幼児の「おじいちゃん大好き」という言葉が切り札だ! 第2章の2
朝の通勤列車の中のことである。普段、朝の通勤列車では列車の機械音ばかりで会話の声はあまり聞こえない。乗っている人もスマホを見ているか、目を閉じているかがほとんどであろう。
先日は状況がいつもと異なった。甲高い子供たちの声がしていたからである。乗っていたのは、小学校4年生くらいの女の子とその妹である。若い両親も同伴している。彼らは4人席に座っており、一方に母親と姉妹2人、対面席に父親がいる。そしてその隣の窓側にお年寄りの男性がいた。
京都の烏丸駅から大阪梅田に向かう阪急列車。西院を抜けるまでは、地下のためか、ゴーゴーという音が強く、子供の声もさほど聞こえない。私もその時は通路を挿んだ4人席の窓側に座り、本に目をやっていた。桂に停車した際に、大勢の人が乗車し、ざわざわしてきた。ふと、さきほどの4人席に目をやると、2人の姉妹のうち上の子がゲーム機をしている。妹は4歳くらいであろうか。姉のゲームを覗き込んで話しかけたり、母親に何かねだるような言い回しをしたり、何とも落ち着かない雰囲気である。
こうした列車内の子供の落ち着かない雰囲気はよくあることである。新幹線の中での騒々しい子供への「ネット炎上」についてもよく聞かれる。子供が列車内で騒々しくする是非の議論について、私は子供の善悪判断よりもむしろ騒々しい子供に偶然居合わせた人が、そのこころのゆとりの閾値を越えたから腹が立ったと思う。居合わせた人の大半がこころのゆとりの閾値を越えるような騒々しさは、道徳規範にそぐわないかもしれない。しかし、ごく一部の人のこころのゆとりを越えたからといって、道徳論を持ち出すのは飛躍に過ぎる。
今回は、朝の時間帯であったことからか、私も「うるさいな」と、ネガティブな気持ちを抱いていたことは否めない。特に、下の子がうるさく、姉や母親に言葉で何度も攻撃をしかけてくる。相手をしてほしいからである。母親はほとんど無視した状態で雑誌を見ている。父親は、初めから目を閉じて何の反応もない。姉の方は、妹の言葉に振り回されて逐一反応する。「やだー」とか「だめー」とかである。妹がゲーム機を取り上げそうになると、怒りの口調になる。妹は、列車の中の退屈な状況にいて、自分の関心を得るために様々な仕掛けをしてくるのである。子供の過ごす当たり前の光景である。
こうした情景を、当初より最も不快な感情で見ていたのは、4人席に同席していたお年寄りの男性であろう。何といっても、苦虫を噛み潰した表情でいたからである。時々目を開くが、ほとんど目を閉じたままでいる。間近に甲高い声で騒がれ、席でも幼児が体を左右に倒したり、後ろ向いたり、立ったり、手を挙げたり、落ち着かない光景が常に視野に入ってくると気分がよくないのももっともであろう。
こんな細かい光景を私が目にしているのも、通路を挿んだ別の4人席に座っていながらも煩わしさが気にとまり、本を読む気にもならなくなったからである。
高槻駅を過ぎてのことである。姉と母親におじいさんの話題が出た。この家族の祖父の所に行くかどうかのようである。その日は平日であることから、家族4人が大阪方面に向かっていること、姉は学校を休んでいることなど、何か急用があって祖父の所に行くのかもしれない。
すると、下の子がこんなことを口にし出した。
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