何清漣★死なば諸共の「香港国家安全法」は何のため? 2020年5月28日
香港での武漢肺炎がまだ終結を見ないのに、北京は「香港国家安全法」を推進しようとており、香港人に珠運団抵抗闘争をせざるを余儀なくし、米国など西側国家と政府、メディアは非難の声一色です。
今や、北京は出口の見えない苦境にあり、世界各国の「脱中国化」の叫びに直面し、「中国をハブにしたグローバル産業チェーン、サプライチェーン、さらにはバリューチェーン」という最大の資本は、全面的な清算に直面しています。
この時を狙った「香港国家安全法」導入は必ずや香港人の犯行を招き、世界の反感を呼びます。皇帝の座にある習近平は一体何を考えているのでしょうか?
★立法院選挙での民主派を警戒
今年の9月には香港立法院の選挙です。 早くも今年4月には中国共産党が香港メディアを通じて警告を発し、4月22日には香港の「明報」が社説「香港の状況は国家安全保障に関係しており、『死なばもろとも玉砕作戦』は決して良い結果をもたらさない」を掲載。
国務院香港・マカオ事務局が発表した3つの声明を引用しながら、中央政府には香港の憲法秩序を維持する権限と責任があり、香港が「倒錯の拠点になることはできない」と強調しました。
特に「親民主陣営は今年、立法院で半数以上の議席を獲得するチャンスがあり、外部勢力を利用して中央政府に譲歩を迫りながら、立法院と政府の運営を麻痺させる『死なばもろとも玉砕作戦』を唱える者もいるが、中央政府の目には、これは倒錯と『一国』の破壊と映る可能性が高い」と指摘しています。
以上のことから、北京は親民主陣営による「死なば諸共玉砕作戦」のタイミング(9月の立法院選挙)、挑戦の方法(民主派が選挙を利用して立法院の議席の半分以上を獲得)、後押しする勢力(外部勢力、特に米国が「2019年香港人権・民主主義法」を利用しての圧力)を十分に理解していることが分かります。
またこの5月にこれを推し進めようとした理由は、近因としては台湾の蔡英文就任式に、米国務長官がお祝いのメッセージを送ったこと。二つ目は、ホワイトハウスが「新たな対中国戦略報告」を出して、米・中対立が鮮明になったこと。三つ目は、中国は今年、なんとしてもトランプ大統領の再選を阻止するために、米国大統領選挙に干渉し、トランプの足を引っ張れるなら、どんなチャンスでも惜しまないことです。
中国共産党の政治論理からすると、弱者が相手を倒せない時期の「韜光養晦」策以外は、通常は先に攻撃を仕掛けます。まして今年は、注目度の高い戦狼外交を使って「勝利」を目指したぐらいです。 北京からすれば、「お前ら香港は中国の管轄下にあり、一国二制度を認めることは、お前らの面倒を見てやることになるのだ」です。つまり、「お前らが中央に逆らって、選挙を利用してゲームをつづ得るなら、もうさっさと香港で一国一制度にしてやる」と言うわけです。
★香港の「お財布」はもう過去のもの
これは中央政府が香港の「お財布」を手中に収めたいと考えている体、と考える人もいます。 中国の外貨準備高は現在逼迫しており、北京は香港の4500億ドル近い外貨準備高に目をつけていると噂されてきましたし、通貨当局の香港金融管理局は、そうした香港人の疑問に「絶対にそのようなことはない」と答えてきました。
さらに、「中国共産党の権力者の1番の秘密金庫である香港は、習近平が政権に就いてから、ずっと死闘の焦点となってきた」「習近平は権力者とその『白手袋』たちの富を逃がしたくないのだ」という説もあります。
これらは、確かに2019年の「逃亡犯条例改正案」を考える上で重要な検討事項ではありますが、今ではもう過ぎた話で、昔に戻ることはありません。
2019年6月のロイターによると、長年、香港ので活躍してきた実業家や大物たちの多くは、反「逃亡犯条例改正案」デモが始まってから、資産を海外に移すなどの予防措置をとっており、シンガポールはその新たな金庫になっているといわれます。 香港の大物が香港に残した富のほとんどは不動産だけです。
欧米諸国に住む中国本土の大物たちは多くの国々による「狐狩り」(脱税者追跡)が過去のものになったことを喜ぶべきでしょう。多くの国々は「脱中国」に向かっており、このような北京の思い通りの「狐狩り」は二度と起こらないでしょう。
★香港をネタに台湾叩きが習近平の狙いか?
台湾は民主的に選出された政府と独立した外交・軍事体制を持つ政治主体であり、半世紀にわたって独自に発展してきました。台湾と香港は全く異なる体制です。しかし、北京の目からすれば、香港と台湾は「中華人民共和国の不可分の領土」と映ります。
2019年5月以降、台湾の政治状況が(新中国政権から蔡英文政権へと)大きく変化したのは、すべて台湾での赤色浸透に反対する本体の意識の覚醒と、香港での反派遣運動の力によって起きた。習近平が香港版国家安全保障法を利用して香港での「石も玉も共に砕く」準備をしている今、台湾は当然のことながら特に心配している。
在米台湾代表部の長である趙怡翔氏はこのほど、北京当局が香港の動向を利用して、発信しているメッセージに、国際社会はに注意を払わなければならないと注意を喚起した。
趙義祥の仮説は、香港情勢と台湾の関係について、二つの可能性を示唆している。第一に、北京は、香港モデルを台湾の人々がどう受け取るかと、台湾が香港情勢にどう対処するかは関係がないと考えているのではないか、というものです。 趙氏は、これは現実を反映していないというのです。というのは、この2年間、香港と台湾で市民社会と民主化活動家の間で多くの交流があり、香港で起こったことは台湾でも起こりうるという見解を共有しているからです。
第二の前提は、より物騒な見方です。つまり、北京は、自分たちが香港に何をするかにによって、台湾の人々にどのようなメッセージを送ることになるかは、もはや気にしていないということ。この前提は台湾にとっても非常に不安です。なぜなら、そうだとすれば、事態は最悪の結果に向かって進んでいることになりましょう。
趙義祥の言う「最悪の結果」は、もちろん本土の台湾に対する武力行使です。実際、北京は現在、台湾が軍事的恫喝の下で台湾がそう感じて、軟化することを大いに期待しています。 ただ、私は、今年は中国共産党はトラブル山積みで、台湾に対して武器を使う選択肢はないでしょう。ましてや、中国共産党は、米・中の勝負は中盤に入ったばかりで、そろそろ大統領選挙の時期だから、アメリカは「選手」を変えるかもしれないと思っています。
民主党のバイデンになれば、中国には都合の良い方国向かい、台湾問題も2019年以前の状態に戻るかもしれません。待てばチャンスがあると言うのなら、中共は結果がどう転ぶかわからない冒険には出ないでしょう。
★「香港国家安全法」でトランプを困らせる作戦
北京が香港版国家安全保障法を導入したことは、事実上、一国二制度の終焉です。これに対する米国の対応は、2019年11月に署名された「香港の権利と民主主義に関する法案」に基づき、香港の特別関税領有資格を取り消すことしかできません。さもなければ、トランプ大統領の失点隣、選挙に不利になります。
実際、ワシントンは「香港版国家安全保障法」に様々な形で反応を見せました。ホワイトハウスのケイリー・マッケナニー報道官は5月26日、中国がかつてイギリスの植民地だった香港の実験を掌握した場合、香港がこれまでのような国際金融センターであり続けることは考えにくいと述べました。マッケナニー氏は、香港が金融センターとしての地位を失う可能性があるという警告は、米国のドナルド・トランプ大統領から発せられたものであり、北京版の「香港国家安全保障法」に「非常に不満を持っている」と言いました。
これは北京の計算の中にあります。香港の特殊地位が失われれば、米国企業も深刻な影響を受けますから、中国はこの一点にかけて
います。多くの米国企業が香港に投資するのは、香港の特殊な地位、地理的位置、市場経済システムがあるからです。もし、米国が香港の優遇関税待遇を取り消すならば、香港と米国の商品とサービス交易で年間670億ドルが危機に瀕します。
2019年の米国の全世界との貿易黒字において、香港は最大の261億ドルをしめます。香港工業貿易局によると、2018年の香港は米国の第三の酒類販売市場で、第四の牛肉輸出市場で、第七の貿易輸出市場です。
ですから、特殊地位の取り消しは、香港にある1300社の米国企業にとっては深刻な問題となります。こうした企業の所有者の大半は米国の大手金融会社です。2018年には8万5千人の米国人が香港に住んでいましたし、こうした企業や実業家は、絶対に香港の優遇待遇年消しを望んいません、彼らとっては、「香港国家安全法」と優遇取り消しなら、後者の方が一層大きな脅威です。
実際い、香港制裁に反対する声があがっています。オバマ政権下のホワイトハウスNSCでアジア問題担当の元シニアディレクターを務めたエバン・メデロス氏やランドール・シュライバー前国防次官補(インド太平洋安全保障担当)らは、米国の香港問題への対応は難しいとし、香港政策法に基づく香港の特別な地位を解除すれば、北京当局ではなく、香港の人々や企業、米国企業の利益を損なうことになると主張している。
野球用語で言えば、北京は「犠牲」を打ちました。 しかし、今年は選挙の年であり、中国からアメリカへの武力肺流行はすでにトランプ政権の3年間の経済パフォーマンスを台無しにしており、アメリカの失業率は14%を超えています。香港の特別関税地位の取り消しは、実業界、金融界の不満を一層募らせ、トランプ大統領の失点はさらに大きくなるでしょう。
トランプ大統領は、2019年11月27日に香港人権民主主義法に署名しています。この法案は、観察期間を1年としていますから、1年後といえば2020年の11月26日です。今年の11月6日にはすでに大統領選挙が終了しています。ですから、手続き上の理由で少し遅らせることができるのは確かです。つまり、国務院が香港の人権ウォッチング報告をホワイトハウスに提出するのは、大統領選挙後になるのです。この20日間の「時差」をどう使うかは政治的なハイテクニックですが、この点では民主党が共和党とトランプ大統領よりはるかに上でしょう。
何はともあれ、今年は北京と香港の最終決戦です。去年は、香港の民主派は米国が出した「香港民主人権法案」を利用して、北京を脅かし、「玉も石も共に砕く」のを恐れない姿勢を示しましたが、これはどちらかというと戦略的なものでした。今年は、北京が「香港国家安全法」をだしてきましたが、これこそ、本当に香港を「玉も石もともにくだく」ものであり、その結果は、まったく同日の談ではありません。(終わり)
原文は;港版国安法揽炒香港为哪般
2020年05月28日