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DXの勘違い

 先日の講演で某大学のDX推進部門の方と会話していた際、「DXの勘違いが多い」という話になりました。DX関連の業務従事希望者が入って見るとイメージが違った。もっとキラキラしている仕事だと思った。なんて話が多いようです。
 今回はそんな話です。

DXの本質

 DXの本質はなんと言っても「変革」をすることです。

 何を当たり前のことを、と言われる方も多いと思いますが、この部分が今でも重要なのです。
 その変革に対しD、すなわちデジタルを適用して変革ができればDXの完成なのですが、いまだに「デジタルを入れることで現場や顧客の変革ができる」と勘違いをされている方が多いです。

 従来、日本はOAやITと呼ばれるものを導入してきました。オフィスオートメーションというと事務作業の自動化と見えるかも知れませんが、いまだに自動化ではなく「紙がパソコンに置き換わった手段の転換」が多いです。

 OAもITもどちらも手段の転換であり、その転換が行われれば、皆様の本来のありたい姿を叶えられるかというとそのようなことはありません。

 私生活でもそうでしょう。
 スマホを手に入れて自分の人生が劇的に変わった、莫大な富を得ることができた、という人はほとんどいないでしょう。
 また、変わったという人はスマホを手に入れただけで何もして居なかったわけではなく、例えば配信者や発信者になり収益を得たり有名になった、スマホ向けのサービスを作り当たった、など何かしらの変化をしているのではないでしょうか。

 「でも、スマホを手に入れたからできるようになったんですよね。であれば、スマホさえあれば変われるのでは無いでしょうか?」と思われるかもしれませんが、それであれば、今は日本においてもスマホは8割を超える利用者がいる訳ですから1億人近くが人生を劇的に変えたり莫大な富を得たりしているはずです。

 そうなってない理由は「デジタルを手にしただけではDXは起きない」というところにあります。

ITはカイゼンに近い

 ではなんのためにIT化するのだ、というと、こちらは「カイゼン」に近いです。
 今までアナログで手間や工数をかけていたことをデジタルに置き換えることで「効率を上げる」改善を行います。根本的に行なっていることは変わらなくても、入力の手間や記録&集計などが簡単に手間なくできるようになります。
 このIT化ですが、「カイゼン」、つまりは今やっていることを良くするという部分にデジタルを使うわけですが、今やっていることの根本は変わりません。60秒かかっていた作業を職人なら30秒で熟せるのであれば、2倍の効率化が実現するわけですが、基本は今やっていることがベースになっています。
 紙に書いていた内容をPCに直接入力することができる、という変化も情報を記録するという点では何も変化していません。

DXはIT化から離れた位置にある

 ではDXはどうでしょうか?DXは最初に変革を考えます。変革ということは、今の延長線ではないところが基本になります。つまり、単なる手段を置き換えるではなく、目的にフィットするデジタルを考えるのです。目的というのは、小さな目的ではなく、より大きな目的です。情報を記録する、ということが企業がやりたい目的かというとそんなことはないと思います。何かしらお客様に価値提供をして対価を得ることが目的となるでしょう。
 そういう価値を紙からPCに入れ替えるようなIT化で実現できるかというとなかなか難しいのが実情です。

DXを進めるなら現場を知ることが必要

 IT導入はどちらかというと手段が置き換わったものなので、現場のことを本当に知らなくても想定はできます。文字を書いた紙がPCのデータになると何が変わるのか想定できるからです。
 一方で現場の人間やお客様が本来したいうことは何か?というとバックオフィスなどでは見えてきません。

 よくある失敗で「現場のことを思い、想定しIT導入をしたのに3割程度しか活用されない」というパターンです。7割の方が導入されたITを現場では使う必要がない、と認識されていることになります。こういう取り組みをDXという名前で実施されることも多いですが、その場合利用率が低ければ投資対効果も見込めないため、結果的にはDXは失敗したと認識されるのです。
 日本においてDXの成功事例が少ないのはこうした背景があるのではないでしょうか。

ITとDXは分けて考える 

 DXはITと同じと考えてしまうと取り組み自体が合わなくなってしまいます。
 この二つは別物である。ときっちり分けた方がより成功に繋げることができます。

 手段ではなく、目的に拘る、デジタル化の際、目的は何か?と常に問うことでDXを成功に導くことができるのではないでしょうか。
 そうなると最新デジタルをポンと入れて終わりではないので、全然キラキラしていないかもしれません。

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