リュック置く間もなく「飲めよ!」と煽られる年下だろ てか初対面だろ
親愛なるオペレーターへ
オペレーターというお酒があります。
白ワインをジンジャエールをで割ったカクテルです。
この前、飲み会の席で久しぶりにオペレーターを飲みました。
僕にはオペレーターを飲むと蘇る、苦い記憶があります。
十年くらい前のこと。
僕は合コンに参加しました。
少し遅れて居酒屋に到着すると、男友達二人と初対面の女の子三人が盛り上がって飲んでいます。
女の子の一人が、僕が席に着くやいなや、僕にグラスを手渡し言います。
「飲めよ!」
当時の僕は三十代前半、その子は二十代中盤くらいに見えました。
いきなりタメ口ですか?そもそも初対面ですよね?それでタメ口ですか?
ん?とは思いましが、盛り上がっている場の空気は壊したくないし、なによりその子の風貌も口調もイケイケで、言い返すことなどできなかった僕は、お酒をグッと飲みました。
場は盛り上がります。
飲んだことない味だったので「なんていうお酒?」と僕が聞くと、彼女は「オペレーターだよ。知らないのー。ウケるー」と言います。
場は更に盛り上がります。
僕は盛り上がるならなんだっていいやと思いながら、勧められたお酒を飲み、タメ口で話してくる彼女たちと敬語で話しました。
一時間半くらい経った頃でしょうか。
女性たちが全員でトイレに行き、十分経っても十五分経っても戻ってきません。
友達がトイレを見に行きましたが、そこには女性の姿はなく、連絡を取ってみても返事はないということです。
盛り上がっていたと思っていたのは僕らだけだったのでしょうか?
彼女たちは、楽しくなくて示し合わせて帰ったのでしょうか?
もしくは、はじめからそのつもりだったのでしょうか?
僕達は、一人ずつが二人分の料金を支払い、店を出ました。
あれから十年。
オペレーターを飲むと必ず蘇る、甘くない苦い記憶です。