【雑感】2022年J2リーグ 第28節 対横浜FC~空回りに終わった高揚感~
東京ヴェルディ 0-1 横浜FC
結局負けてしまったなという印象の90分。天皇杯も勝ち、離脱していたメンバーもほぼ戻ってきて追い風が吹いており楽しみだったために物足りなさの残る試合になった。
スタメン
水曜日の天皇杯・磐田戦に勝利して18年ぶりにベスト8進出を果たしたヴェルディ。深澤が出場停止に伴い、ヒーローになった奈良輪が本職のSBで起用。CBにはンドカ、前線には杉本竜士、バスケスバイロンが復帰。鹿島からレンタル移籍の染野がいきなりベンチ入りを果たす。
一方の横浜FCは前節・千葉に4-0大勝。この1週間で相次ぐ離脱者が出てGKに市川を起用。和田と山下にとっては古巣との一戦になった。
前半
古巣ヴェルディとの試合で味の素スタジアムへ帰還した和田と山下にどうしても目が行ってしまう試合。ボールを握ることが多かったのはヴェルディだった。最終ラインのパス回しから左右に揺さぶり最前線の河村目掛けてロングボールを入れて、河村に空中戦で競らせたり横浜FC最終ラインの背後に抜け出させたりという展開を見せる。
ボール非保持時に1442で守る横浜FCは2トップ+ボールサイドのSHが縦プレスをかけるオーソドックスな守り方をしており、ヴェルディの最終ラインの谷口栄斗が左足でSH山下の裏へ縦パスを狙う場面も何度か見られた。ヴェルディは河村の裏抜けと左サイドで杉本竜士・梶川・加藤蓮のユニットでの崩しの攻撃が目立った。ここに森田晃樹も寄ってきて組み立てて河村がフィニッシャー役となる。
その反対に右ではバスケスバイロンがサイドに張っているも亀川が横スライドで追いついてしまい苦労することがあった。少し立ち位置を下げたことで森田晃樹が上手くサポートしてボールを貰うことで攻撃するがなかなかシュートまでは遠い展開が続いてしまった前半だった。
一方の横浜FCはベースは1442だが、ボールを握ると左SB亀川が1列2列上がる左肩上がりの3バック化になる。これに対してヴェルディは前線の河村がCBとGKの3枚を見る形で猛烈にプレスをかけ、IH森田晃樹と梶川がハイネルと和田をみてSH杉本竜士とバスケスバイロンがSB中村と亀川につく。
中央を封じられたからか意図的なのか、ロングボールを右サイドに入れることが多かった。ここにいるのが古巣相手にメラメラとしていた山下だった。山下は杉本竜士の背後を取り、たまらず竜士がプレスバックを見せて対抗。前進すると加藤蓮とのスピード勝負と見応えあるマッチアップが続く。
判ってはいたものの山下のスピードに手を焼くヴェルディ。右サイドからFKやCKを与える回数が増える。セットプレーから横浜FCにシュートを放たれる場面が立ち上がりから相次ぎ、空中戦で先にボールに触れられる悪い内容が続いてしまった。
流れの中からはなかなか崩せない横浜FCは前半20分あたりからDH和田が最終ラインに下がってビルドアップに参加し始めて中盤にスペースを作った。ハイネルの周囲が空いたことで山下がサイドで起点を作ると後方から中村が攻撃参加を仕掛け、左ではサイドに張りがちだった齋藤が中へ絞ってボールに触れるようになり厚みある攻撃になる。
それでもゴールを割れず前半はお互いにスコアレスで折り返す。
後半
ヴェルディは杉本竜士に代えて新井を投入してそのまま左ワイドに入れる。守備に追われる時間が長くてもそのタスクをこなした竜士。少々エンジン切れだったのか45分で退くことになる。
交代で入った新井は低い位置からも仕掛けていくことで横浜FC守備ラインを乱し全体的に敵陣へ入り込む。右SB奈良輪の攻撃参加から河村がヘディングシュートをするも惜しくも枠外へ逸れる。その後も攻め込む時間帯が続くとバスケスバイロンに代えて佐藤凌我を投入。河村を右SHへ回す。
対する横浜FCは齋藤に代えて松浦、67分にはサウロミネイロとイサカゼインを投入され、最前線の小川がシャドーの位置へ下がる。ここでヴェルディは加藤弘堅に代えて馬場晴也を入れて食い気味に小川のマークにつかす。
佐藤凌我、新井が立て続けにチャンスを迎えるもこの日、今季初出場となったGK市川の好守もあり得点を奪えない。すると、77分、横浜FCが左サイドからCKを獲得。ハイネルがファーサイドへ蹴りこんだボールを岩武が身体を崩しながらも押し込み横浜FCが先制に成功する。前半から何度も空中戦に競り負けていたヴェルディはやられるべくしてやられてしまった。
1点ビハインドになったヴェルディは鹿島から加入した染野が投入される。リードした横浜FCはリトリートしてスペースを消して自陣ゴール前を固めて逃げ切りを図る。後方からンドカが大きな展開で大外を狙うことが何度か見られたがこの日は精度に欠き、パスミスが目立ってしまい、左の新井になかなかボールが繋がらないことが次第に増えて行った。
交代出場した染野は守備を固める横浜FCに大して前を向いてのプレー機会が少なく攻撃面での評価は難しいものであった。一方で最もフレッシュな選手だっただけに守備時には走り回ってもらいたかったがスタメンで出ていた河村よりもプレスの質が劣っているように見えて少しガッカリした。守備第一でフィジカル色が強い城福ヴェルディではこの辺をしっかりとこなしていかないと序列を上げることは難しいのではと思ってしまう。
高橋を投入して最終的には5バック化して1点リードを逃げ切った横浜FCが勝利。ヴェルディはメンバーも戻り良い雰囲気がありながら消化不良な負け方で勝点3を逃してしまった。
まとめ
主軸選手を複数名欠きながらもしっかりと勝点3を手に入れた横浜FC。苦しくも耐え、ここぞの場面で仕留める試合巧者ぶりを発揮したところが上位につける所以だろう。
一方のヴェルディ、対等に戦えていただけに悔やまれる敗戦だ。直近の台所事情が苦しい時を乗り越え、メンバーが戻ってきて「さぁここから」という状況だったので勿体ない感が否めない。前回の天皇杯後の千葉戦同様に、今回も天皇杯磐田戦で燃え尽きてしまったのだろうか、積極性や大胆さ、プレー判断の鋭さで見劣りしてしまった。
これまでの何度もやられているセットプレーにまたも沈む。いまのメンバーだとンドカくらいしか空中戦の強い選手が居ないため相手に競り負けることが多い。セットプレーを与える機会を減らすという極論もあるが、そういうのは非現実的であり、守り方、配置、人選は考え直す必要性を感じる。前線からの守備が再び嵌り始めて流れのなかから崩される場面が減ってきているだけに取り組むべく課題は単純だろう。