何清漣;香港問題の由来とウィンウィンへの道は 2019年8月23日

 ほぼ一年前の何清漣氏の香港論評。自体は氏の願いもむなしく正反対になってしまいましたが、ここで指摘されている背景や問題は何も解決していないのがよくわかるので再掲。(というか、現在、同氏のサイトがハッカー攻撃によって閉鎖に追い込まれ閲覧できない状態にもあるので)

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 この文章は、8月18日の香港民主化デモ(訳注;主催者発表で170万人が、警察の許可の無いまま、平和的に行進)が行われる前に書いたのですが、きっと皆さんから攻撃されるでしょう。私も好んでこういうことを言いたいわけではないのですが、どうか賢明な読者諸氏にお願いしたいのは読み終えてから考えて欲しいのです。香港人が何カ月も汗と、そして血まで流して街頭デモを続けたのですから、収穫が何かあるべきで、それも双方の戦いの最良の結果があるに越したことはないのです。


★香港が落ち目になり「4匹の龍」の地位を失った始まり

 香港の「反送中」運動(2019年「逃亡犯条例改正案」の反対運動)は、法案廃止を目指したものですが、とてもそれにとどまりません。それは香港人の積年の喪失感と苦悩、オキュパイ・セントラル(中環を選挙せよ」運動の挫折の経験を合わせた”一大爆発”です。

 1980年代の香港経済がテイクオフして繁栄したのを見たことのある人しか、香港人の苦悩と痛みがどこから来たかを理解できないでしょう。「4匹の龍」は、かつては世界中が感嘆したアジアの神話でしたし、改革開放がようやく始まったばかりの中国から見たら、香港、台湾、韓国、シンガポールは、まさに現代の豊かさの象徴そのものであり、中国が学ぶお手本でした。

 しかし、グローバル資本が、1990年から中国に移転し始め、世界500強の企業が、次々に中国大陸に拠点を設けるに従って、「4匹の龍」、とりわけ香港の地位は日増しに衰えていきました。原因は単純で、香港の繁栄は、中国の毛沢東時代の鎖国政策によるものだったからです。当時中国は、香港を外部世界との懸け橋として、貿易の中継地点とし、外部情報の交換所にしていたのです。

 ですから、2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に正式加盟した後は、金融方面と、その他のちょっとした代替えのきかない機能以外は、香港の重要性はどんどん失われました。今の香港の青年の世代は、大部分がミレニアル世代(2000年前後生まれ)です。2001年と1997年(香港返還;1997年7月1日)の差は、たった4年ですが、すべての論評は1997年が香港の没落が始まった時点だとしています。

 客観的に言えば、「4匹の龍」の繁栄を喪失したのは香港だけではありません。皆、経済が下向きになり、就職が難しくなりました。ただ政治方面での問題は、それぞれ国によって異なります。台湾は中国大陸からの浸透と統一の圧力。香港では、青年は失業率と社会的に上昇する道が閉ざされ、家賃が高騰するなどあらゆる内部からと外部からの圧力のすべてが、最後には北京(大陸)への恨みとなりました。韓国は、完全に経済的なもので、韓国青年たちは出口を探し当てられず、反政府運動が唯一のはけ口となりました。

 ★青年の失業現象は全世界的

 香港メディアの言論空間は狭められ、報道の自由は日増しに失われていますが、これは北京と香港の大資本が共謀した結果です。(これは「紅色浸透 — 世界に広がる中国メディアの真相」(邦訳;中国の大プロパガンダ――恐るべき「大外宣」の実態 扶桑社BOOKS)という本に書きました。香港の法治は蝕まれているのは、北京と保守派の共謀した結果なのです。

 ただ一つだけ、香港の昔からの問題は、香港の家賃はずっと高値のままで、現在の香港の住居費は世界第2位だという点。香港に居を構えるのは大変困難で、中産階級が一生かかってもアパート一つ手に入れるのは難しく、「鉄の網の中の住人」(籠民=アパートを更に鉄の網で仕切った牢屋のような蚕棚ベッドの空間に住む人々)は20万人にもなります。

 世界に目を向けると、少なからぬ国家の政府は、失業率の高さや社会上昇ルートの閉塞などの社会問題で、自国の青年たちを苦しめており、人口が急増している地域の発展途上国は特にひどい状態です。

 しかし、具体的な原因は、各国政府の政治体制の違いで、国によって大変違いがあります。これが各国の青年たちの抗議する方向が全く違う理由です。中東や北アフリカの青年たちは、「アラブの春」を起こしましたが、その結果は「春が炎の中で燃え尽きた」(ニューヨーク・タイムズ紙の記者ロバート・F・ワースの「秩序への怒り:混乱の中の中東、タハリール広場からISISまで」(Amazon. 2016.)が描いたように、革命前よりもっと悲惨なことになってしまいました。欧米の青年たちは、ですから、資本主義を否定し、社会主義に向かいました。

 ただ、抗議の方向は極めて大きな違いがあって、欧州は、既に最高レベルの福祉社会であり民主社会主義でしたから、反対運動は方向を失い、憂さ晴らし的な街頭騒乱となりました。典型的なものがフランスの「黄色いベスト運動」です。2018年11月から続いているこの運動の抗議活動に、マクロン仏大統領は、2019年の新年の演説で、「仕事を少なくして、多くの金をよこせ、減税をやって支出を増やせというのは無理だし、自分たちの生活習慣を変えようとしないで、もっと奇麗な空気を吸わせろというのも無理だ」と言いました。

 これまでずっと社会主義を拒否し、西側では「例外」と言われてきた米国でも、青年たちの中では、現在、半数近くが社会主義を認めています。彼らは学費ローンと就職のプレッシャーで、米国民主党の固い支持層となり、現在、20数人の民主党大統領選候補者の何人かは、この社会主義を認める人々によって、その支持を獲得してホワイトハウスを目指しています。

 ★香港青年の失業と生活の苦境のうちの大陸的な要素

 香港の問題の原因は、香港人は外部の人々よりはっきり分かっています。香港の「反送中」抗議の期間に、多維ニュースネット(訳注;ニューヨークに本拠を置く世界最大の中国対外宣伝サイト)が多くの親北京派メンバーを取材しましたが、彼らは香港の青年世代の恨みつらみの原因をはっきりと理解しています。デモと2019年「逃亡犯条例改正案」の反対運動だけでは、なぜこんなに大規模な騒ぎになったのか、説明できないという点で一致していました。というのは、その背後には、もっと大きなテーマ、つまり「反中」と「反特区政府」が存在したからです。

 香港青年時事評論員協会の陳志剛副会長は、多維ネットの取材に対して、二つの総括をしています。

 一つは、中国大陸からの続々と香港にやってくる移民の問題。毎日、100人以上が家族呼び寄せでやってくるのです。これを香港人から見ると、こうした人々が自分たちの「資源」を奪いにくると映ります。香港人の暮らしに影響し、仕事先を奪うものだと見えるのです。
二つには、香港人は、中国大陸の価値観やイデオロギーを受け付けません。遅れた、無教養な、みっともないものだと思っています。

 そして多くの人々が、昔ながらの問題を指摘しています。不動産が高すぎて、香港人が一生頑張っても小さなマンションすら買えないことです。ネット上では、香港の劣悪な、”蚕棚ハウス”や”棺桶ハウス”、籠の鳥住居が山ほど写真があり、見ると絶望感に陥ります。香港の政治的な前途がどうあろうと、こうした不動産市場は、深刻な社会問題を生む源泉です。

 ★普通選挙が全ての問題を解決するわけではない

 香港社会の政治行政水準は、英国統治時代にはかなりの水準でしたし、各種の人材も完全に、高度な自治を行う力があります。青年の失業率の高止まりや家賃のべらぼうなこと、劣悪な居住環境といった香港の問題は、大陸だって実は同じなんです。私は香港と地続きの深圳市に長年暮らして、大陸の土地財政や不動産開発のやり方は、基本的に香港のコピーだったということはよく知っています。北京などの大都市の「蟻族」と香港の「籠民」はそっくりで、ちょっとましなだけです。北京は自国の不動産の高騰した価格や失業問題を解決できませんし、「蟻族」の問題もそうです。ですから、当然、こうした香港の積年の問題を解決する力はありません。

 香港人の強烈な抗議に対して、北京が高圧的な政策を取れば、ただ香港人の恨みつらみと、反対行動への意志を一層強めるだけです。中国には、「手を緩める時に緩め、堪忍する時にはする」(该放手时须放手,得饶人处且饶人)という言葉がありますが、これが北京にとって一番ぴったりでしょう。

 北京は、もっと前に、香港人がずっと要求してきた普通選挙実施を許すべきでした。だから、香港社会の全ての恨みつらみが皆、香港と北京の関係の上に集中したのです。国家の長期的利益という点からだけ見ても、ウィンウィンの選択は、香港に普通選挙と自治を許すことです。

 普通選挙が香港社会の全ての問題を解決できるかといえば、誰もそんな保証はできません。しかし、香港人が今より広い自由空間を手に入れたなら、香港の政治システムや社会政策をどう作っていくか選択することができますし、当然、自治とは自分たちの責任だということも分かります。

 こうした責任を自覚した香港人が香港を治めるモデルは、中央政府から見れば、今までのように易々と香港をコントロールすることはできなくなりますが、少なくとも香港と大陸の被る損害は最小に食い止めることができ、自分たちが香港社会の恨みつらみの標的になったり、世界から批判される対象になることからも免れます。(終わり)

 原文は;香港问题的由来及双赢之道


香港问题的由来及双赢之道
2019-08-23
这篇文章如果写在8·18香港和平大游行之前,必将成为众矢之的。即使是现在,我也不指望不被拍板砖,但请自尊自爱的读者看完之后,冷静想想其中道理。毕竟,香港人持续几个月且流了无数汗水与一些鲜血的街头运动,应该收获一些有利于双方的果实——双方斗争的最好结果莫过于此。

香港的失落由丧失四小龙地位开始

香港的反送中运动,直接针对送中法案,但又远不止于此。它是香港人积聚多年的失落与苦恼,历经占中运动的挫败后的一次总爆发。

亲眼目睹过80年代香港经济起飞之繁荣的人,才会理解香港人的烦恼与痛苦从何而来。四小龙曾经是全世界惊叹的东亚神话,在刚刚启动改革开放的中国看来,香港、台湾、南韩、新加坡就是富裕与现代化的象征,中国学习的经济样板。随着全球资本1990年代转移至中国,500强纷纷来中国安营扎寨,四小龙地位日渐衰落,其中以香港为最。原因也很简单:香港的繁荣获益于中国毛时代的闭关锁国政策。当时,中国需要以香港做为对外沟通的桥梁、转口贸易的中转地,甚至是外部信息的交换站。2001年中国正式加入WTO之后,香港除了金融方面尚有不可替代的作用之外,其它方面的重要性日渐丧失。如今的香港青年一代大都出生于千禧之际,由于2001年与1997年其间只相差四年,在所有评论中,97回归就成为香港衰落的时间始点。

客观地说,并非只有香港丧失了四小龙的荣耀。在1980-1990年代曾享誉一时的四小龙都有麻烦,共同特点是经济下滑,就业艰难;政治方面的麻烦则各不相同:台湾面临大陆红色渗透与统一的压力;香港的青年高失业率与上升通道逼窄、房价过高等所有的内生与外部压力,最后都转化为港人对北京(内地)的怨恨;韩国的压力则完全来自经济,处境艰困的韩国青年找不到出气口,反对政府成了唯一的泄洪口。

青年失业现象是全球普遍现象

香港媒体的言论空间被挤压,新闻自由日渐丧失,是北京与香港大资本共谋办媒体的结果(我在《红色渗透:中国媒体全球扩张的真相》一书有专章论述此问题);香港法治受到侵蚀,则是北京与建制派共谋的结果。只有一件事情是香港的老问题:香港的房价一直居高不下,现阶段香港的房价居世界第二。香港居,大不易,中产辛苦奋斗一生也难求一套住房,“笼民”的数量高达20万。

放眼世界,不少国家的政府都因青年失业率高与社会上升管道梗阻等社会问题,失去了本国的青年一代,人口高增长地区的发展中国家尤甚。但失去的具体原因则因各国政治体制不同而有很大差别,这就造成各国青年一代的抗议方向完全不一致。中东北非国家的青年因此发动了“阿拉伯之春”,结果是“烈焰焚春”(《纽约时报》记者罗伯特·沃斯一本战地采访文集,原名是《烈焰焚春:从埃及革命到伊斯兰国 - 阿拉伯之春后的中东如何坠入人间炼狱》,A Rage for Order: The Middle East in Turmoil, from Tahrir Square to ISIS),各国陷入了比革命前更糟糕悲惨的境地;欧美青年因此否定资本主义,向往社会主义,但抗议方向却有极大差别:欧洲因为已经是高福利的民主社会主义,反对运动失去了方向,成了渲泄式的街头闹腾,典型样本就是法国的“黄背心运动”。面对持续已久的"黄背心"抗议活动,法国总统马克龙在2019年的新年献辞中警告法国人注意现实:"我们不能只要求少工作,却多挣钱;多减税,却增加开支;不想改变我们的生活习惯,却想呼吸更纯净的空气。”在一向拒绝社会主义、被称为“例外”的美国,青年一代当中现在有将近一半人认同社会主义,他们因为学贷与就业压力而成为美国民主党的坚定支持者,美国现有的20多位总统提名候选人此刻将宝全部押在这批认同社会主义的人士身上,希望依靠他们支持,问鼎白宫。

香港青年失业及生活困境的中国内地因素

香港的问题之由来,香港人其实远比外部人清楚。在今年香港反送中抗议期间,多维新闻网采访了不少建制派成员,他们对香港青年一代的怨气形成之由来非常了解,几乎一致认为如果只将“反送中”游行示威与反修例联系起来,肯定解释不了为什么能弄出这么大的规模,因为它背后有个更大的主题,就是“反中”跟“反特区政府”。

香港政协青年联会常务副主席陈志豪在接受多维采访时,总结了两条:一是内地不断向香港移民,每天大概有100多个内地人因为家庭团聚的原因移民到香港。从香港人的角度看,这些人就是来跟他们争夺资源的,必然会影响到香港人生活,会增加香港住房的压力;二是香港人无法接受内地意识形态与价值观,认为比较落后、不文明,难看。还有多位受访者谈到同一个老问题:房价太高,香港人终生辛劳工作,难求一套小户型住房。网络上关于香港劏房、棺材房、笼屋现象的视频很多,让人看了绝望。不管香港政治前途如何,这种房地产市场都是产生严重社会问题的重要根源。

普选不能解决所有问题 但却从根子上舒解香港怨恨

香港的社会治理水平在港英时期臻于较高水平,各种人才储备也丰富,完全有能力达成高度自治。香港目前的所有问题,例如青年失业率高、房价奇高、笼屋等不人道住房现象,大陆其实也一样。我在深圳生活过多年,深知大陆的土地财政及房地产开发方式基本上以香港为摹本。北京等大城市的“蚁族”与香港的“笼民”处境相若,略好一点。北京解决不了本国的高房价、高失业问题,也无法改善蚁族的居住空间,当然也没有能力解决香港这些积年问题。

面对香港人的强烈抗议,北京的高压政策只会激发香港人更深的怨恨与反抗意愿。中国有句老话,用在此时北京处理香港问题时最合适:该放手时须放手,得饶人处且饶人。北京早就应该做而一直不肯做的是让香港实施港人一直要求的双普选,也因此让香港所有的社会怨恨都集中于香港与北京及内地的关系之上。即使仅从国家的长远利益考虑,双赢的选择也是放手让香港普选自治。

普选是否能够解决香港所有的社会问题?没人能够这样保证。但是,香港人有了更多的自主空间、设计选择本港的政治形态与社会政策,他们当然也明白自治的要义就是自我负责。这种自我负责的港人治港自治模式于中央政府而言,虽然不再能事事高度操控香港,但至少可以最大限度止损,香港还是中国领土,但却避免让自己成为香港社会怨恨的目标,进而成为全世界谴责的对象。


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