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京都府立植物園に行き、かぐやフェス2023に参加した話

行く前から浮かれていた諸々の記録。メインのイベント関連は後半の1/3くらいしかないけど。


参加の経緯

SFレーベル Kaguya 主催で、初のオフラインイベントを開催されると案内があったのが9月末でした。その夏にさいたま市で開かれた日本SF大会に、ゲストとしてKaguyaの齋藤隼飛さんに呼んでいただいたこともあり、今度はこっち(東京)から行くべきなのかなと。で、Mastodonにつぶやくと好意的な反応がちらほら。

家族の反応も悪くなく(「行ってきたら?」)、これはもう、『新月 朧木果樹園の軌跡』(以下、『新月』)や『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』(以下、『大阪SF』)でご一緒した方たちに会えるチャンスです。京都は20年くらい前に宇治市社会福祉協議会に取材で行ったことがありますが、京都市内は学生の時以来。そもそも仕事や法事以外での遠出は6年ぶりです。いそいそと申し込んだのが週明けの10月3日でした。

どうやって行くか:交通手段と宿泊について

イベントは11月18日(土)の午後。私は東京在住。日曜に予定があったので後泊は無し。さて往路の交通機関はどうするか。いくつかの選択肢がありました。

  1. 金曜日に仕事が終わったらそのまま新幹線で前乗り・前泊

  2. 金曜日に仕事が終わったら新宿から夜行バスで京都入り。翌日朝に京都着

  3. 土曜の早朝に新幹線で京都へ→午前のうちに他を観光

  4. 土曜の午前に京都へ→イベント会場に直行

1.が当日はゆっくりできて楽そうですが、金曜の出勤時と新幹線乗車時には使わない荷物や着替えの持ち運びが増えます。何より、最近は京都の宿泊確保がなかなか難しいとの話もあったので断念。
2.は、自分がもう少し若くてかつ財布事情を気にするなら選んだかもしれません。学生時代に友人と京都旅行をするのに夜行バスを使い、冬場で窓際の席がひたすら寒かったことはよく覚えてます。それでも新宿バスタの運行ダイヤまでは調べました。より快適そうな3列シートの車両だと、案外値段が張るものですね。
結局3.を選んだわけですが、そうすると早起きしなくてはなりません。でも、仕事の取材で各地を回っていた頃は、朝6時東京発(まだ品川駅に新幹線が停まらなかった)の新幹線とか、朝7時羽田発の飛行機とか普通に使っていたので、なんとかなるでしょう。
4.を選ばなかったのは、あまりにも仕事の取材と同じ行動パターンなので、単なる自宅と目的地との往復はしたくなかったのです。

物販があるんだって?

かぐやフェスでは、これまでのコンテストの授賞式や参加者の交流、くじ引きやお土産があるとの当初案内に加えて、持ち込みによる物販もできるのだとか。。。そうか。自分たちで作品を本にして頒布している人たちにとっては、いい機会のひとつになるんだなと感心しつつ、自分では何も作ってないので持ち込みをする予定はありませんでした。

むしろ、この機に色々買い込んで、帰りは荷物が重くなることが想定されます。そうならば荷物が運べるよう準備しつつ、動きやすいようにしなければなりません。

京都府立植物園に行こう!

私は『大阪SF』掲載の拙作「秋の夜長に赤福を供える」の舞台とした枚方生まれですが、寺社仏閣やら西陣など、修学旅行お約束のコース以外に京都を巡ったことはほとんどありません。せっかく行くのだから、『京都SFアンソロジー:ここに浮かぶ景色』(以下、『京都SF』)で描かれた場所を訪ねるのもありかもしれません。バゴプラさんもお勧めしていますし。そこで浮上したのが京都府立植物園。「シダーローズの時間」(藤田雅矢さん作)の舞台です。ヒマラヤ杉をじっくり眺め、園内をプラプラと散歩してから会場に行くのも楽しそうです。主な行程は決まりました。

その後、紅坂紫さんから二次会のご案内があって、これもウキウキ参加を決めました。新幹線の東京行最終って何時に出るんだっけ? 何時に二次会会場を出れば間に合う? なんてことを調べるのも楽しい時間でした。

浮かれた投稿をしてしまう。

開催3日前だというのに、早くも浮かれた投稿をしています。いつもの出張だと、前日にバタバタと支度をするのですが、この浮かれっぷりは自分でも気恥ずかしくなります。崎陽軒のシウマイ弁当は、独特の匂いがあるので、周囲のお客さんに迷惑にならないかと心配したり(だから新幹線の席は一番出口に近い隅っこの窓際を選んだ)、お土産に赤福を必ず買うと決めたので、お店の営業時間(朝早く着いて終電間際に帰るので)を赤福様(広報の方にはお世話になったので敬称付)の公式サイトで売り場と一緒に確認したり、朝買ったお土産を預けるために駅のコインロッカーの場所を調べたり(小銭も用意しなきゃ)、さらには、地下鉄に何度か乗り降りするので、一日乗車券を買うのとどっちが安いか計算したり(今回は都度買った方が安かった)、・・・振り返ってみると、色々やっているものです。

手ぶらで動けるよう、カバンは斜め掛けのできる小さなショルダーを基本としました。長財布や名刺入れと一緒に、折り畳みできるリュックを入れておき、午後に会場で買ったものはリュックに詰めて背負うことにします。

カバン。写真は6年前の旅行の時に撮ったもの

後は服装です。新幹線内は快適・外歩きは寒い・歩いていると暑くなるかも・フェス会場は空調が効いているだろう・・と様々なシーンが想定でき、軽い防水パーカの下にユニクロの軽量ダウンベストを着込みます。後はマフラーをして調整。会場入りして暑かったら脱げるように。手袋は、まあ無くてもいいか。

直前になって、主催者から当日のタイムテーブルや注意事項が届きます。ふむふむ。参加者同士の交流に際してミスジェェンダリングにつながりかねないような行為の注意喚起が。これは重要です。これまで投稿者や作者の年齢や性別はあまり意識してきませんでしたが、実際にお会いした際に、自分が勝手に思っていたものと異なる可能性は当然あり、それを会話のタネにするのは確かに避けたい。少し気が引き締まります。みんなが安心して参加できるよう、この辺りの念押しをさらっと突っ込んでこれるのが、バゴプラ(VGプラス合同会社)の強みなのかなと思ったりもします。

もうひとつ、直前に考慮したのが当日の天気です。雨降る? 当初はメッシュ地の軽いスニーカーにしようと思っていましたが、雨になると話は別です。夏におろした、ゴアテックス生地で、軽い山歩きにも使える靴はあるのですが、終日歩きの行程だと少々重たくないか。。。

メレル・MOAB3 ワイドタイプ

・・植物園内では草地に足を踏み入れることもあるでしょう。足濡れが気にならないこちらのゴツイ靴を選び、折畳みの小さな傘もカバンに押し込みました。おかげでリュックはカバンの外にぶらさげる形で押し出されました。

左の傘が加わったので、右の折畳みリュックはショルダーの外に

前日夜、明日着る服を枕元に置くという、カツオくんとワカメちゃんくらいしかいないような準備もして、酒も呑まず、早めに床につきます。

新幹線は一路京都へ

朝5時にセットしたアラームの少し前に目が覚めます。朝ご飯は駅弁と決めていたので、身支度だけしてそっと家を出ます。さすがに道を歩いている人は少なかったのですが、山手線に乗るとそれなりに人が多くて驚きます。
品川駅での乗換え時間は約8分。この間にシウマイ弁当を入手したい! しかし、駅コンコース内では6時台だと開いている店が少なく、新幹線改札の内側に望みをつなぎます。あと5分!
・・残念ながら崎陽軒のシウマイ弁当は見つからず、似たような焼売弁当で妥協することにしました。てか、列車はもうホームに来てるし! あわてて手近な車両に買った駅弁とお茶を抱えて乗り込み、自分の指定席まで車内をだいぶ歩いてやっと到着。ふう。パーカ等を脱いで身の回りを片づけていると、列車はもう、次の新横浜駅近くまで来ています。

焼売中華弁当
朝から肉が多い。

後はのんびりと一路京都へ。駅弁を食べている間に、列車は熱海を通過して、車窓は静岡です。家を出る時は星空だったけど、だいぶ夜も明けました。

登る朝日と稲刈りの終わり

食べ終わったら、1冊だけ持参した『京都SF』を再読し、今日行く京都府立植物園の情報を復習します。良い天気になりそう・・と期待していると、名古屋に近づく辺りから、前方(すなわち西側)の雲行きが怪しくなってきました。

名古屋を過ぎてしばらくした辺り

こいつはヤバいかも、と覚悟をしつつも列車はダイヤ通りに京都へ到着。雲は厚いものの、幸い雨にはなっていないようです。よかった!
ホームで列車待ちをするお客さんの姿が見えてくると、なんとまあ、海外からのお客さんとおぼしき人の多さよ! いわゆるインバウンド需要を肌で実感した瞬間でした。東京にいても海外からの観光客の多さは感じますが、ターミナル駅の朝8時半でこれだもんなぁ。みんな大阪かなぁ。それとも岡山や広島、福岡まで行くのだろうか。

改札フロアに下りたらまずお土産です。八ッ橋は、聖護院の乾いたタイプが妻の好みです。ついでにしっとりタイプの小さな包みも手に取ります。後は赤福あかふく・・おお、レジ横に山積みになっているではないか! 自宅消費だけなので8個入りの小さい箱一つをもってレジへ。朝から結構な数のお客さんが列をなす、その一人となります。

改札を出たら次はコインロッカーです。よしよし。駅舎の外にたくさん並んでいます。小さな箱に買ったばかりのお土産を収めて、再び両手が自由になります。よしこれで地下鉄だ。うわわ、通路にはおしゃれな路地っぽく店が立ち並んでるよ。人もたくさんいるよ・・。
半ば息を止めるようにして地下鉄烏丸線の改札までたどりつくと、観光地感が薄れて日常の空気感がもどり、ホッとします。きっぷは・・そうか、交通ICカードが使えるんだ。ここはICOCA圏内ですが、私が日頃使っているSuicaも普通に使えます。何気ないことですが、初体験は新鮮です。ピッ。

SuicaとPASMO以外にも色々使えるんだ・・。

京都府立植物散策記

地下鉄は国際会館方面へ北上。降りるのは北大路駅です。京都府立植物園まで下車徒歩10分とあります。すぐ近くには『京都SFアンソロ』収載の「ピアニスト」(暴力と破滅の運び手さん作)の舞台のひとつとなった京都コンサートホールもありますが、舞台袖をのぞけるわけもないので今回はパス。
改札を出て地上に上がると、交通誘導の警備員さんが一人ポツンと立っています。行き交う人は少なめ。まだ9時過ぎなので、お店もほとんど開業前。生食パンのお店があったりエスニック料理店やパソコン教室があったりする商店街を抜けると目の前に賀茂川にかかる北大路橋が。おお、視界が広い。(本ページのトップの写真です)

橋を渡って左に曲がって、落ち葉降り積もる道へ

近くのグラウンドでサッカーの練習が始まろうとしています。プラプラ歩いてすぐ、京都府立植物園の正門前に到着。まだ人はほとんど居ません。9時に開園してすぐだしな。入園料200円を払って中へ。まずは右へ曲がってヒマラヤ杉を目指します。途中で園芸品売り場(鉢植えとか売ってる)に寄り道もしましたが、見えてきました。4本のヒマラヤ杉が。

バラが見ごろの季節です
あれ。2本しか撮れてない・・

・・ここからシダーローズのお話しが生まれてきたのか・・大木に添えられた説明書きを読んだり、広がる枝の下から梢を見上げてみたり。周りに花を咲かせているバラを眺めたりと時間がゆっくり流れます。

さあ、ここから先は自由に歩こう。だいたい反時計回りで公園をぐるっと一回りします。ばら園のヒマラヤ杉はともかく、園内の巨木の中には、台風被害で倒れたものや立ち枯れしたものも少なからずあります。これらを記録と記憶に残しておく意味は少なくないと思いますが、目の当たりにすると胸が痛むし、大きな(木がある)植物公園の維持管理は、自然災害に抗っていくことなんだなと思ったりします。

看板の後ろには立ち枯れした木
中心部が虫とかにやられていて倒れちゃったのかな。

盆栽に竹に針葉樹に水車に神社、と園内を回っていると、少し寒くなってきました。折よくすぐ近くには観覧温室が! 松本零士デザインみたいな外観の建物へ。入室料200円。

全面ガラス貼りの曲面は1990年代っぽい。
そこそこ大きなハスの花
なぜかウーパールーパー

入ってすぐ出迎えてくれたのは開花したラフレシア(を保存したもの)! おお、キャプテン・ハーロックだ、と関係ない話題で一人勝手に盛り上がりつつ、暖かい温室内へ。わ。湿気と温度差で眼鏡が曇る! 昔、図鑑で見たもの、名前だけ知っていたもの、初めて見聞きするものなど色々楽しみ、館内をぐるっと一回りして、また外に出ます。後は未踏破である敷地真ん中のスペースへ。ずっと歩きっぱなしだっので「森のカフェ」なるところで一休みしましょう。園内散策を楽しむ人も増えてきました。

午後のかぐやフェスは、軽食が出るとの案内はありましたが、時間帯を考えてもそんなにお腹を膨らませるものではないでしょう、たぶん。ここで簡単に腹ごしらえ。天ぷらうどん570円。関西の出汁だなぁ。

日頃はそばを選ぶことが多いので、うどんは久しぶりです

うどんを食べながら、午後の会場までの行程を確認します。スマホの地図アプリによれば、賀茂川沿いを歩いて向かっても1時間20分と、今からいけばちょうどいい時間です。地下鉄だと少し早いかな。まあ、動くことにしよう。

2時間半近くを過ごした京都府立植物園とはここでお別れです。十分楽しめましたし、別の季節には、木も花も今日とは違う顔を見せてくれるでしょう。またいつか来たいものです。
賀茂川べりを南に向かって歩き始めますが、ちょっと風もあって、うどんで暖まった身体がまた冷えそうです。ここは無理せずに地下鉄にしよう。元来た北大路駅へと引き返します。このままだと少し到着が早過ぎるので、ひとつ手前の駅で降りて、さらに時間つぶしに書店をのぞいて(『京都SF』は見つけられなかった)、そしてフェス会場であるイベントホール洛央に向かうことにします。

着いた!

かぐやフェス2023

当日の参加者は63名。詳しくは、主催者から公開済みのこちらの報告の通りですが、私もあちこち会場内をふらふら彷徨して楽しませていただきました。

アンソロジーでご一緒した方がたにごあいさつ

今回、私がリアルで相互認識&会話をしたことのある方は、主催者の齋藤隼飛さんと井上彼方さん以外では、今夏の日本SF大会でお目にかかった大木芙沙子さんと十三不塔さん、揚羽はなさんだけでした。ただ、『新月』と『大阪SFアンソロジー』でご一緒したり、それぞれの刊行前後にSNSでやりとりのあった方が何人かいらっしゃるので、まずはそうした方々を名札で見つけてはごあいさつして回ることにしました。それまでにSNSでやりとりがあると、「リアルでは初めまして」となります。適宜作品の感想もお伝えしながら話を聞き回っていると、今回『大阪SF』で公募から採用された人は、自分を含めて3名であることが確認できました。
そのうち、向こうから話しかけてくださる方もいらしたり、他の方と話すチャンスをうかがっている方に、私が既にごあいさつ済みの方を呼び止めてご紹介したりと、なんだかんだと時間が流れていきます。話の流れで、今回持ち込まれた著作の紹介をいただくと、物販スペースでも色々買い込むことになりました。toi booksさんでは、いくつかパラパラと読み比べて小山田浩子さんのエッセイを購入しました。しかし後になってどこかで読んだ気がすると思って初出を見ると、日経夕刊の「プロムナード」欄だと。ああ、たぶん読んでるわ。でも好きな話だからいいか。

話を戻して交流という点では、2年近く前の『新月』編集の際、参加者が互いの第1稿を読み合い、Zoomミーティングで話すというイベントがありました。そこで初めて知り合った方が何人もいらっしゃいます。今から思えば、あの企画は今回のフェスとの関係でも貴重だったなと思います。今回、新刊として『新月2』の刊行が発表されたところですが、参加が決まっている最終候補者10名の方同士でもオンラインで交流する機会があるといいなと思います。・・自分が『新月2』に参加できる資格はないのですが、言うだけ言ってみます。

参加者いろいろ

これまでバゴプラで作品を発表した方、紙の書籍に参加した方、3回のかぐやSFコンテストで関わりのあった方、直接表に出る形ではないけれど興味関心をもって来られた方、そして物販を意図して来られた方など、多種多様な方がたが今回は参加されました。中には、早川書房や東京創元社の編集の方も来られていて、情報収集なのか、敵情(! 今は裾野を拡げる仲間同士ですかね)視察なのか、はたまた作家さんの同行なのかは存じませんが、注目を集めていることは確かかと思いました。

「ソーシャル」の時間帯(要はご歓談ですな)には、あまり人と話さず、本を読むのでもなくポツンとしている方の姿も見られました。これは私の性分というか、いらぬお節介なのですが、グループでワイワイしている場であまり会話に入っていかない人がいるのは気になります。この場を楽しめているのだろうか、気後れしていないだろうか、と。仕事で研修運営の経験があり、グループワークに馴染めてない受講者がいないか気に留める視点の影響もあるのでしょう。あるいは自分がグループワークに入って、だれもしゃべらず黙っている状態に耐えられず、つい何かしゃべってしまうという(そういう人、いません?)・・・。何人かに、「にぎやかですね」とか「ちょっと疲れましたか」とか声をかけてしまうこともありましたが、気に触った方がいらしたらすみません。

途中、コンテストの授賞式が入り、また、いろいろな発表がありました。「瞬間最大視聴率」としてはこんなこともありました。

3本用意したワイヤレスマイクの1本が見つからず、バゴプラの3人が1本ずつ持ってステージに上がる予定だったらしく、「どなたかマイクを見ませんでしたか」のアナウンスに周りを見回すと、軽食テーブルの上に! 誰かがマイクを持ったままテーブルに来て、そのまま置き忘れたのだと思われます。・・そういうとこで目立つ予定は無かったのに。

拙作に触れつつ話しかけてくれた方がたには感謝しかありません。道路(“道路の人ですよね”というクモハさんのお声かけには笑いました)、発声、赤福、はたまた選外佳作だった作品の幼稚園の砂遊び(実はあのシーン、ほぼ実話なんです…)まで記憶に留めていただいたなんて! その瞬間瞬間が、今日来て良かったなと感じさせてくれました。

「新しい理念」についての雑感

10の発表(内、5つは新しいアンソロジーの刊行でした)を聞く中で、私が最も考えさせられたのは、これからのKaguyaの方向性を示す「新しい理念」でした。曰く、次の3つです。

  1. 社会の声に耳を傾ける

  2. 経済と向き合う

  3. 世界に開かれたSFレーベルに

いずれも、これまでバゴプラが取り組んできたその延長線上にあるものとして「ぶちあげた」(by井上彼方さん)形です。その趣旨に共感しつつ、思うものもありました。

1.は、解決すべき社会課題、簡単に解決はできないけれど目を背けるわけにはいかない社会問題、と、様々な場面が想定されます。たとえば第169回芥川賞を受賞した市川沙央さんが提起して話題になった「読書バリアフリー」は、日本ペンクラブが作家サイドからの反応を示しましたが、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」いわゆる読書バリアフリー法自体は、既に2019年に公布・施行されています。発信元としてやれることはあると思います。
ただ、取り上げるテーマによって、昨今の「嫌」何とかや同調圧力の風潮とぶつかることもあるでしょうし、それこそ2.が示す「商いとの両立」が成り立つのか、書く側・読む側の価値観のアップデートの促しと合わせて、高いレベルを目指してもらいたいと外から勝手に願っています。

2.も大事ですね。書き手の生活を支えられるも大事ですし、事業体としてのVGプラス合同会社が持続できることも追求してもらいたいと思います。原稿料と印税だけでない事業開発は、何でしょうね。。。「菊人形と赤福」の絵本でも出しますか?←まじめに考えろ・・私の作品はともかく、福音館書店とか童心社に絵本企画を持ち込みますかねぇ。「きつねのこんびに」(佐々木倫さん作:『新月』所収)なら合うかも。コミカライズだと「春と灰」(織戸久貴さん作:『京都SF』所収)をかっこいい絵で読んでみたいです。

3.は、SNSでの会話でも少し触れましたが、英語圏以外からの受信と発信が新しいターゲットになるのかなと思いました。音楽に例えると、受信は、日本に彼の地の魅力を伝えてくれる伝道師的な…ボサ・ノヴァにおける小野リサとか、タンゴやバンドネオンにおける小松亮太みたいな(異論は受け付けます)立場の人がほしいところです。発信は、コミックや児童文学作品では海外への翻訳進出の先行例も色々あるので、伝手がつながれば可能性はあるように思います。非英語圏に出すにしてもまず英訳版は必要かもしれませんが。とまあ、これまた外野の勝手な言い草に過ぎません。

等身大「おぼろん」をはさんでバゴプラの齋藤隼飛さん(右)と

今回の新発表で予定されている刊行物は、また何かの機会に参加したいものです。今の私だと、下町SFの公募があったら申し込むくらいでしょうか。北海道SFは、父親がかつて札幌に単身赴任していたくらいしか接点がないのでたぶん望み薄ですね。

閉会、そして二次会へ

お時間がきてしまい、堀川夢さんの「お家に帰るまでがかぐやフェスですから」の声に送られて、会場を出ます。主催者のみなさま ありがとうございました。でもまだ帰りません。二次会があるのです。

会場は少し離れたイタリアンのお店、お出汁と生パスタ 食堂バルORSO(アメブロとFBとXとインスタのどれにリンクを貼るか迷って一番情報量の多そうな食べログにした)。紅坂紫さんのご手配です。開始時間まで少しあったので、その辺をプラプラ歩くことに。周辺は裏路地だと思っているのに、結構車が多いです。しかも飛ばす飛ばす。京都の裏道は怖いなあと思いつつ四条通り(大通り)に出ると納得。大渋滞で動かない動かない。そりゃ裏道も使いたくなります。周辺のお店や宿泊施設はどれもおしゃれな門構えをしています。そうでないとここでは生きていけないのだろうかと、10月末で閉店した昔ながらの理美容室のガラス戸の貼り紙を見ながら思いました。
四条通りでは買う予定もないスウォッチとオメガ・スピードマスターのコラボモデルの実物を初めて見たりした後、会場へ。5分前だったのにほとんどの人がもう来ていました。おっと。

四条通りのお店のショーウインドウにて。版権はOK?

私の着いたテーブルは、大木芙沙子さん、藤井佯さん、渡邉清文さん、途中で席交代で座られた狐伏澤つたゐさんと一緒でした。色々食べながら飲みながら(やっとビール!)話をしました。大木さんとは下町の定義の話(下町SFに参加できたらいいなぁという下心込みです、ハイ)だったり、藤井さんとは77篇所収の鳩アンソロジーのマネジメントの大変さ(損益分岐点は超えられたそうでおめでとうございます!)とか、渡邉さんからはゲンロンSF講座の過酷さを聞いて自分にはとてもできないやとビビったり、たつゐさんとは澁澤龍彦の話になって、埼玉で開催された展示会に行かれたというから、渋沢栄一も深谷だけど埼玉ですよねって振ったら「あっち(栄一)は分家で、こっち(龍彦)が本家です!」と力説されて、こっちって身内かよと笑ったり。楽しかったです。

帰京

二次会はほぼ予定通りにお開き。さあ、今から1時間以内に京都駅で新幹線に乗り込まなければなりません。みなさまとは挨拶もそこそこに(失礼しました)お別れして、最寄りの地下鉄の駅を目指します。・・えーと、あっちだよな。

あれ? コインロッカーはどこだっけ?
京都駅に着いたのはいいのですが、朝、荷物を預けたコインロッカーに行き着きません。人通りがだいぶ少なくなったお店が並ぶ通路の脇の・・どうやら行き過ぎたようです。来た道をUターンしてもう一度探します。・・あったあった! 赤福と八ッ橋を無事回収しましたがここで5分のタイムロス。
改札を通って次は車内用のビールとおつまみを探します。ビールはすぐ見つかったのですが、つまみになりそうなもの(量少なめのお弁当があればよかった)はほぼ売り切れです。もう21時だもんな。この店は諦めてホームの弁当売り場を狙うかとも考えましたが、もしそこでもなかったらここに戻ってくる時間はありません。発車まであと7分! つまみは妥協して肉の太巻き(ちょっと多い)にしてビールとともにレジへ。ここでも列に並び、少し焦りますが無事に購入終了。ではホームに。
・・先ほどの選択は正解でした。ホームの売店は全てもう閉店していたのです。よしよし。新な知見〝21時過ぎの新幹線ホームで弁当は買えない〟を得たぞ。入線したのぞみ号の指定席に腰を落ち着け、今から最後のお楽しみです。

まずは新潟SFアンソロジーから

新潟SFは、さっと読みの印象では、とにかく「雪」がどうにも切り離せないモチーフのようでした。あと、県知事なり県知事選挙が用いられている作品が複数あり、そういえばリアルな選挙でドタバタがあったなあと思い返します。
そうそう。かぐやフェスの会場に置かれたホワイトボードには、「愛知SFアンソロジー何とぞ」とか「茨城SFアンソロジー何とぞ」とあり、居合わせた方と地域SFアンソロジーで47都道府県を回るなんて話もしました。年1本だと確実に私は死んでいる(年2本でも怪しい)ので、ピッチをあげてもらいたいものです←誰に言ってるんだ?
話がズレました。今回『大阪SF』に対する感想のひとつには、「維新への恨み言で胸焼けしそう」というものがありましたが、地域SFを編むということは、その地域固有の事象の影響があることは避けられないでしょう。2023年に語る大阪は、だからまあそういうことです。それで、他の人と内容やモチーフが被らないよう、どう棲み分けて編むかは工夫のひとつです。『大阪SF』公募の際は、既に書き始めている作品との重複を避けるため、とある地域や事象に関した作品の応募は避けるよう案内があったことを思い出します。
かぐやフェス受付前のホワイトボードに、他の人の書き込みへ落書きでツッコミをしたのは私ですが(正直に名乗り出る)、たとえば茨城SFアンソロジーで、梅と納豆を禁じ手にして封じたらどんな作品が出てくるでしょうか。そんな話題を私からふっかけられた方たち(突然にすみませんでした)からは、筑波山、つくば市(研究都市)、ロケット(JAXAがある)、鮟鱇などが出てきました。案外とモチーフはなんとかなるものですね。・・などと思っているうちに、新幹線は小田原を過ぎて間もなく品川です。ビールも飲み切りましたが、飲み過ぎです。

暗くなった品川駅に降り立つと、店はみな閉店してやや暗くなったコンコースという、今朝と似た光景が広がります。この日は山手線外回りが工事で終日運休だったので大崎で埼京線に乗り換え。日付をだいぶまわったところで無事に帰宅。濃くて楽しい一日でした。お疲れさまでした。
※最後までお読みいただきありがとうございます。