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間接言語行為とスカイリム
スカイリムの衛兵が放つセリフ
「かつてはお前のような冒険者だったんだがな。膝に矢を受けてしまって・・・。」
このセリフは、「膝に矢を受けた」というセリフから「ひどい怪我をして、冒険者を引退してしまった。怪我がひどいので、今はこうして衛兵をやっている。」という「裏の意味」を推測させる発話行為です。
こうした、「文字通りの解釈から、行間を読ませて、裏の意味を推測させる」ことを、言語学、英語学の専門用語で「間接言語行為(Indirect Speech Acts)」といいます。
間接言語行為とは!!!!!
相手に行間を読ませて、それとなく裏の意味を伝えること!!!
以下、具体的に解説。
表の意味(文字通りの意味)を「表」
裏の意味を「裏」
とします。
「かつてはお前のような冒険者だったんだがな。
膝に矢を受けてしまって・・・。」
「表」= 自分も、以前はあなたのような冒険者だった。だが、膝に矢を受けてしまった。
文字通りに解釈すると、「膝に矢を受けてしまった」という事実だけしか理解できません。
「文字通り」の意味だけだと、「ひどい怪我をして、冒険者を引退してしまった。」までは行き着きません。
では、どうやって
「裏」= ひどい怪我をして、冒険者を引退してしまった。怪我がひどいので、今はこうして衛兵をやっている。
「冒険者を引退してしまった」
という情報まで受けとることができるのか。
それは、我々の脳が無意識のうちに推論してるから。
脳が受け取った「文字通りの情報」、これだけでは相手の発言の内容がわからない。だから一瞬でいろいろ考えて、文脈にそった意味を受けとるのです。
人間の脳ってすごくないですか?
行ってる推論の過程を書き出すと、こんなかんじ。
1 この人は冒険者だった。でも膝に矢を受けたらしい。
2 膝に矢を受けて、このひとは今衛兵をしている。
3 膝に矢を受けたという事実と、今衛兵をしているという事実
この2つの事実の関連はなんだろう?
4 膝に矢を受けると、脚にひどい怪我をする。
5 ひどい怪我をするということは、歩くのが難しくなる。
6 歩くのが難しいとなると、冒険者を続けるのは厳しい。
7 6より、この人は体をあまり酷使しない「衛兵」という職業を選び、今に至る。
ちなみに、こうした推論の過程は立派な研究対象になってます。
文法学者グライスさんが、以上のような推論をするときの条件を設定して、ルールを作ったりもしてます。自分も、「英語学」の課題でこの「間接言語行為」について色々まとめたりしましたが、やはり面白い。人間の脳のすばらしさを改めて感じます。複雑な情報を一瞬で理解できる能力!!これをお祝いしたいくらいです!!!
身近な間接言語行為の例
直接いうときつすぎるときに、遠回しにそれを伝える。
間接言語行為は、社交のために必須なスキルです。
他の例を持ち出して、その例から暗になにかを伝えたり(暗喩)
「黒板汚いね」から暗に「黒板ふけ」と伝えたり
など、枚挙にいとまがないです。
日常生活のなかでも無意識に使ってます。
「もう◯◯時だよ!!」といわれたら「急がんと遅刻するぜ!!」になり
「Do you have the time?」が「時間もってる?」じゃなく「今何時ですか?」という意味になるなど。(これはお決まりの言い方になってる、というのもあるかもしれないけど)
今回スカイリムの衛兵を例に出したのは、「間接言語行為を説明するのに格好の例だ!!」と思ったからです。バイト中にとっさにひらめきました。ひらめき万歳。
美川
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