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2022年シーズン 東京ヴェルディの個人的な見所

 若く有望な選手たちが昨季終盤に活躍したことでヒヤヒヤしたオフの移籍市場だった。ただ、その心配はよそに、多くの選手と契約更新を果たし、新シーズンを迎えることになった。今秋11月にカタールW杯開催されることで10月にはリーグ戦終了という超過密日程のシーズン開幕に先立ち、毎年恒例の個人的な見所を挙げていきたい。

編成の振り返り

 これまでメディアを通して発言された江尻GMの強化や補強方針のコメントを読み解くと、次のことが分かる。

・今後3年間でJ1昇格を目指す ※2021年新体制発表時
・資金力はJ2中位クラス
・アスリート能力(フィジカル)の優れた選手獲得
・人間性を重視した選手編成

 2020年末に経営母体がゼビオへ移った際に約5億円の赤字で翌年(21年)も同等の赤字が見込まれるとの発表があった。最大で20億円近くまで増えた営業収入も杜撰な経営にコロナ禍が追い打ちをかけて10億円付近まで減収する苦しい状況に戻ってしまった。

 これまでの経営陣ならばこの状況でも市場価値の高い選手を引っ張ってきて「J1昇格」を目標にお金を派手に使っていただろう。しかし、事実上、全権を持つ江尻GMは資金とチーム戦力の状況から『3年間かけてJ1昇格を目指す』と公言している。感覚・手ごたえ面とデータ面の両面から1年間の戦いを分析し、不足している要素を抽出し、的確な補強を繰り出している。

 堀監督が就任した昨夏以降ものらりくらりの成績が続いたが、終盤戦になりメンバー変更が功を奏して攻守にアグレッシブなサッカーを表現できるようになった。J2、資金力が乏しいという状況にもかかわらず若くポテンシャル溢れる選手が多いことは他クラブにとっては絶好の見本市になり、J2暮らしをしていると毎年シーズンオフの恒例行事にもなる『引き抜き』を覚悟する。そんななか、堀監督から限られた資金力で強化よりも既存選手の引き留めを優先するようにお願いがあったと言う。その結果、大半の主軸選手の契約更新に成功し、ベースを残すことが出来た。一方で新加入は昨季同様に大卒出身者を中心に他クラブからは若干名にとどまった。

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新加入選手を含めた現有戦力のスカッドは以下のとおり。ポジション別にみていきたい。

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GK
 最古参・柴崎が契約満了(のちに相模原へ移籍が発表)となったが守護神マテウスが契約更新をし、3年目を迎える。そのライバルとして期待されるのは高木和だ。長崎時代には一時期はレギュラーとしてもプレーをしており、J2の長丁場のシーズンも経験している。年齢も重ね、キャリアのピークに差し掛かるような時期を迎えての新チームへの移籍に本人も意気込んでいるだろう。昨季1試合出場した長沢もJ3沼津時代の守護神からステップアップ移籍をしている身分であり、そろそろ試合に絡みたい。大卒2年目の佐藤久弥は実力者たちの牙城を崩すきっかけが欲しいところだ。

DF
 主戦どころでは若狭が大学時代の恩師である原崎氏が監督を務める仙台へ移籍。SB、CBをマルチにこなし、怪我が少なく計算が出来る選手が居なくなったことは痛いが、対人に強い山越を大宮から獲得。また、昨季の大半を怪我で棒に振ったの奮起にも期待したい。馬場佐古は世代別代表活動でチームを離れることも予想され、大黒柱になるンドカに山越と平、そして新卒の谷口の4枚がCBの主戦になるだろう。
  SBでは、右は昨季終盤に台頭してきた深澤がレギュラー候補筆頭。左は福村が琉球へ移籍したことで一番手と考えられるのは怪我で出場試合数こそ少なかったが、思いっきり攻撃参加が持ち味の山口だろう。新卒の宮本加藤連も大学サッカーで実績のあり即戦力候補ではあるが、いずれも経験の浅さが気がかりだ。そこで存在感を示してほしいのがチーム最年長になる奈良輪だ。平同様に昨季は怪我でほとんど試合に絡めなかったが左右両方をこなさせる器用さ、90分間アップダウンを怠らない献身性は魅力的だ。サポーターからの復活も待ち遠しい。

MF
 2018年から4シーズンにわたりプレーした佐藤優平がKリーグ全南へ移籍。昨季も途中までは主力であったが、負傷離脱後にチームとして戦い方が変わり、皮肉にもそこから成績が浮上した。絶対的レギュラーの立場から外れ、将来を考えた時にここでお別れとなったのだろうか。成長著しい森田山本のアカデミー育ちコンビが残留し、加藤弘堅井出の実力者も契約更新。そして終盤に腕章を巻いた梶川が徳島から完全移籍を果たし、中盤のタレントは豊富だろう。加藤弘堅、井出、梶川はさまざまなクラブでの経験を積み、若い選手が多いこのチームへ精神面での還元が期待される。この中盤に大卒ルーキー稲見が加わり、SB加藤連と宮本もDHをこなせるとの事で長丁場のシーズンに貴重な存在になりそうだ。球際に競り負けて中央を通されてピンチを招く場面が相次いだ昨季の実態にこの3人にはフィジカル面での強さを活かしたプレーが期待できるという。同年代のアカデミー出身選手の活躍に遅れを取る石浦にはそろそろ結果が求められ、唯一のトップ昇格をした西谷はじっくりと育成になるだろうか。

FW
 ルーキーながら13得点を挙げて今オフの去就が最大の注目となった佐藤凌我が契約更新。エースとしての活躍が期待されるシーズンを迎える。トップの位置には4シーズン目を迎えた端戸、松本から加入した阪野と3枚揃えた。ただ、トレーニング中の負傷により阪野が長期離脱を強いられ、追加補強も考えられる。ワイドでは17点を挙げてチーム得点王・小池、夏に古巣復帰した杉本、堀監督が重宝するドリブラー新井が契約更新。ここに若い阿野橋本が入るが、この2人は戦力として計算するにはまだ早いか。加入2年間をほぼフル稼働していた山下が同じカテゴリーの横浜FCへ移籍と痛手であるが、ここには日体大の後輩・河村とJFLいわきからバスケスバイロンを獲得。個の仕掛けから得点、アシストへ絡むことが期待されている。

注目ポイント

 2017年と18年にJ1昇格PO進出を果たすも19年以降の3シーズンは五分五分の成績で中位に落ち着いてしまっている。

★19年勝ち点55(13位) 20年勝ち点54(12位) 21年勝ち点58(12位)

 この状況を生み出してしまっているのは、下位にはしっかりと勝利出来ているが、上位陣相手に戦績が悪く、勝ち点を上乗せ出来ていないことだろう。上を目指すには、やはり、昇格争いする相手クラブからの得点、勝ち点3が必要になる。そこで期待するのは昨季17得点の小池と13得点の佐藤凌我の2人だ。

 下記の2人のゴール集を見てわかるように、シュートテクニックが上手くワンタッチでのゴールが多い。チーム、組織プレーの結果が複数人で崩すからフィニッシュが上手く出来ているだろう。ただ、もっと欲を言えば、個人で仕掛け、1人2人と相手を交わしてシュートを決める場面が増えてくれば自ずと得点も増えていく。シュートが増えれば自分たちがボールを握っている時間が長くなり、相手の攻撃位置を低いところからスタートさせられることにも繋がり守備面を助けることにもなる。

 小池と佐藤凌我の2人が得点源として今季も活躍を期待したい。もちろん、それ以外の選手たちにも個の力を要所要所で発揮してゴールやアシストする姿を楽しみにしたい。上位陣相手にどれくらい通用するのか、いよいよシーズンの幕が上がる。


今季は過密日程により週2回のペースで試合を行なうことも多く、あっという間に終わるであろうシーズンを思う存分楽しみたい。ではでは。