還暦すぎたおじさんが、Made in Japanの技術で原付バイク世界最高速度に挑むSuper Minimum Challenge 2023
米国ユタ州のボンネビルソルトフラッツで毎年8月に開催される100年以上の歴史を持つ、AMA(全米モーターサイクル協会)、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)公認の世界最高峰の最高速度認定競技会、ボンネビルモーターサイクルスピードトライアル(BMST)
世界中のライダーが最速を競うこの一大イベントに、今年も近兼拓史さんが挑みます
想像を絶する過酷な環境下でのレース
BMSTは、日本では(万人が知っているわけではない))知る人ぞ知るイベントですが、アメリカでは超有名なレースで50ccのオートバイからロケットカーまで様々なカテゴリーで世界最速を目指すレースが繰り広げられます
レースが行われるボンネビルソルトフラッツはアメリカのユタ州にあり、標高が約1282mと高いため、空気中の酸素濃度が薄く、レースが行われる夏季には40℃を超える暑さになります
加えて(海水よりも高塩分濃度の湖水の水分が夏の暑さで蒸発した)厚さ数十センチの塩の塊の上を走らなければならない、極めて厳しい環境で行われるレースとしても有名です
映画のロケ地としてもよく使われ、有名な例で言えば、映画「インデペンデンス・デイ」でスティーブン・ヒラー大尉(ウィル・スミス)が、捕獲した異星人を引きずっていた場所と言えば記憶している人も多いかもしれません
このレースでは、過去にバート・マンローのような伝説的なレーサーが華々しい記録を樹立しており、世界中のスピード狂やモータースポーツファンから絶大な支持を受けています
映画「世界最速のインディアン」でアンソニーホプキンスが演じていて有名ですよね
Super Minimum Challengeとは
そんな過酷なレースに、数年にわたりチャレンジしているのが、近兼拓史さんです。2018年に初めて参加して以来、今年で6年目になりますが、2019年に50ccと125ccの過給器クラスで6つの世界最速記録達成して以来、ここ数年は、covid-19や悪天候などのトラブル続きで走れていません
今年は満を持して世界記録の更新に挑みます
近兼さんが世界最高速度に挑む、このプロジェクトをSuper Minimum Challenge(SMC)と言います
映画監督であり、ランドスピードレーサーである近兼さんが米国ユタ州ソルトレイクで開催される世界最高峰のスピード競技会Bonneville Motorcycle Speed Trialsの最小排気量クラス(50ccエンジン)の世界最速記録に挑戦することを目的に発足されました
裏の意味としては、「日本の精密加工技術を結集し、最小クラスでのオートバイ世界最速記録を目指す!メイド・イン・ジャパンの素晴らしさを世界に示すことができる!」という想いがあり、それに共感した人たちが手弁当で参画しています
言わば、バイク版、下町ロケットのようなプロジェクトです
SMCを応援する人たち
このプロジェクトに、最初に手を上げたのが日進工具の後藤社長でした。「最小クラスでの世界一」という目標が、同社の得意とする小径加工用のエンドミルで世界一というイメージとピッタリマッチしたからです。
そもそも、日進工具という会社は、日本のモノづくりを支える誇りを持って、時代を先取る最先端のその先に挑戦し続けるという思いを込めた、「つくる」の先をつくる──というブランドステートメントを掲げ、(精密加工や微細加工に欠かせない)小径エンドミルのさらなる革新に挑み、Made in Japanの次なる未来をお客様とともに切り拓いていくという決意を標榜しています
チャレンジする人を応援するというコンセプトの元、これまでもJDFA(日本ろう者サッカー協会)のスペシャルスポンサーや工場のある仙台においては様々な復興支援活動などを応援しています
2018年のSMCの旗揚げでは、日進工具の参画を皮切りに、日本中の精密加工業界の雄30社以上が集まりました。半導体製造装置など高精度パーツの製造を行うマルマエやアルミ等の素材を顧客のニーズに応じて加工し供給する白銅など、日本のものづくりを支える企業が参画しています
還暦を過ぎたおじさんによる世界最高速チャレンジ(近兼拓史という男)
近兼さんは映画監督が本業です。2019年のSuper Minimum Challengeの様子は「痩馬の詩」という映画になっていますので、まずはYouTubeのダイジェスト版で映画監督としての近兼さんの仕事をご覧ください(https://www.youtube.com/watch?v=aja1pRYILqI)かなりかっこいい映像が見られます
近兼さんはモータースポーツにも造詣が深く、過去には、鈴鹿8時間耐久レースやFIMオーストラリアン・サファリラリーに50ccバイクで参戦しています
また、様々なメディアでライターとして活躍されていますし、中小優良家電メーカーのものづくりの支援としてジェネリック家電推進委員会代表理事に就任したり、東日本大震災の復興プロジェクトを立ち上げたり、FMラジオ局の開局と経営に参加したり、テレビやラジオの制作に関わるなど、持ち前の機動力を生かし、様々な活動を行っています
そんな近兼さんも御年61歳、ボンネビルのような過酷な環境下でのレースをするには、厳しい年齢であると言わざるを得ません
還暦を過ぎたおじさんが、地表30センチ程の視線となる地を這うバイクにしがみついて乗り込み、40℃を超える塩の砂漠を200㎞のスピードで走ることがどれほどたいへんなのかは想像に難くありません
世界最速で高齢化している日本の還暦を過ぎたおじさんが、無謀にも世界最悪の環境下にあるボンネビルソルトフラッツで、世界最高速度に挑み続ける姿は、中高年のおじさんはもちろん、若者を含めた多くの日本人に希望を与えてくれるのではないかと思います
日本のものづくりの底力(Made in Japanのプライド)
一方で、レースに使用されるマシンもすぐれモノです。ただの原付ではありません。ただの原付に200㎞のスピードが出せるわけがありません
車体のフレームはほとんど横一直線、そうなるとサスペンションもフラットな形で作られるため、普通のバイクとは全く違った構造になっています
究極の空力性能、究極の50ccエンジン、究極のフレーム構造、今回からは、カウルのドライカーボン化、各部のアルミ、チタンへの変更、おまけに近兼さん自身がベスト体重から5㎏も落とし、マシン総重量は2019年よりトータルで実に20kgも軽量化されています
それぞれの部品も、ミクロン単位の誤差がないよう、超精密技術によってつくられています。
ここまでやっても最高速度が出るかどうかは「時の運」ですが、やらないと世界最高速度の達成は絶対に不可能です
こんなことを、有志の技術者や日本の中小製造企業が、世界に誇るMade in Japanの技術と意地にかけ、ほぼほぼ手弁当でやってくれています
いよいよ2023年のチャレンジが始まります
今年のチャレンジは8月最終週に行われる予定です
現在、マシンは最終の調整に入っており、間もなく、アメリカに向けて送られることになります
ここ数年ではベストの状態でボンネビルに乗り込み、世界最高速度の更新に挑みます
今後も、近兼さんと連絡を取りつつ、状況について、時折、報告したいと考えています
面白いチャレンジだと共感いただければ、ぜひ応援をお願いします
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栗本 義丈
アルファ・ファンクション代表(https://www.alpha-function.jp/)
「知らない会社の株は買わない」をモットーに、主に上場企業のIR、ブランディング支援を実施
他にも、経営戦略の策定、株式上場支援、地方創生(観光DMOの設立等)の支援も実施している
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