ある喫茶店での人間模様 第2章の8
毎週、午後の診察を終えて次のクリニックに移る時、ある喫茶店でひとときを過ごす。およそ30分だが、その店は京都でもよく知られたパンの店で、パンを買い求めに来る人も多い。コーヒーやジュース、軽食などを注文し、奥のテーブルで過ごすが、パンを買ってそこで食べていくこともある。一見すれば、最近のありふれた光景かもしれない。
スターバックスなどの喫茶店にも入ることがあるが、そこでは大学生をよく目にするが、彼らはレポートをまとめているか、講義の予習をしているのか、1人で黙々と作業に取り組んでいる。彼らのテーブルに置かれたコーヒーは残り少ない。しかし、完全に無くなっていることはあまりなく、少しだけ残されたコーヒーが30分以上置かれている。仕事の資料を見ているサラリーマンや友人との待ち合わせでスマホを眺める人も同じ状況だ。2、3人の談話のひとときもあろうが、多くの人の利用時間が1時間以上で、全般的に長いといった印象がある。
しかし、ここのパンの店ではやや趣が異なる。おそらく、パンの軽食を目的に利用する人がいるためであろう。人の入れ替わりが結構速いようである。ざっと、周囲を見渡してみよう。実にいろいろな人がいる。1人で過ごしている人がやはり多い。パンを食べている主婦のほかに、レポートをまとめている学生から、スマホを見続ける若い女性、文庫本を読んでいる中年女性、Macbookを広げる男性などである。2人で話している人もいる。主婦仲間や男女のペア、塾を待つ母親と小学生の親子など。3人から4人それ以上となると、その一角はやや喧騒とした雰囲気が漂う。何か寄り合いの後の談話に多い。紙袋にそれぞれが花を入れているので、お花のレッスン後の寄り合いであろう。
店内の席の模様は、最近は画一的でないようだ。小さな丸型テーブルの1人席、片方がソファーでもう一方が椅子の2人席や4人席。大型テーブルにある8つの椅子。カウンター席などである。こうした店内の多様性はスターバックスにもよくあり、さまざまな形のテーブルや椅子がいろいろな方向に置かれている。
この店では4人テーブルが2つある。ここにさまざまな人の心理状況が垣間みえる。私の過ごす時間帯は16時過ぎの30分ほどであるが、店内は結構混んでいる。とはいっても、満席であることは稀で、各タイプの席が1つは空いている。8つの椅子がある大型テーブルは、グループが座っていなければ、1人、1人が離れて座っているくらいで、他の椅子はたいてい空いている。
先ほどまで4人テーブルに居たグループが退席すると、急にそこだけがぽつんと空いた感じになる。そんな折に、2人以上の人が入って来て、その4人テーブルに座るのはごく自然な流れである。しかし、ちょっと違和感を感じる時もある。それは、たった1人でその場所に陣取られた時である。
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