『蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠』-憧れの先輩-
昨年10月にオープンしたばかりの虎ノ門ヒルズステーションタワー。その高層階に位置する「TOKYO NODE」では、写真家であり映画監督である蜷川実花さんの展覧会が行われていました。
はじめに
今回このイベントへ行くことになったきっかけとして、蜷川実花さんは、私が通っている高校の卒業生ということがあります。また私の好きなアイドルのカレンダー撮影を担当されたことがあり、私自身彼女の世界観が好きだということもあって、展覧会を行うと知り、友達と2人で行くことにしました。
ビル45階、地上から200m超の高さにあるこのギャラリーの総面積はおよそ1,500㎡です。蜷川実花さんにとって、過去最大規模の体験型展覧会ということでとても楽しみです。
展示は11作品に分かれており、全てこの展覧会のために新たに制作され、CGはほとんど用いていないということです。
ここでは特にお気に入りの5作品をレポートしていきます。
さっそくいってみましょう!
いざ入場
虎ノ門ヒルズ駅内にも広告があり、建物内もポスターやラッピングが施せられ、平日にも関わらず多くの人が訪れていました。
入り口付近にはコインロッカーが設置されており、多くの人が利用しているようでした。私たちも上着や荷物を預け、身軽になったところでいざ入場します。
受付を行うと、入場特典のステッカーをいただきました!
カーテンの先を進んでいくと、何も見えない真っ暗の空間に。
いよいよここからスタート。
1.残照 Afterglow of lives
暗闇の中進んでいった先には、花に囲まれた薄明かりの空間が広がっています。上から垂れ下がるように花々があり、足元にも植物や花がありました。
光が当たり生き生きと咲いている華やかな花、陰でひっそりと枯れていく儚い花。どちらにも美しさを感じられます。
これは生と死、繁栄と衰退、明と暗というのを私たちの人生に重ね合わせて表現されています。
華やかに咲いていることが幸せのようにも思えますが、一方で光の当たらない場所で静かに枯れていく姿は儚く美しいです。どちらの姿にも美しさがあり、私たちの人生と同じものを感じます。
力のあるうちに華やかに咲き、だんだんと脆くなったとしても、そこで抗うことはせず、美しく枯れていきたいと感じさせられました。
2.Unchained in Chains
ここではいくつもの水槽が置かれ、ネオンライトの明かりで暖かい雰囲気を感じる空間になっています。水槽には本物こそいないものの、映像パネルなのか、投影しているのか、金魚や都会の街並みが映されていました。この展示方法はとても興味深く、仕組みが知りたいと思いました。
金魚は蜷川さんの代表的なモチーフの一つです。
小さな水槽にいる見せ物としての金魚、あるいは大きな水槽で一匹一匹大切に育てられている金魚、これらの姿を人間社会と重ね合わせているといいます。現代社会という巨大なシステムは、ある種の水槽であり、そこでどんなつながりを持ち、どう生きるのか、問いかけるものになっています。
水槽にいることで守られる部分と、どこか息苦しい部分があると感じ、とても考えさせられる作品でした。
3.Breathing of Lives
ここでは大きなスクリーンに映像が映し出されています。スクリーンは立体になっており、いくつかの映像が重なっているように見えました。肉眼で見ると、重なるように編集された映像というより、それぞれの映像がそれぞれ別の面に映し出され、重なるように見せているように思えました。横からも見てみましたが、仕組みを理解することはできませんでした。
映像には、高所から見る夜の都市や、電車の窓から見える街並み、車のライトやビルの室内の灯りが映されていました。
これらの先には人々の動きがあり、つながりがあるといいます。都市の景色や感情から、いのちの息づかいを感じることができる作品になっています。
水滴や水たまり、霧や川の流れなどの都市の水は、それらの光を映し込み、波のように動く光も重なって、さらに息づかいを強くさせます。
ビルは小さく見え、夜でも明るく、それは多忙さを感じさせるものでした。日常の中に、人々のつながりがあり、目まぐるしい日々を生きる現代人を想像させます。
4.Flashing before our eyes
広々としたこのドーム型の空間には、天井から覆いかぶさるようにスクリーンがあり、映像が流れています。クッションに寝転がり、見上げるように鑑賞する没入型のブースになっていました。立体音響と思われるスピーカーから音楽も流れ、さらに引き込まれていきます。
金魚や夜の都市、空、花、火、水などが、様々なライトや光の筋と重なり、目まぐるしくシーンが変わっていきます。
様々な音と混ざり合わさり、緊張を誘って呼吸を荒くさせたり、ぱっと解放して静寂に包み込んだり、不思議な空間で、走馬灯を感じさせるものでした。
5.Intersecting Future 蝶の舞う景色
この展覧会のメインともいえる、一番華やかな作品です。可愛らしい入り口から広がるのは溢れだしそうなほどに敷き詰められた花々です。通路となる床にも花が写されており、まさに360度お花に囲まれていました。
色とりどりの花々で溢れるこの空間には、蝶も存在します。この作品のテーマにもある蝶というのは、人間が存在し人間の営みによって環境が整ってこそ現れ、また未来や可能性に思いをはせるとき、そっと寄り添うように羽ばたくのが蝶であるといいます。
花や蝶というのは現在と未来を結び、人間社会と自然の共存におけるパートナーといえるのです。
この作品は映画のセットに用いられる技術を活用して表現されているそうです。植物や蝶に加えて、霧などもあり、幻想的な空間になっていました。
華やかで、現実にありそうでない、未来の姿のようなこの空間こそが桃源郷ということだと思いました。
最後に
今回、同じ高校の卒業生というご縁のある方の展覧会に行ってきました。
写真・映像の美しさだけでなく、それをどう展示するか、どう魅せるかという創造力に圧倒され、学ぶものが多くあったと実感しています。
ただ見るといっても、座ったり、寝転がって見上げたり、新しい感覚で作品に触れることができ、驚きと共に感動しました。蜷川さんの世界観に没入できる有意義な時間でした。
まだ初心者ですが、私はカメラが好きなので、この展覧会に来たことで、より美しい写真や映像を撮れるようになりたいと強く思いました。蜷川実花さんの「魅せ方」を参考に今後の制作活動に繋げていきたいと思います。彼女こそ、私の憧れの先輩です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。この展覧会、気になっていただけたでしょうか。
今回の展覧会は2月25日で終了となりますが、気になった方はぜひまた別の機会で、彼女の世界観を味わってみてはいかがでしょうか。
華やかでありながらも、無心になって、心を和らげられる。そして自然の中で人間社会と向き合える、そんな空間が広がっています。
ぜひ訪れてみてください。