【雑感】2022年J2リーグ 第6節 対モンテディオ山形~想定外の打ち合い、執念のドロー~

東京ヴェルディ 3-3 モンテディオ山形

 最大で2点ビハインドから選手たちの執念実り後半ATの同点弾で引き分けへ持ち込んだ試合。前半は山形、後半はヴェルディという対照的な内容を振り返りたい。

スタメン

 前節、町田との東京クラシックを制し2連勝中のヴェルディ。馬場と山本がU21日本代表招集のため不在。また高木和、石浦も欠場。GKには長沢、DFにンドカ、中盤には加藤弘堅、阿野真拓が入り、トップには佐藤凌我が起用。前節から5名入れ替えて臨む。
 対する山形は前節、仙台とのみちのくダービーに敗れた。こちらもU21日本代表招集された半田と木村が不在。川井、野田が起用される。腕章を巻く南秀仁にとっては古巣との対戦となった。

前半

 今季初スタメンのンドカと加藤弘堅のプレーぶりに注目したこの試合。弘堅は開始早々に右ワイド小池を走らせる縦パスを入れて山形守備陣の背後を取るような狙いをいきなり見せた。ただ、山形の出足鋭い前線からのプレスが嵌り、2人との苦労する場面が続いた。

 山形はボール非保持時に14411で藤本と山田康太が縦関係になる。山田康太が加藤弘堅をしっかりとマークし、藤本がヴェルディ2CBへプレスをかける。連動するようにSH國分or加藤が縦スライドでCBへプレスかけパスコースを塞ぐ。強度高いプレスを前にンドカ、加藤弘堅は試合勘の無さが露呈してしまい「らしくない」ミスが見られまだまだコンディションが上がり切っていない印象を受けた。

 山形の前線からの守備に苦しむヴェルディ。ビルドアップからの攻撃の形としては左SB加藤蓮が偽SBとなりDH加藤弘堅の横に立ち2-2の形を取ってパスコースを増やす工夫をする。また、縦スライドするSH國分の裏スペースを活かすように梶川が左大外に張ってボールを貰い、杉本竜士との連携からサイド攻撃を仕掛ける場面が何回か見られた。ただ、山形守備陣を脅かすまでは行かなかった。左サイドでは大外・ハーフスペースを上手く使い活路を見出そうとしていたが右は小池が大外に張るくらいで変化が乏しく、左サイド中心の単調な攻撃が目立った前半だった。

 ヴェルディの守備(山形のボール保持)時、凌我と真拓が前に出て2トップ化して1442を形成。今季初スタメンの阿野真拓は前節までスタメンだった石浦と同じ役割を担った。これに対して山形は2CB+2DHでビルドアップ形成。DHの南と藤田は横並びや縦関係と状況に応じて動きを変えていく。また、右CB山崎はボールを持つと時折ドリブルで持ち運ぶ動きを見せる。2列前に居る右SH國分と右SB川井が大外とハーフスペースに絶妙な立ち位置を取り、藤田も流動的に立ち位置を変えることで山崎からのパスコースが2つ3つ生まれて、対面する杉本竜士と梶川が手を焼くことになった。竜士は持ち味の勢いあるプレスをなかなか披露できず、梶川は誰かに寄せるのかそのままステイしてスペースを埋めるのか曖昧なことが多くその結果、裏を取られてこのサイドから攻撃を許すことが目立った。

 ボールを握って崩すことに加えてアグレッシブなカウンター攻撃をする山形が主導権を握り試合を進めると、22分、ピッチ中央でボールカット。そのまま持ち上がり、サイドへ展開してクロスからこぼれ球を山田康太が押し込み先制をする。

  失点を喫したヴェルディ。自陣からの何でもないビルドアップでンドカがパスミスをして相手にボールを渡すと、藤本が慌てて帰陣したヴェルディの選手たちの動きをよく見て巧みなシュートを決めて瞬く間に2点目が山形に入る。

 2失点を許したヴェルディはンドカ、谷口栄斗らが後方から強気な縦パスを入れ始めて陣地挽回をして攻め込むもシュートまでには至らず、ここまで流れの中からの失点がなかったヴェルディが2失点を喫して前半を折り返す予想外の展開になる。

後半

 まさかの2点ビハインドになったヴェルディ。後半開始から加藤弘堅に代えて森田晃樹、杉本竜士に変えて新井を投入。森田晃樹は右IHに入り、梶川が中盤底へ下りて、阿野真拓が左IHへ回り中盤の構成を変えた。新井はそのまま左ワイドに入る。加藤弘堅は山田康太に攻守で苦しめられ、初スタメンの起用に応えることが出来なかった。また、前節2得点を挙げた杉本竜士はなかなかプレー機会に恵まれず、この日は彼の日では無かった。

 試合後の選手コメントでは、ハーフタイムに主将梶川から檄が飛んだようで、選手たちのギアが上がったかのように攻守に強度が増したプレーを見せる。

 左IHへ回った阿野真拓は新井との連携で攻撃を活性化させ、ヴェルディがリズムを作り出す。レフティの真拓は右よりも左の方が合っているのかもしれない。新井は持ち味のドリブルから何度も仕掛けて深い位置へ入っていく。山形を自陣に追い込むとCBンドカと栄斗もタイミングを見ては一列上がり梶川の横でボールを受けるようになる。

 流れを掴んだヴェルディ、一列上がったンドカがパスを受けると、右ワイド小池へ浮き球パスを入れる。裏抜けした小池がダイレクトで折り返すと、凌我がダイレクトで決めて1点を返す。昨季のゴールを思い起こすように山形守備陣の背後を見事に取ったゴールであった。

 1点を返してエネルギーが出てきたヴェルディ。前線の守備強度も上がりボール奪取すると素早くゴール方向へ人とボールが動くサッカーを展開する。

 すると、72分、流れの中で自陣へ戻っていた凌我の素晴らしい守備からボールを奪うと森田晃樹がそれを拾い、新井へ繋ぐ。新井はドリブルで長い距離を運ぶと、帰陣してきた南を冷静に交わしてPA外からカットインするように鮮やかなシュートをネットに突き刺して同点に追いつく。

 試合を振り出しに戻してヴェルディペースになるかと思いきや、そう甘くは無かった。この日、初スタメンで良い動きを見せていた川井が攻撃参加からクロス。藤本がンドカの背後から上手く前へ飛び出して頭で合わせて山形がすぐに勝ち越す。昨季、愛媛でも孤軍奮闘していた藤本の好調さが判る素晴らしいプレーだった。

 すぐに勝ち越されたヴェルディであったが諦めてはいなかった。小池に変わり投入されたバスケスバイロンがサイドで山田拓巳へ何度も仕掛けてはクロスを上げていく。
 終了間際には佐古真礼が山越に変わり投入され左SBに入った。加藤蓮が右へ回る。ヴェルディアカデミー出身の19歳はヴェルディでの初出場を飾る。真礼は190cm超えの上背を活かしたパワープレー要員として期待を込めての投入でもあった。

 右サイドのバスケスにボールが渡るとPA内には多くの選手が前線へ駆け上がる。バスケスは再三勝負を挑む山田拓巳に倒されてFKを得る。キッカーのバスケスはインスイングのボールを入れると身体を投げ出しながらファーサイドでンドカが折り返すと、谷口栄斗がヘディングで流し込み、起死回生の同点弾を挙げる。栄斗にとってはプロ初得点が貴重な同点弾になった。

 その後、山形がCKを獲得してチャンスを迎えるも佐古真礼が気合の入ったシュートブロックで防ぎ、失点を許さず白熱した試合は3-3の引き分けでタイムアップ。

まとめ

 代表招集に加えて、怪我人やコロナ感染でスタメンとベンチメンバーを見ると選手編成にはかなり苦労しただろうと察知する。前半2点ビハインドで、いままでならばこのあとも何失点重ねるのかと悪い予感があったが試合中の監督の采配も当たり、交代選手たちの頑張りもあり、苦しい状況の中でもビハインドから3得点を挙げて勝点を持ち帰れたことに拍手を贈りたい。
 後半ATの同点劇。後方から森田晃樹、佐古真礼も一目散にPA内へ攻撃参加する必死なプレーから熱さ、執念を強く感じ取った。チーム一体で戦えている良い証であるだろう。
 ただ、失点場面は自らのミスも絡み勿体なかったとも言える。良かった点と悪かった点を見直しして連戦に備えて十分にコンディション調整して次節を迎えて欲しい。