【雑感】2025年J1リーグ 第1節 対清水エスパルス~ベクトル合わせの授業料~

東京ヴェルディ 0-1 清水エスパルス


スタメン

 ヴェルディは昨季の主システムとなった13421。G大阪から加入した福田が新加入選手としては唯一のスタメンを勝ち取った。
 対するはJ1昇格を決めた清水。14231システムで新加入ではマテウスブエノ、中原、カピシャーバが名を連ねる。ヴェルディをJ1昇格へ導いた中原にとっては古巣対戦となる。

前半

 5万人を超す観衆を集めた国立競技場で2023年J1昇格PO決勝戦の再来となった2025年の開幕戦。立ち上がりからアグレッシブに入ったのはリベンジに燃える清水だった。後方からのロングボール中心にシンプルに敵陣へ入り押し進めようとする。3CB脇を狙うも綱島悠斗、谷口栄斗が上手く身体を入れてマイボールにしてそう簡単にはチャンスを作らせない。

 ヴェルディはボール非保持時に1523で相手陣地でプレスをかけ、自陣に押し込まれると1541でリトリートしてそこから再びプレスをかけ出す昨季同様の使い分けをする。トップの木村がブエノと宇野のDHを消しながらCBへプレスして2シャドー山見と福田が連動しながらCBへプレスかけながらSBまでチェイスしたり外切りでプレスするも清水最終ラインの選手たちの利き足を上手く切っていたかというと疑問であった。プレッシャーをあまり感じないままロングボールを蹴り込んでいた印象があった。

 清水は沖からのゴールキックも細かく繋ぐことがありハイプレスをかけるヴェルディが相手のミスを誘発してボール奪取して攻め込む機会が何度か見られたが大胆さに欠けシュート、決定機までは至らなかった。乾と北川の2トップ化で1442でボール非保持を構える清水に対してヴェルディは最終ライン3枚が数的優位になる。最終ラインからこちらもシンプルに最前線の木村をターゲットにロングボールを入れてポストになりこぼれ球を山見、福田が拾いPA内へ侵入を試みる。仕掛けられる2人がゴールに近い位置へ攻め込むのは良いがフィニッシャー役と期待される木村が前のプレーでつぶれ役になるためゴール前では不在になり得点からの逆算が成り立っているのだろうか?と思う昨季と同じ展開が見られた。

 後方から繋ぐ時は清水がSHを上げて数的同数を作ろうとする。カピシャーバが悠斗にプレスをかけに行くと右WB宮原がフリーになりパスを通し、ここに山原が喰いついていくとSBCB間を広げることに成功し、山見にスペースを与えてハーフスペースからの攻略を見せる。システム上のギャップを突く上手い崩しを志向しある程度は機能していた。

 その流れからCKを獲得し左右から山見が蹴り入れて千田、悠斗が合わせるも得点することはできなかった。清水のプレスは上手く嵌らずヴェルディがペースを握りセットプレーを掴むことが続いた時間帯であったがここで得点できなかったのは実に勿体なかった。昨季開幕戦で鮮烈なFK弾を決めた山田楓喜のようなインパクトを残すことはできず、セットプレーの脅威を今季維持できるのか試されることにだろう。

 ではヴェルディのプレスが上手く機能していたかと言うと上述のとおりに完璧ではなく、これまでの1442では前線から4枚で圧をかけていたところ1523では3枚のため枚数も減り後方から縦スライドした際に全体を押し上げて圧縮できないとスライドした分だけスペースを空けてしまう欠点がある。正直昨季の開幕ごろの圧縮した守備陣形と質が変わってきていると考えている。ヴェルディがボール握り非保持で相手が背後を突いてきても宮原-悠斗、栄斗-優安で上手くユニットを作りボールを収めて自陣から押し返す構図であったが、35分ごろ清水が前線からの圧を高め北川と乾、中原、カピシャーバに連動してブエノ、宇野も続き高い位置から嵌めにきた。
 清水はマイボール時にフリーマンの乾があらゆる場所で顔を出してヴェルディの守備陣形を乱し始め攻め込んでダメなら下げて再びやり直す作業をする。ヴェルディがだんだんとリトリートするため前線からプレスする木村、山見、福田と清水最終ラインの距離も開き蓮川や住吉に時間を与えてしまう。すると、40分、蓮川から対角のフィードに右SB高木が背後を突く。ヴェルディの守備ラインがばらけてしまいオフサイドを取れず裏への飛び出しを許すと同じタイミングで走り出す北川へパス。北川が楽々押し込みあの時と同じように清水が先制する。

 試合後のコメントで蓮川が言及していたようにWB周辺にスペースが生まれやすいことがバレている。昨季の川崎F戦でも同様のことを言われておりフィードを蹴らせない前線からのプレス、縦と横のスライド、全体のコンパクトさ維持の立て直しは急務である。相次ぐ失点にはこのシステムを続ける意味を見出すことも難しくなる。

後半

 1点ビハインドで折り返しお互いにメンバー交代は無し。左サイドカピシャーバの個人技が目立ち始める。多少無理をしてでもゴリゴリのドリブルで持ち運びそれを警戒するようにヴェルディは守備ラインが下がり清水が押し込む時間帯が続き、ヴェルディの攻撃に迫力が出ない。失点後の立て直しの課題にも解決には時間がかかりそうである。

 局面打開のためにヴェルディは一気に3枚替えをする。山見、福田、優安に代えて新井、染野と磐田から加入した平川を投入。新井を左WBとして平川は中盤で齋藤と晃樹と3枚構成、染野は木村と2トップで1532へ変更。前線のターゲットを2枚にして木村の負担を減らしストライカーを増やし反撃に出たい狙いがあった。しかし、中盤3枚になったことで大外のレーンを宮原と新井に対して高木と山原の分かりやすい構図になってしまい、3バックに対して2トップ+SHでWBにはSBが1列2列縦スライドで対応することでほぼマンツーマンになり自然と清水の守備が嵌ることになってしまった。

 先手を打ったはずのヴェルディにとっては誤算だっただろう。結果としてビルドアップに苦しみ、ロングボールにも跳ね返されることが続き攻撃の形が作れない。自信を無くしているような緑のイレブンは安いミスも出てしまい自陣でのミスからピンチを招いてしまい、マテウスがなんとかセーブして追加点は許さない。

 66分清水が選手交代して1541へ変更する。カピシャーバを左WB、右SBだった高木をCB、左SBだった山原を右WBとして2トップに対して3CBとして守備を固めてくる。ヴェルディはコンディションが万全ではなかった悠斗が足を釣り限界を迎え、翁長を投入し宮原をCBへ下げる。その後、木村に代えてアカデミー卒2年目の白井を投入。めでたくプロデビューを飾った。システムを1442へ変更する。

 左WBではほとんどボールに触れてなかった新井が左SHになり高い位置を取れたことで仕掛ける場面が増えてきた。右サイドでは齋藤と宮原がコンビネーションから深い位置まで侵入ができてようやく左右のサイドで仕掛けができた。右からのクロスに染野が厳しい体勢ながらもボレーで合わせ、左からは新井がドリブルで相手選手間をぶち抜きPA侵入と見せ場を作ったものの時すでに遅し、後半はほとんどまともなチャンスも無くこのままタイムアップ。2年連続で開幕黒星となってしまった。

まとめ

 因縁の対決となった開幕戦で完全に引き立て役になってしまった。35分くらいの清水がプレス強度上げてくるまでは相手をよく見て狙いを持った戦いが出来ていただけに失点後に勇敢なプレーができず後手へ回ってしまったのは残念だった。
 僕らが見たい持ち前の「球際の激しさ」「献身性」「諦めない姿勢」はどこへやら、あまり覇気を感じない、高い緊張感が無いものとなった。出場選手たちの顔ぶれを見ても今季も選手たちの成長が鍵を握るだろうし、初心を忘れず貫く大切さを痛感する一戦になった。