子供の遊ぶ公園から消え行く遊具 第3章の5
最近、公園で遊具がどんどん撤去されている。自分たちの子供の頃にあったジャングルジムや回転式の遊具、ブランコ、シーソー、滑り台など、懐かしき遊具が姿を消していく。
先日のあるテレビでのコメンテーターの意見を聞いて、その理由がわかった。コメンテーターの意見は簡単である。理由は危険だからという。ある子供が遊具で遊んでいて、指が挟まれて指を切断したとか、骨折したとか。滑り台式の遊具で、降下する際のスピードが早くて、地面に体をぶつけて怪我をしたとか。中には、首が遊具の棒に引っかかり、死亡事故に繋がったとか、遊具の急激な動きで頭部を打撲し死亡したともいう。
コメンテーターは、公園でこうした事故につながるような遊具があることは事故の危険性を常に孕んでおり、早期に撤廃すべきだと言う。さらに、番組では、親側の意見としてコメンテーターに賛同する人たちも現れる。この遊具で指を切断したのですか、体をぶつけて大怪我をしたのですかなどと驚きの言葉を入れ、こんな危険な遊具が近所の公園におかれていたら心配でたまりません。公園を管理する役所は何をやっているのですか。管理不行き届きが甚だしい。そして、役所側の責任問題を投げかけ、速やかに撤去していくという旨を告げさせる。このようにマスコミの意図は、管理する役所への責任追及に展開されていく。公共責任の追及をテーマにした番組制作のよくある趣旨である。
こうした管理責任の風潮がマスコミを機に高まると、責任回避への流れに動いていくのは当然である。つまり、事故につながるような危険なものは速やかに撤去していく姿勢である。常にリスクに警戒心を高めていく、リスクマネージメント手法にほかならない。最近の社会情勢がまさにこのリスクマネージメントに終始している。
昔からあった遊具が何故急に消失してきたかには、このリスクマネージメントの捉え方が最優先されているからである。この背景には、情報公開といった近年の状況も一因である。昔も恐らく、遊具による事故は起きていたであろうが、そうした報告がほとんどなされなかったことである。死亡事故が起きたとしても、巷の噂で一過性に出るだけで、時の経過とともに忘れ去られていく。
事故報告として明確なデータが残され、年間報告として公開されるようになると、事故の件数の多い遊具が浮かび上がるようになる。さらに、その遊具の製作メーカーに対する非難と責任追及へと世論は一気に動いていく。
本来なら、事故要因の調査や改善策によって遊具自体が改善され、より安全な遊具になることが必要である。これがリスクマネージメント手法のメリットであり、活かされるべき理念でもある。しかし、世間は、今後の改善を求めることより、まず非難から始まる。こうした流れから必然的にどのような結果に収斂していくかは明瞭であろう。時間とお金の投資をもって遊具の改善に求められることはなく、安易に切り捨ての道へと進む。そのほうが今後のリスクを負うことへの負担も軽減するからである。世間の目、特にマスコミは厳しく、時間的猶予を与えない。こうした風潮から少しでも危険なものは消し去るという流れに至る。
では、ここでいう危険なものとは何なのか。
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