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「国会議員秘書は兼職しちゃいけない」という常識すらない政治家と、そこを突っ込めない国会担当記者ばかりの国

こんばんは。今日もお疲れ様です。


1.毎日新聞のスクープ

日本維新の会の池下卓(いけした・たく)衆院議員=大阪10区=が、地元の
大阪府高槻市議会議員2名を市議の在任任期中に公設秘書として採用して
いたと毎日新聞が報道しました。

二人とも、国民の税金が原資である公設秘書給与と市議会議員報酬を二重で受け取っていたことになりますので、「税金にたかるシロアリ」と一部で
激しい怒りを借り、ネットで炎上しました。

この記事にも記載されている通り、国会議員公設秘書は国家公務員特別職に位置づけられていますので、国家公務員が兼職したり独自に事業を営んだりしてはいけないことになっています。

引き続きこの記事では、『議員が許可すれば認められる例外規定があるが、池下氏側は同法で義務付けられた「兼職届」を衆院議長に提出していな
かった。』『池下氏は取材に秘書の兼職を認め、「2人とも休日返上で秘書としても一生懸命働いており、報酬面の問題はない」と説明。池下氏の
事務所は「届け出書類の提出を忘れていた。情けないミスで本当に反省している」と陳謝した。』

2.毎日新聞が追い切れていない点

いやいや、毎日新聞ももう少しちゃんと取材しないと。

公設秘書の給与支給額を決める際、履歴書を提出させて「これまでの公設
秘書経験年数と公設秘書以外の経験年数」で必ず換算するので、まず公設
秘書と任命された時点で履歴書の提出は必須です。そうでないと、給料額が決まりませんので。
その際、履歴書に「市議」って書かれていたら、衆議院の事務局で普通気が付いて、在任期間がいつまでか、まず調べるでしょう。この事案では高槻
市議会議員選挙が直近で今年の4月にありましたから、任期は全員今年4月か5月までと決まってます。採用時点で市議を辞職してなければ、兼職届が
必要です、とその時点で池下議員の国会事務所に伝えている筈です。
それでも提出されなければ、衆議院議員事務局の職員も国家公務員です
から、不備を放置していたら自分の責任問題にされてしまいますので、再三事務所に連絡をしている筈です。

ですので、報道にある様な「情けないミス」ではない筈です。法律に規定
されている必要事項を放置している時点で、順法意識がないという話になります。

あるいは、そもそも虚偽の履歴書を提出したのかも知れません。そうすると、衆議院事務局で気付く筈もありません。履歴書に虚偽記載して給与を
不正に受給したら、有印私文書偽造です。

毎日新聞は、国会に何人も記者を常駐させてますから、これ位のことは
知っていて当然です。
それとも、池下議員についてもっと重要な秘密を入手したので、頃合いを
見計らってまとめて報道する予定なのでしょうか。

取材を受けた政策秘書は、より重大な犯罪レベルの話を聞かれずに済んで、ホッとしたことでしょう。

3.実際、法律にどう書いてあるかの検証

私も国会議員秘書を辞めてちょうど10年になりますので、ちゃんと法律本文で確認してみました。

今回問題になっているのは、元々昭和32年(1957年)に制定されて平成2年(1990年)に全面改正された『国会議員の秘書の給与等に関する法律』です。

この法律の第22条の2に、以下明記されています。

(兼職禁止)

第二十一条の二 議員秘書は、他の職務に従事し、又は事業を営んではならない。

ここに明記されています通り、国会議員公設秘書は、兼職を禁止されているのです。
あいにくこの法律には罰則規定がありません。
ですから、この法律を抜け穴的に利用する輩が出ない限り、関係者の良識に依存する建付けとなっています。

なお、これは公設秘書に関する規定ですので、私設秘書だったらこの限り
ではありません。

ところがこの条文は、平成16年(2004年)の法改正で、以下の条文が追加されて骨抜きにされてしまいます。

 前項の規定にかかわらず、国会議員が議員秘書の職務の遂行に支障がないと認めて許可したときは、議員秘書は、他の職務に従事し、又は事業を営むことができる。
 議員秘書は、前項の許可を受けた場合には、両議院の議長が協議して定めるところにより、その旨並びに当該兼職に係る企業、団体等の名称、報酬の有無及び報酬の額等を記載した文書を、当該国会議員の属する議院の議長に提出しなければならない。この場合においては、両議院の議長が協議して定める事項を記載した文書を添付しなければならない。
 前項前段の文書は、両議院の議長が協議して定めるところにより、公開する。

s051590291590.pdf (sangiin.go.jp)

つまり、国会議員が判断すれば、兼職可能で、ただし兼職届けは提出しないといけない、ということになりました。

但し、卑しくも国会議員ですから、その判断が少なくとも順法なのは当然
です。
「法律に書いてあるからいいと思った」等と、口が裂けても言わせてはなりません。
後から説明を求められて、兼職について国民が納得する理由が言えなければなりません。

また、この兼職届は公開されることになります。

結果として高槻市議会議員個人の議員報酬が公開されることになりますが、
市議は公人ですから問題ない筈です。

問題は、池下事務所で兼職届提出をずっと拒んできたのは、その兼職届に
記載される議員報酬と、提出済みの履歴書で記載事項が(おそらく)食い違うことになるのでしょう。

メディアは、そこを追及しなきゃ、ダメでしょう。

4.衆議院議員事務局の不開示決定

続報的な下記の毎日の深堀り記事では、毎日新聞の調査要求に対し衆議院
事務局が不開示決定したそうです。(有料記事なので冒頭しか読んでません)

履歴書の記載内容はほぼ個人情報ですが、毎日は、「公知の事実である
市議会議員である旨が履歴書に記載されていた筈なのに、事務局は気が付かなかったのか」と問えばいい話です。
外から見ただけでも、毎日は詰めも取材力も甘いです。

(2023年9月24日追記)また、上記の記事によれば、二人の公設秘書の市議との重複期間が異なっているそうですから、二人は別々のタイミングで秘書に
採用されたということになります。
その間隔は1年8か月程開いている様ですから、最初に提出された履歴書に
現職の市議であると理解できる記述があったら、その時点で兼職届を出して
くださいと衆議院事務局から伝えている筈です。
それが未提出に終わっていて、1年8か月後に同様の履歴書が提出されたら、
その時点で「またですか」と話しの蒸し返しになってなければおかしい話
です。

いずれにせよ、衆議院議員事務局の不開示決定で、この事案の闇は一段と
深まりました。

もし、既に提出してある履歴書に、高槻市議の記載がなく、民間企業に
勤務、とかなってたら、どうなるでしょう。
市議の報酬は、一般の人が考える様な高額ではなく、実は労働基準法で定められる最低レベル=月額30万円程度だったりします。
ボーナスもありません。
年収=360万円です。
それを民間勤務で年収400万円とか500万円とか600万円とか記載していると、公設秘書としてもらえる給与も、それだけ増えることになります。
もしそれを隠しているなら、性質が悪すぎます。

ちなみに上記の平成16年の法改正では、公設秘書の給与から自分の政治団体に強制寄付させる国会議員が相次いだので、それを禁止するのも目的の一つだったのですが、それをやらかしたのが、この維新の池下議員に敗れた同じ選挙区の立憲民主党の辻本清美議員だったので、そこは痛烈な皮肉になっています。

おまけに、池下議員自身が、『法律でも秘書の兼業はかまわないと確か
あったと思う』と述べています。
繰り返します。国会議員の分際で、こんな失言をさせてはダメです。
自身で、法の精神を骨抜きにしたら、その代償がどの様なものになるか、
まるで判ってない、ということです。

維新は、法改正を提案するそうですが、当然、その原因を作った池下議員にきっちり責任取らせるんでしょうね。
って、どうして国会担当記者が誰も一人も突っ込まないのでしょう。

この事案、見逃していてはいけないと思います。
引き続き、動向を注視して参りましょう。

では、また。

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