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アルケミストという私のバイブル【エッセイ】
中心地から北に向かう電車に揺られながら流れる景色を見過ごす。今日は驚くほど心地よい青空だ。どこまでも穏やかな空、どこまでも穏やかな空気。嫌でも優しくなれる。思わず微笑まずにはいられない。まるで世界が私の誕生日を祝ってくれているみたいだ。そんなことを思いながら読もうと決めていた本を開く。この本を読むのはこれで4度目だ。
私がこの本に出会ったのは2020年。とある人に「この本は旅をする人に刺さる本だそうです。Ryoさんは旅人ではないけれど、なんとなく刺さると思って。」 と勧めてもらった本だ。あまり小説を読まない私だけど、せっかくならと思いすぐ本屋に行ってその本を買った。特に期待もせず読み始めて、はじめの方は単調に感じられた物語だったが、気づいたときにはその世界に魅了されていた。この後どうなるのだろうかとページをめくらずにはいられなかった。こんなにもワクワクした本はいつぶりだろう? 結局一気に読み勧めてしまって、そして感動の波が何日にもわたってずっと波紋状に心に広がり続けるのを感じた。
そしてこの本は私にとって”バイブル” になった。
なんとなくいつもこの本を読んだほうがいいタイミングがわかる。今回は誕生日という節目だった。おそらく初めての海外生活、その中で得たものが多い今、歳を重ねるタイミングで改めてこの本を読んだら別の角度から得られるものがあるのではないか? と無意識のうちに感じていたのだと思う。さらにどんな気持ちになるのだろう? という期待もあった。
本の内容は変わっていないはずなのに、毎回読むたびに新たな発見をくれる本。世界が一気にわっと広がってどうしようもない気持ちになる。なぜいつも”今” の私に一番必要な言葉や気付きをこの本はくれるのだろう? そして、揺らぐことのない大切なことも。
終点の駅に着いた。また穏やかな空気が私を包む。新しい年齢の私が始まった。これからどんな物語を紡ぐのか。私にとってはアルケミストよりも偉大な物語。楽しみである。