました。
昔に比べるとパッケージを購入する手間や入れ替える手間がなくなり、自由にコンテンツを楽しむことができるようになったのです。
モノに拘る時代からコトに変化しているのです。
そんな中でも、日本においては「明確に見えるモノ」を求める傾向が変わっていないと感じています。
このため、コトの検討をしていても、モノの話が出た時点でモノを目的化してしまうことがよくあります。
コトを検討していた筈が・・・
企業などにおいても、色々な変革を行うため、現場において何がやりたいか。を検討し、そのコトを実現する「モノ」を導入することがあります。
たとえば、よくある話は「現場従業員のナレッジをうまく活用し相乗効果を出したい。」という検討を進めた結果「コミュニケーションが円滑に取れれば良いのではないか?」という話に流れが変わり「コミュニケーションができるSNSを導入しよう」という話にすり替わることがあります。
まさに、「コト」から「モノ」に変わってしまった瞬間です。
以降は、SNS導入に主眼が置かれ検討が進みます。導入に必要な費用、利用するアカウント数、運用体制・・・そして導入に至ります。
しかし、「現場がナレッジをうまく活用し相乗効果をコミュニケーションで出せる」とは認識できていないです。結果、「モノ」を入れても使うような前向きな人が限られているため「多くの人が使ってくれない」なんてことに陥ってしまいます。
この検討の際、課題なのが、「現場のナレッジ」を「コト」として考えた際、利用者目線での「コト」だったのか。という部分です。
利用者がコミュニケーションが欠落していてナレッジ共有ができていない。誰かに教えを請いたい、と考えていたとしても「誰に」という部分が曖昧です。
インフラさえ整えば、現場が良くなる。
「モノさえあれば幸せ」という時代と同じ考え方では今時の複雑化した「コト」を叶えることが難しくなっています。
「モノ」売りから「コト」売りに変化しているのが、このような多様化した現在だからこそ、明確に提示しなければ、深く考えてモノを使う人がいないことへの対応方法なのでは無いでしょうか?
「コト」は現場ごとに違う
ではコトを明確化しよう。といっても、多様化した現在、現場ごとにコトが異なります。「モノ」のようにインフラとしてではなく、人に合わせた対応が必要になるのです。
だからこそ、現場を見て、入り込んで、何をしたいのか。「ありたい姿」の明確化が必要不可欠なのです。
いちいち現場に聞いてては大変だから全員の課題が解決できる万能な「モノ」が欲しい。という要求をされる方もおられますが、イマドキはそんなに簡単にいかなくなっています。現場ごとに柔軟に対応ができる「コト」が必要なのでは無いでしょうか。