【雑感】2024年J1リーグ 第30節 対北海道コンサドーレ札幌~駆け抜けた北の大地~

東京ヴェルディ 2-0 北海道コンサドーレ札幌

スタメン

 前節・柏に3-2で勝利して2連勝となったヴェルディ。谷口栄斗が出場停止明けから復帰して左CBに入り3バックのならびは綱島悠斗、千田、谷口栄斗とした。それ以外は同じで1名を入れ替えた形で臨む。
 一方の札幌は前節・川崎Fに勝利して3連勝、6戦連続複数得点中と調子上向き。この日は古巣対戦になった馬場がスタメン復帰してDHに入り青木が左ワイドに回る。攻守で目まぐるしく可変するが、システムは13421と表記しておく。

前半

 前回対戦で5-3の派手な打ち合いとなった両者。夏の補強もあり前半戦の低迷から奇跡の残留を目指し勝点上乗せしている札幌がお馴染みの可変システムからボールを握り攻撃的な姿勢で入る。DH馬場が最終ラインにアンカーに大崎がそれぞれ下りて1415のようになる。これに対してヴェルディは1541で構えて1トップ木村がアンカー大崎をマークしながらCBへプレス、DH齋藤もしくは森田晃樹が連動して大崎へプレスする。シャドーの山見と山田楓喜も背中で相手シャドーの駒井、スパチョークを消しながらSB化した高尾、パクへプレスかけCBにもそのままプレスする。両翼の近藤と青木には翁長、宮原に加えて栄斗、悠斗が横スライド対応する。

 ヴェルディは上述のプレスを見せるも積極果敢にするわけではなくCBにはボール持たせてOKで大崎を消すことに力を注ぐ。最終ラインも高くはせずにリトリートしたことで札幌のロングパスの距離は長くなり、跳ね返したりマイボールにする割合が多かった。ボール奪取すると前がかりの札幌の背後を狙いロングボール主体で巻き返す。

 そんな立ち上がりにアクシデントが発生。6分ごろから高尾が右足を気にするしぐさがあり、最終的には無念の負傷交代を余儀なくされる。代わりに投入された荒野がDHになり馬場が右サイドに下りた。ボール保持時は大崎が最終ラインへ下りて荒野がアンカーとなる。
 札幌は前半早々にゲームプランが崩れることとなり誤算であった。ヴェルディとしてはアンカーの位置にいた大崎を要注意としてマークの受け渡しをしていたのでその選手が最終ラインへ下りてゴールから遠のいたのは幸運だったかもしれない。

 ボール保持時の札幌は1415になり、中盤ががら空きでヴェルディのカウンター時に齋藤、晃樹が難なく前を向いてプレー出来ていた。これは前回対戦と同じ傾向である。時間が進むにつれて山見が高い位置を取れはじめて起点となりシュートに至らないが勇大が何回かエリア内でボール触る場面、二次攻撃から楓喜のカットインからのシュートがヴェルディにとっての前半の見せ場であっただろう。

 もっとオープンな展開でお互いにシュート場面が多いかと思いきやヴェルディが上手くコントロールするようにスコアレスで折り返す。

後半

 札幌はスパチョークに代わり菅を左ワイドに入れて青木がシャドーになる。ロングボールからボールが行ったり来たりではじまり、落ち着かないこともあり大崎が最終ラインに入らず中盤で捌くことでむしろ全体のゲームテンポが上がる。

 さきにチャンスを迎えたのは札幌だった。流れの中から鈴木が中央でポストとなり駆け上がる駒井にパス。フェイントで相手をずらして駒井がシュートを放つもマテウスが右足でセーブ。続けざまに左から菅が狙い澄ましたシュートもわずかにクロスバーを越える。絶好の先制点のチャンスだったがシーズンが進むにつれてパフォーマンス上げてるマテウスのビッグセーブがこの日も光った。

 ピンチを凌いだヴェルディにもチャンスがくる。50分、札幌が自陣でチャカチャカしてたら芝に足を取られたのかボールロスト。山見が素早く拾い、人数をかけて一気に攻め込むと楓喜、晃樹が続けざまにシュート。試合立ち上がりから気になっていたピッチコンディションの悪さがホームチームに仇となる。

 前半のようにコントロールしていたヴェルディも勝ちに行くことで後半はかなりオープンになる。ボール非保持時1523の札幌に対して中盤2枚の周辺を上手く使う。すると54分に試合が動く。栄斗から齋藤から山見と連続して縦パスを通すと、抜け出した山見が折り返す。飛び込んだ木村はシュートを打てなかったがこぼれ球を楓喜が相手の動きをよく見て落ち着いて決めてヴェルディ先制。縦パス2連発は精度高かったが札幌の1523のがら空きの守備もまずかった。ゴールに飢えていた楓喜は待望の4点目となる。

 ヴェルディは得点前から交代の準備はしていた染野と松村が山見、楓喜に代えて投入。加入後、WB起用が続いていた松村のシャドー起用は移籍後で初だった。

 攻める札幌に対して、ポストプレーに優れる染野が加わったことで前線で木村と2枚がボール収めてくれて、カウンターがさらに効果的になる。DH齋藤と晃樹の反応とスプリントも札幌を上回り、カウンターで何度もゴールへ迫る状況を作る。でも、残り時間と1点差というスコアからすると攻め急ぎすぎてたようにも見えた。これはあくまでも結果論だが、効果的なカウンター炸裂で2点3点と追加点を取れたらよかったが変な失い方で逆にカウンター返しを喰らう場面もあった。

 札幌は62分に青木と大崎に代えてサンチェスとバカヨコ、69分には足が釣った鈴木に代えて宮澤を投入。まだ1点差で20分も残っているのにCB岡村が最前線に入るファイヤーシステムでパワープレーに出る。でも先にボールに触れるのは守っているヴェルディが多かった。シーズンが進むにつれて練度によりプレー強度も上がり跳ね返す強さは強固になっている。特に真ん中に入った千田は身体の入れ方やジャンプのタイミングなど抜群でほぼほぼ競り勝っていた。

 ヴェルディは齋藤に代えて見木、森田と木村に代えて林、チアゴと選手交代して守備を固めながらもカウンターでとどめを刺しに行く。交代出場の選手たちが前がかりの札幌の広大に空いたスペースを突き何度もゴール前に迫ると後半ATに待望の追加点が入る。ピッチ中央でボールを受けたチアゴが右を上がる松村へパス。松村が相手を引き寄せると再びチアゴへ。菅野の動きをよくみて巧みなフェイントも入れて丁寧に流し込み移籍後の初得点を挙げる。加入してからなかなか結果が出ず、怪我もして思うような活躍ができていなく待望の得点に喜びを爆発させるチアゴ、彼のもとへ駆けつける選手たちの姿がそれを物語っていた。

 これで勝負あり。ヴェルディはクリーンシートで3連勝を飾り勝点44として残留をほぼ手中にした。一方の札幌は痛すぎる敗戦で残り8試合にJ1残留を懸ける。

まとめ

 結果に飢えていたふたりの選手の活躍で札幌相手にシーズンダブル達成で暫定ながら6位へ浮上。ボール奪取してボールホルダーへプレッシャーが甘く札幌守備陣がずるずる下がるとみるやドリブルで持ち運びPA内に人数をかけたり、ひとりふたりと少数でと臨機応変なカウンター発動して2得点を挙げて快勝。スタメン、交代組それぞれのユニットで決めきったことはポジティブ要素でありシーズン残り試合でのさらなるチーム内競争となるだろう。
 守備ではボールを持たれることが圧倒的に長かったが、マークの受け渡しやボールへの反応の速さも冴えて完封。後半立ち上がりに決定機を作られたが試合を通じてほとんどブロックできていただろう。攻守を通じて札幌よりも走り勝ち、やり切り、数的優位の局面を至る所で作ることができたのは組織力の向上も感じる。札幌は開始早々に高尾が交代してしまい、ここまでの良い流れが断ち切られてしまったようで悔やまれる。
 次節も前回対戦では勝利している鳥栖。ひとつでも上を目指すためにもここもしっかりと勝ちを掴みたい。