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リエージュワッフル チョコレートがけ

 ワッフルといってもいろいろあって、オランダへ旅行した折食べたのは、食事かと思われるほどの弾力のある生地だった。かたやアメリカンワッフルはベーキングパウダーでふくらませる軽い生地。
 ところが、ベルギーワッフルにも土地の名前を冠したリエージュとブリュッセルの二種類あって、それぞれ食べ方がちがう。リエージュは日本でよく見る不作為の丸い形のやつ。外がカリカリで中はふわふわ。どちらもゴーフルとも呼ばれていて、ふと日本の銘菓をおもいだす。
 リエージュは屋台で買って持ち歩きができるが、ブリュッセルのほうは四角いやつで、生クリームやフルーツをトッピングしてもらい店内でいただく。リエージュワッフルみたいに持ち歩こうにもパリパリすぎてできない、パイ菓子の台座のようなワッフルらしい。銘菓風月堂ゴーフルに似ている。

 そういう多種多様なワッフルの存在をしりながらずっとつくらずいたのが、一昨年から突然ワッフルメイカーをフル活用するようになったのは、パールシュガーなるものを大量に購入してしまったためだった。そもそもスエーデンレシピのシナモンロールを作るためだった。カルダモンをたっぷり練り込んだ生地に真珠のつぶ大の砂糖を混ぜ込み焼くのだ。もともと薄味で油分のすくない生地にじんわり甘味がとけカリカリと口の中が楽しい菓子パンだが、いかんせん日照時間の短い時間の楽しみにとつくられたフィーカのおお菓子だからか夏はなんだかほしくない。それでパールシュガーの大量在庫ができたわけだ。

 なにか他の料理につかって片付けようと探したが、ワッフル以外に見当たらない。パンをつくっても家庭の規模だから無くならない、なくならない。これはもうワッフルを焼くしかないと機械を購入したわけだ。

 機械にするときめるまでもいろいろあって、韓国屋台のワッフルやらアメリカの老舗コーヒーショップのワッフルやら、動画や写真、インスタを駆使して調査した。美味しそうなのはいろいろあるけど、結局のところベルギーに住み自ら屋台のワッフルを何度も食べ尽くして見つけたというアメリカ人のレシピを参考にした。温めた牛乳にまるできび砂糖のようにイーストを溶かそうとするあたり、そし発酵するまで窓辺に置くあたり、男の適当さと豪快さが出ていて愉快で、部屋からみえる仄暗くブルーグリーンの隣家の塀なんかが映像としても印象に残った。この人のレシピの粉はすべてブレッドフラワーで、ベーコンやオニオンをいれたら食事パンになりそうな食べ応えのある配分だ。これに病みつきになって、抹茶をいれたり、家のベリー入れたりして厩舎へ持っていった。

 しばらくしてワッフルフィーバーが落ち着いてから焼き器の説明書きを見ていたらなんとワッフルだけで数種類のレシピが載っているのに気づいた。そしてリェージュワッフルも、これ一択ときめていた配合の他に、薄力粉と半々で作るレシピを知った。強力粉はふくらむが膨らんだ後乾燥すると食べられたものではない。その反対に薄力粉はだんだんと粉が水分を含みまた別の味わいが生まれる。
 今年、バレンタインをまじかに控えた厩舎菓子になにを焼こうかと考えた時、この粉の特性について思い出した。そして以前、パールシュガーが思いのほか甘すぎだと不評だったので、思い切り砂糖を減らすことにした。ドウにはバンホーデンのココアパウダーをこれでもかと投入。スイカ塩の要領でイーストで膨らますのに必要以上の塩を入れる。そして焼く際に昨秋の成果、ブラックベリーを載せる。最後にベルギーブラックチョコレートでコーティングした。

 ふわ、さく、とろ

 今年の苦作は甘い評価をもたらすか?
 昨年4月に華子が亡くなるまでは、同じ菓子を作ろうとは思いもしなかった。いつも追い立てられるように新しいものに挑戦していたが、彼女が一緒に台所に立ってくれなくなってから気持ちは挑戦的にはならなかった。それで始めた既存レシピのバリエーションづくり。ピスタチオ入りのシフォンケーキは最近つくったあたらしいバリエーションだが評判はよかった。

 味のバランスは考えたつもりだが、さて、どんな反応をいただけるか。

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