手段から入ることが多い「日本のDX」
「DX講演をお願いします」なんてお声かけを頂くケースが多いのですが、その中でも多いのが「DXを実現するデジタルツールの紹介依頼」です。
こういうご依頼を頂いた際には必ず「まずはDXの本質話からさせてください」と回答させて頂きます。
なぜ、そのような回答をしているのか。が今回のお話です。
「DX=デジタルを使うこと」という勘違い
DX講演においても「中小企業でDXするデジタルツールの紹介」「大企業においてDXで実績のあるデジタルツールの紹介」を中心に話して欲しいと声をかけて頂くケースが多くあります。
日本においては、まだまだDXが進んでいないように思えますが、その背景にあるものがこの「デジタルツールを入れて使うことがDX」という考えのように感じています。
以前からお話ししていますが、DXで重要なのは、Dを使うことではなく、Xを行うこと。Xは変革ですから、何かしら変わることを意味します。
「だからアナログ処理をデジタル処理に変えるんですよね」
とおっしゃる方もおられますが、これは単に「手段」が変わっただけで、やっていることは何も変化していません。
営業さんが紙で書いていた日報をPCで書き込むようにしても「手段」が変わっただけで、「営業日報」自体は何も変化していませんし、この「営業日報」を書いたことで営業さん自身の行動が変わるか。と言われると、「パソコンに向かう時間が増えました」という変化になってしまいます。
「営業さんのパソコンに向かう時間を増やしたかったんですか?」
と聞いたところで「それは目的ではありません」とお答えされる方が大多数でしょう。
つまり、ツールを入れることで「目的」が達成できる訳ではありません。
あくまでも「目的」を先に考え「手段」を手に入れ、変革する必要があります。
「現場がツールを使ってくれない」という相談
これらに関連して・・・ですが、よく「デジタルツールを入れたが現場が使ってくれない。どうしたら使ってくれるようになるのか?」という相談を頂くケースがあります。
よくあるのは、デジタルツールを導入しても「3割」以上に利用者が広がらず、結果期待した効果が得られない。投資対効果がでない。というものです。
この「3割」という数字は100件以上同様の相談を受けた際に聞いている利用が進まない上限の割合ですが、どこの企業でも当てはまりそうな数字です。
なぜこのような相談が来るのか、というと「手段」を導入したものの現場の「目的」がその「手段」では達成できていないからではないでしょうか。
例えばチャットツールなどで多い例ですが「わざわざチャットなんて使わなくてもメールがあるから十分」と他の「手段」と大きく差がない。または、今の手段で代替えできるデジタルツールを導入した際、よく起こります。
以前に書いたと思いますが、「メール」は「手紙」のデジタル化、「チャット」は「会話」のデジタル化ですから本来、明確に利用目的が違います。
「目的」にあった「手段」の方がより良いのではないか?とも思えます。
でも、利用率が上がりません。
なぜでしょうか。
それは、現場の「目的」とずれているからではないでしょうか?
コミュニケーションを円滑化することで、
「現場の対応力が上がる」
「レポートを即座に上げられ対処能力が上がる」
など効果が期待できます。
これらが「目的」と考えチャットという「手段」を導入されたのでしょうが、現場の本来の「目的」はチャットをすることではありません。
また、コミュニケーションを円滑化することで「現場の人たち」にとって「やりたいこと」が実現できるような「変革(X)」が生まれるのか。というと必ずしもそうだとは言い切れません。
つまり、導入を考えている人の想定している「目的」と現場の「目的」がずれてしまい、現場にとっては新たな「手段」を導入した。という認識になってしまっているのです。
チャットツールにより会話のデジタル化は進みますが、それはあくまでも会話の「手段」が変わったに過ぎません。
現場の「目的」に合わせたDXが必要
最近、ChatGPTなどのAIが話題です。
このAIですが、事務処理の肩代わりやドキュメント作成、ネタだしなどあらゆることをできます。そのうちOA業務などの雑務を任せることもできるようになるでしょう。
現場には「本来やるべきこと」と「そこに付随する合わせてやらなければならないこと」があります。
「本来やるべきこと」は自分の能力と時間をかけてしっかりやる。
でも「付随する合わせてやらなければならないこと」に時間を取られると「本来やるべきこと」が進まない。
このような部分をカバーできるデジタルであれば現場はウェルカムな筈です。
例えば営業現場の人たちは「内部報告をあげる」「情報をまとめる」「日報で記録をとる」ということが「目的」ではなく、お客様にご納得頂き「喜んで自社製品を使ってもらうためにアプローチを行う」ことにあります。
その目的を達成する手段として「付帯業務」があるだけで。この付帯業務はやはり「手段」でしかないのです。
「目的」を先に見極め、その「目的」を実現するためにデジタルで「目的以外の手間をなくす」ことが「DX」につながります。当然、「目的」そのものが実現できるデジタルがあれば、それに越したことはありません。
「手段」と「目的」、この二つをしっかりと認識して進めることが「DX」実現には必要不可欠です。
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