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【読書感想文】クリシュナ バガヴァット・ギーター 堀田和成著
この本を手に取ったのは思い付きですらない。ずいぶん長い間、患っていた読書に対する懐疑心が解けたからだった。
もともと図書館に行くと本の背綴じの文字が話しかけてくる。その一つ一つに応えていたら私の人生は読書で終わってしまう。人生は開拓と冒険のチャンスのための時間だ。他人のフィロソフィーの証明やそれをなぞるために使うには短すぎる。マットに深く体を沈め読むことに没入するのが脳細胞の喜ぶ最高の娯楽だとはわかっている。しかし哲学者の言葉すら全方位の背景あって意味をなすことを忘れてはいけない。ない頭でそう考えたのが十代半ば。その戒を解くきっかけが2024年末にあった。出来事がどんなだったかはさておき、無性に本が読みたくなった。それも無作為に、オールジャンル、なんでもいいのである。それがどんな影響を与えるかなんてどうでも良くなった。
その結果、呼びかける本をハントした。そのうちの一冊がこれだった。
まじでこの本、家の本棚に欲しいと思っている。
クリシュナはヒンズー教の神の一人で、青い肌をした若い男性の神である。それぐらいの知識しかない。著者はある夏の庭で昼寝をしていると、頭部に違和感を感じた。庭に立つ木を見るとそこにキリストらしき人の姿浮かんで見えた。という書き出しで始まる。
夢想小説かと思いきや、話はオールラウンドな宗教のクロスオーバーした話になる。サブ知識としてインターネットで調べたことを加筆しておくと、著者の堀田和也氏は宗教法人を創立した。
この本は、名前を聞いたことがあるヴィシュヌ神、シヴァ神、カーリー神ではなく、クリシュナを一番上に構え生きるとは何か、カルマとは何かを話している。正直、サイケなインドの絵で見たことのある青い肌の青年は、私の中では傭兵で、ヴィシュヌ神より上の存在という設定には違和感があるけれど、そんなことはお構いなしに話は進んでゆく。
文章は新約聖書の様相を呈し、クリシュナがヴィシュヌ神に教えを説く形で進んでゆく。この本によれば、ヒンズーの教えは地球上で最も古く、キリスト教や仏教の原型となったという。コアな教えはアーリア人の移動に伴い地球上の各地に広がったそうだ。
そんな論説をしつつ、確証のないクリシュナの教えを説いている。その一つ一つにつながりがあるのを確認するには知識が足りないが、不思議と私の今の疑問に応えていた。
不思議だった。きっとクリスチャンが聖書を開くのに似ているんだろう。写真は1998年に出版されたものだが、ここ数年の電脳社会の発展や世紀末的な環境などの世界の変化に呼応している部分もある。先見の明というものかもしれない。
盲信。信じることは宗教の原点だけど、私はまだその域に達していない。自分の頭で考えたい。電波の自分が齟齬を感じない中道を、まだ探しているところである。
何にも帰依しない。
ただ、すっくと立っているための足元に欲しい一冊ではある。
※【読書感想文】はこの本のポイントかつエッセンスの私的な背景を含んだ記録。決して『お薦めリスト』ではないことにご留意ください。