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Hey Siri

「職場まで何分かかる?」
コロナ蔓延でしばらく電車通勤をやめている。自動車の中で時計に話しかける。
「混み具合は普通程度なので32分ほどかかります。」
私が車に乗っていると、時計が知っているのを不思議に思いながら、
「HeySiri」
毎日がスペシャルをかけてほしいと時計に頼む。反応がないのでハンドルから手を離し口元でささやく。しばらく待つと耳元で竹内まりあが流れる。しかし、Bluetooth接続の補聴器から流れる音は元気がありすぎる。
「HeySiri。音を小さくしてくれ」
「これで最小です。」
「困ったな。」
「HeySiri。音楽を止めて」
そうだと思い出し、
「HeySiri。Aさんに電話して」
頭文字だけで呼び出そうと試した。当然、「Aさん」は登録していない。
「この中のどなたですか?」
「ごめん。電話はやめる。」
「謝ることなんかありませんよ。」
大きな信号で止まった隙にAさんの住所録の会社名に「Aさん」を追加する。車は動き出す。
「HeySiri。Aさんに電話。」
「Aさんとは〇〇さんのことですか?」
「そうです。」
「〇〇に電話をかけます。」
電話の通知音が鳴り響いた後、Aさんの声が聞こえる。
「はーい。何かあったの?」
「いやー。Siriに遊んでもらっている。」
「びっくりするじゃないの。」
「ごめん。」
「HeySiri。ドラえもんの歌かけて!」
しばらくしてのび太とジャイアンとスネ夫としずかの歌声が流れる。
「今日も一日、楽しく過ごそう。」
「なあ、Siriさん」

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