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オタ活まとめ:2020年春クール

雑感

春はとにかく「遊☆戯☆王」シリーズと「仮面ライダー」シリーズばっかり見ていました。とてもいい年した大人のやることとは思えないですが、少年の心を失わないって大事なことだと思うのでいいかな…と。
アニメも漫画も、もっと色々見たり読んだりしていたのですが、春クールは途中で飽きたりなんだりで最後まで追えてない作品がかなり多いですね。
夏は映画をいっぱい見たい気持ちです。エンリオ・モリコーネの訃報以来「ニュー・シネマ・パラダイス」のサントラを聴きまくっていたら、名画座に足を運びたくなりました。今は厳しい状況ですが…。

アニメ(遊☆戯☆王5D's遊☆戯☆王攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX攻殻機動隊S.A.C 2nd GIGハイスコアガール・ハイスコアガールⅡ,げんしけん二代目,プリンセスコネクト!Re:Dive,かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~)

遊☆戯☆王5D's(ダークシグナー編まで)
原作:高橋和希・スタジオ・ダイス/週刊少年ジャンプ,制作:ぎゃろっぷ,監督:小野勝巳,シリーズ構成:吉田伸,キャラクターデザイン:丸山修二
テレビ東京系のアニメ「遊☆戯☆王」シリーズ3作目。2008年から2011年まで放送されていました。実は「遊☆戯☆王」に関してはズブの素人だったのですが、友人2人が有識者だったので、彼らにいろいろ解説してもらいながら見進めました。
この作品の舞台はネオ童実野シティと呼ばれ、“シティ”と“サテライト”という2つのエリアに分かれた未来都市です。主人公の不動遊星はサテライトの住民。物語は、かつて彼とその仲間を裏切ったジャック・アトラスという男が王者として君臨するデュエルスタジアムを目指して、遊星がシティに向かうところから始まります。ダークシグナー編は遊星やジャックが持つ腕の痣にまつわる因縁を描いたストーリーで、遊星たちシグナ―と、その宿命の敵であるダークシグナーのデュエルが繰り広げられました。
ダークシグナー編のいいところはキャラクター1人1人が魅力的なところ、熱い展開がてんこ盛りなところ、ダークな要素があるところでしょうか。好きなキャラクターはジャックとカーリーで、2人が互いに惹かれ合いながらも運命に翻弄されて敵対することになる展開は燃えました。それから最終決戦を描いた数話が映画のような盛り上がりで、最後まで面白かった。
あとこれは「遊☆戯☆王」シリーズあるあるなのだと思いますが、話のテーマとデュエル内容やカードの名前・効果がしっかり重なっているのもよかったです。続きも見ていきたいですね。

遊☆戯☆王(デュエリストキングダム編まで)
原作:
高橋和希・スタジオ・ダイス/週刊少年ジャンプ,制作:ぎゃろっぷ,監督杉島邦久,シリーズ構成:武上純希,キャラクターデザイン:荒木伸吾・姫野美智
2000年から2004年まで放送されていた、テレビ東京系のアニメ「遊☆戯☆王」シリーズ1作目。「5D's」で味をしめたので、とりあえず原点に立ち返ろうということで有識者2人に付き合ってもらい、いま見進めているところです。春クールではデュエリストキングダム編まで見ました。
なんというか「5D's」のしっかりしたデュエルを見てからこっちを見ると初期特有のガバガバさにびっくりするのですが、子供のころから名前と見た目と声だけはよく知っているキャラクターが出てきて楽しかったです。とくにツダケン演じる海馬が本当にカッコいい。セリフ回しもいちいち気が利いていて危うく夢女子になるところでした。あと個人的には舞さんが名言しか言わないので最高ですね。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX
原作:士郎正宗,制作:Production IG,監督・シリーズ構成:神山健治,
 キャラクターデザイン:下村一
多くの人が機械の脳である“電脳”を持つ近未来の日本を舞台に、サイバーテロなどの犯罪に立ち向かう攻殻機動隊こと公安9課の活躍を描いたTVアニメシリーズ第1期。全26話構成で、単話完結のStand Aloneエピソードと続きもののComplexエピソードから成ります。Complexエピソードでは、電脳硬化症という難病のワクチンにまつわる不正と、その不正を暴こうとする天才的なハッカー・笑い男、そして彼を追う公安9課の物語が展開されました。
実はこの作品、過去に3回ほど見たことがあるのですが、何回見てもComplexエピソードの流れが覚えられない。まとめてしまえば上で概説したような話なのですが、細部を追おうとすると難しいんですよね。なので今回もいろいろと「あーこういう話だったな」と思い出しながら見ていました。
この作品の最大の魅力の1つは、やっぱり笑い男というキャラクターなのかなという。笑い男のロゴ、中性的な風貌、ナイーブで知的な雰囲気、「ライ麦畑でつかまえて」の愛読者であること、電子戦を得意とする9課をも凌ぐハッキング能力など、心をくすぐる設定がてんこ盛りで。ストーリー全体を振り返ると大して活躍していない気もするのですが、存在感がとにかくすごい。

攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG
原作:士郎正宗,制作:Production IG,監督・シリーズ構成:神山健治,キャラクターデザイン:後藤隆幸・西尾鉄也・下村一
「攻殻機動隊Stand Alone Complex」の第2期。テロリスト“個別の十一人”による大使館立てこもり事件をきっかけに、第三次世界大戦の名残である難民居住区(通称“出島”)を巡る事件が起こります。
今回このシリーズを見直して再確認したのは、第1期より第2期のほうが好きだなということでした。その理由を昔見たときは「第2期の方が社会派だから」「音楽がいいから」だと思っていたのですが、なんかどうも違うなと。そうではなく、この作品の一番の魅力は合田やクゼをはじめとした男性キャラクターの「キモさ」にあるんじゃないかという気がしました。
そのキモさというのは英雄に憧れる男のキモさです。あるいはそれを童貞臭いとか、ナルシストっぽいとか、自意識こじらせとか言い換えてもいいのかもしれませんが、そういう、ある種の男特有のキモさみたいなものが、この2人を通してよく描かれている気がして。この第2期のストーリーは三島由紀夫の思想だかなんだかを参考にしているらしいのですが、三島愛読者的には、それがこういうキャラクターたちのキモさにすごい如実に表れているなと思いました。「仮面の告白」とか「金閣寺」とか本人のエッセイとか読むとほんとにこういうキモさを感じるんですよね…。そういう要素を備えたキャラクターってほかの作品にはなかなかいないので、いいなあと。

ハイスコアガール
ハイスコアガールⅡ

原作: 押切蓮介,制作:J.C.STAFF,監督: 山川吉樹,シリーズ構成: 浦畑達彦,キャラクターデザイン: 桑波田満(SMDE)

第1期は2018年、第2期は2019年に放送。Netflixに加入したら配信されていたので見ました。舞台は1990年代の溝口です。格ゲーを題材に、ゲームしか取り柄のないハルオという少年と、めっぽう強いゲーマーのお嬢様・大野、そしてハルオが中学生のときに出会う日高という女の子の関係を描いたラブコメ。
格ゲーというちょっとマニアックな題材、クセのある絵柄、3DCGと、なにかとハードルの高い要素が揃った作品ですが、いざ見てみるとストーリーは王道で、格ゲーや当時の空気感がまるでわからない僕でも楽しめました。大野も日高もヒロインとしてすごく魅力的で、ハルオとくっついてほしいのは大野だけど、報われてほしいのは日高みたいな葛藤に襲われてしまい、ずっと2人に感情移入しては泣いたり悶えたりしていた(キモい…)。
キャラデザで「これはちょっと可愛くないかな」とか思ってる人は今すぐ見て認識を改めてほしいです。この絵じゃなきゃ満足できない体になりますよ。
あと、この作品はハルオの小学生時代~高校生時代までを描いているのですが、年を取るにつれて彼と大野の関係が変わっていくところに深く共感できるんですよね。子供のころは一緒に楽しく遊んでいるのですが、成長するにつれ、頭の出来も違うし、生まれた家柄も違うしで、なんとなく社会的な階級差ができてくるというか、住む世界が違ってくる。もちろん二人は心でつながってはいるのですが、そういう差ができてくるところが少し切ない。中学、高校と進むにつれ、友人や同級生との間にそういう区切りのようなものができていくことにほのかな寂しさを感じていた人間だったので、感じ入るところがありました。
それとsora tob sakanaのオープニングとやくしまるえつこのエンディングが最ッ高です。
恋に待ちガイルなんてないと思うぜ…。

げんしけん二代目
原作:木尾士目,監督:水島努,シリーズ構成:横手美智子,キャラクターデザイン:谷口淳一郎

過去に3回くらい見てるので、今回で4度目の視聴。水島努・横手美智子コンビがまた名作を生み出してしまった…って感じのアニメです。原作漫画は椎応大学のサークル・げんしけんこと現代視覚文化研究会に所属するオタクたちのオタ活やら人間関係やらを描いた「げんしけん」という作品の続編。「げんしけん」ではサークルにほぼ男オタしかいなかったのですが、「二代目」の方では代替わりして、部員はほぼ女オタ(その大半が腐女子)です。
なんでこんなにこの作品見返してるんだろうなーと考えると、やっぱり波戸くんという男の娘が好きだからかなと思います。見た目も声もすごく可愛いし、彼が女性キャラクターじゃないというところもいいんですよね。僕は別に男の娘が好きというわけではなく、ほかに可愛いなと思う男性キャラはFateシリーズに登場するアストルフォくんぐらいなのですが、この2人に共通するのは、彼らが限りなく女性っぽい見た目や声を持っていながら(声について言えばそもそもキャストが女性なのですが)、同時に女性にはない魅力を持っているところで。その魅力ってなんなんだよと言われると説明できないのですが…とにかくそんなわけでこのアニメは波戸くんが斑目先輩にドキドキしたりする可愛い姿を拝むために見ているところがあります。あと上坂すみれのオープニングテーマも好き。
波戸くんの次に好きなキャラは荻上と咲さんです。初代のアニメからキャストが変更されて賛否両論あったみたいですが、僕はサトリナの咲さんはめちゃくちゃいいと思います。もちろん雪野五月バージョンがいいのは言うまでもないです。

プリンセスコネクト!Re:Dive
制作:CygamesPictures,監督・シリーズ構成:金崎貴臣,助監督:春藤佳奈,キャラクターデザイン:栗田聡美・楊烈駿・野田康行
よく「プリコネやってそう」って言われますけどやってないですよ(早口)
アニメは監督が大好きな「このすば」の金崎さんだったので見ました。この人のギャグアニメは実家のような安心感がありますね。
コッコロのミッフィーみたいな表情が好きでした。キャルにはもう少し頑張ってポンコツヒロインとしてアクアの衣鉢を継いでほしかったです。

かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~
原作:赤坂アカ,制作:A-1 Pictures,監督:畠山守,シリーズ構成:中西やすひろ,キャラクターデザイン:八尋裕子

1期素晴らしいなと思っていたのですが、2期でそれを上回るとは…。演出も絵もパワーアップしていてすげー!ってなりました。
ただTwitterで評判が良かった石上回は個人的にはそんなに好きになれませんでした。石上が助けようとした女の子の彼氏が悪役すぎるところが引っ掛かったのかな…なんか「俺ガイル」とかとやってることは似てる気がするのですが、決定的に何かが違うんですよね。石上を悲劇のヒーローにするために話を無理くり組み立ててる感があったのかな。でもエピソードはともかく石上本人は好きだし、彼と伊井野ミコの関係も今後動きそうな予感があるので楽しみです。
総じてすごく面白かったので、3期もぜひ作ってほしいです。

漫画(君のことが大大大大大好きな100人の彼女,映画大好きポンポさん

君のことが大大大大大好きな100人の彼女
原作:中村力斗,作画:野澤ゆき子

Twitterでスクショか何かが流れてきて気になったので読みました。中学校では失恋しまくっていた愛城恋太郎という少年が、高校に入ってからどんどん運命の女性に巡り合うことになるのですが、その運命の人というのが100人いて、しかも彼女たちは恋太郎と付き合えないと死んでしまうらしく…というぶっ飛んだ設定の物語です。
一応ラブコメということにはなるのですが、ほとんどコメディで、キレッキレのギャグや強展開の連続で非常に読み応えのある作品でした。「なんでそうなる!?」「あーもうめちゃくちゃだよ~!」とか叫びながら読むことでよりいっそう楽しめます。

映画大好きポンポさん
杉谷庄吾【人間プラモ】
友人に勧められて読んだ作品。映画の都ニャリウッドでアシスタントとして働いていた“映画の虫”ジーンが、敏腕映画プロデューサーのポンポさんから突然ある作品の監督に指名されるところから始まります。
独特のポップな絵柄と語り口で軽快に話が進んでいく漫画で、ちょくちょくいいシーンがあります。たとえばエンタメに徹して作った映画の編集データを、ジーンが気に食わなくなって衝動的に削除してしまうところなんかすごくいいのですが、やっぱり一番好きなのは2巻ラストですね。これはもうネタバレとかしないので、もし未読の方がいたらぜひ読んでほしいです。

小説(カラフル,応えろ生きてる星,あしたはひとりにしてくれ,あなたはここで、息ができるの?

カラフル
森絵都
生前に犯した罪のせいで輪廻のサイクルから外されてしまった“ボク”の魂が(天国か何かで行われているキャンペーンの?)抽選にあたり、もう一度生まれ変わるチャンスを得る…というお話。その達成条件とは、自殺を図った少年・真の体に“ホームステイ”して、自分の罪を思い出すこと。真の体に入り目覚めた“ボク”は、彼としての日常を過ごすうちに色んなことを考えるようになります。
輪廻ってそこからの解脱を目指すものじゃないんかいとか、抽選ってなんだよ雑すぎるだろ、とかいう無粋なツッコミはすべて脇に置くことにして…。読んでみるとすごく読みやすくて、登場人物のやりとりもユーモラスだったりして、面白かったです。すごくサクサク読めて、けれども考えさせられるところは考えさせられて、小・中学校時代に課題図書になっていた記憶があるのですが、納得でした。母親の手紙のくだりとか、真の兄が医学部志望になった理由が明かされるところとかが好きです。
森絵都は読んだことがなく、はっきりしたきっかけがあったわけでもないのでなぜ手に取ったのか謎なんですが(読み終わって二か月くらい経ってからこの文章を書いているので忘れてしまいました)、おそらくは自分のそのときの状況に照らしたときに、作品の内容について思うところがあったのだと思います。
機会があったらアニメ映画の方も見てみたいです。

応えろ生きてる星
竹宮ゆゆこ

実はあるきっかけから竹宮ゆゆこにどハマりしたことがあり、アニメ「とらドラ!」を見たり「ゴールデンタイム」「知らない映画のサントラを聴く」などの一部作品を読んでいたりした時期があったのですが、ブームが再燃しました。物語は結婚を控えた会社員の廉次が謎の女に「あなたはいずれ、必ず、私のことを思い出す」「奪われて、失って、私のことが必要になる」という言葉を投げかけられ、キスをされたところからスタート。その後、婚約相手に見知らぬ男と駆け落ちされた廉次が、この女との再会を果たすことになり…というお話です。
今まで読んできた竹宮作品はだいたい話が面白かったのですが、「応えろ生きてる星」はその中でもとくにすごい面白くて、この女の正体は?とか、婚約相手と駆け落ちした男は誰なんだ?などの謎要素もちりばめられりつつ、スピード感のある展開でぐんぐん読まされた感じでした。そういうエンタメ的な面白さもちゃんと確保しつつ、「小さい頃ね。私、地面に落ちてる石って、全部死んだ星だと思ってた」というセリフから始まるすごい印象深いエピソードや比喩を入れてきたり、共感できる一節をぽんと挟んできたりするのが竹宮節って感じですごくよかったです。こういう突拍子もないエピソードってどうやって思いつくんだろうな…。
でもやっぱり僕の中のベスト・オブ・竹宮ゆゆこは「知らない映画のサントラを聴く」なんですよね。読んだ当時、主人公の枇杷と自分の境遇に重なるところがあったのが大きいのかもしれないですが。

あしたはひとりにしてくれ
竹宮ゆゆこ

「応えろ生きてる星」に続いて。こちらは積読していたのを改めて手に取ったという感じでした。主人公は進学校で学ぶ優等生で、家族思いの高校生・月岡瑛人。表面上順風満帆に過ごしているように見える彼ですが、月岡家の養子であるという不安からか、自分の生まれとゆかりのあるくまのぬいぐるみを、カッターナイフでめった刺しにして殺すという儀式を定期的に行っていました。そんな彼がいつもぬいぐるみを殺している場所に行くと、そこには土の中に埋められた半死状態の女性が。物語はそんな彼女を瑛人が助けるところから始まります。
竹宮ゆゆこ本人がインタビューで「瑛人は自分だけが孤独だと思っています。でも、私は、一歩目に『深いところではみんなそうだよ』ということを書きたかった。二歩目に『そして、君も孤独だ』と伝えたかった。自分だけでなく、みんな孤独ということに気付けていない視野の狭さ、未熟さが、この物語の始まりです。自分の孤独にしか気づけない若さを書きたかった。そして、三歩目が『そのことを否定しない』というものでした。それは当たり前なことだと」と言っていて、本当にそういうことが書かれている作品だなと思いました。瑛人とこの半死状態だった女性(作中では「アイス」と呼ばれています)の関係性もよくて、個人的には後半の展開が好きです。
あと色んな人がTwitterなどで言っていますが、タイトルの意味がわかるところがよかったです。

あなたはここで、息ができるの?
竹宮ゆゆこ

おまえどんだけ竹宮作品読むんだよって感じですがもともと作家読みするタイプの人間なんですよね…。
けっこう前衛的な表現が多くて、時間ループSFで、時系列をかなりシャッフルしていて…かなりの異色作だなと思いました。どうやら交通事故で死にかけているらしい邏々という女の子の一人称語りで話が進行するのですが、そこに途中から宇宙人が現れて、彼に導かれた邏々が何度も過去をやり直すことになる…というストーリーです。
「紫色のクオリア」が好きな人間なので面白く読めましたし、これは竹宮ゆゆこの新境地だなと思いました(あと出来の良し悪し関係なく、こういう面白い試みは個人的に好きです)。ただこの人の持ち味であるグッとくるエピソードや細かい心理描写があんまりなかったり、それぞれのエピソードが情報不足な感じがしていて、もう少し紙幅取ってあれこれ書いていたらもっと楽しめたなぁと思うところもあり。でもこういうギミックに凝った話って、そもそもエピソードを積み重ねて登場人物の心理を立体的に描くみたいなことに向いてないのかもしれないですね。「紫色のクオリア」もそんな感じだった気がします。
僕はハードカバー版を買ったのですが、文庫のカバーイラストは「ブルーピリオド」の山口つばさが描いているんですね。こっちもデザイン的に欲しいので買ってしまうかも…。

映画(泣きたい私は猫をかぶる,劇場版SHIROBAKO

泣きたい私は猫をかぶる
制作:スタジオコロリド,監督:佐藤順一・柴山智隆,脚本:岡田麿里,キャラクターデザイン:池田由美
実は「ペンギン・ハイウェイ」も「薄明の翼」も見ていないのでこれが初スタジオコロリド作品でした。6月に映画館で公開予定でしたが、新型コロナの影響でNetflix配信になった長編アニメです。この作品は、空気を読まない言動で周囲から“ムゲ(無限大謎人間)”と呼ばれている中学二年生の女の子・笹木美代が、猫の姿になれる不思議な仮面を手に入れるところから始まります。彼女は思いを寄せるクラスメイト・日之出賢人のもとに猫となり通うのですが…もうなんかこのキャラクターにムゲとか謎のニックネームをつけてしまうあたりが岡田麿里~!って感じですよね(悪い意味ではなく)。ほかのスタッフの発案かもですが。
後半の尺が長すぎたのが理由の1つかなと思うのですが、すごく絶賛できる! みたいな作品ではありませんでした。ただ絵がとにかく綺麗だったのと、セリフの掛け合いがすごくリアルで活き活きとしていて「うまいなぁ」と思わされるシーンがあって、個人的には心に残りました。好きなシーンだけかいつまんで何度も見直したい。
あと、ムゲが「世界なんて滅んじゃえばいいのに」的なことを言うところは共感できるポイントでした。何もかもが嫌になって、ぽんとそういうことを言いたくなってしまうことって自分にもあるな、と。それから、一見外から見ると意味不明で何考えてるのか分からない彼女が、実はいろんなことに悩んでいて、普段はその姿を人に見せないようにしている(=猫をかぶっている)のもよくて。こういう複雑というか、陰影のあるキャラクター描写にはつい惹きつけられてしまいます。

劇場版SHIROBAKO
制作:P.A.WORKS,監督:水島努,シリーズ構成:横手美智子,キャラクターデザイン・総作画監督:関口可奈味
実は前クールのオタ活まとめでも挙げた作品ですが、2回目を見に行きまして…。緊急事態宣言が解除された直後を狙って行ったのですが、入場前にサーモグラフィー検査があったりなんだりで、前回とは状況が変わっていましたね。
同じ映画を2回見に行くことは珍しくないのでわざわざ言及しなくてもいいかと思ったのですが、初見より感動してしまい、やっぱ名作だなと思ったので、それだけすばらしい作品なんだということを主張するために載せておこうかなと。こういう状況じゃなきゃもっと見に行けたのにな…もう上映は終了してしまったようなのでBlu-rayの発売を待ちますが、場合によっては再上映とかあるのかな?

ドラマ(仮面ライダービルド,仮面ライダーエグゼイド,仮面ライダー龍騎)

仮面ライダービルド
監督:田崎竜太ほか,脚本:武藤将吾

2017年から2018年にかけて放送された平成仮面ライダーシリーズ第19作。宇宙飛行士が火星から持ち帰った謎の箱“パンドラボックス”が生み出した巨大な壁によって、3つに分断された日本が舞台です。主人公は記憶喪失の物理学者・桐生戦兎。仮面ライダービルドとして活動していた彼の運命は、殺人の濡れ衣を着せられた元ボクサー・万丈龍我と出会ったことから大きく動き出します。
本作を見始めたきっかけは、仮面ライダーシリーズの中で唯一まともに見たことがある鎧武の話で友人と盛り上がったこと。そこから仮面ライダー熱に火がつき、初期フォームのデザインが好きなビルドから見てみることにした次第でした。
この作品の長所はとにかく話が抜群に面白いところです。たとえば序盤には、万丈が犯人の濡れ衣を着せられた殺人事件の真実や、戦兎たちの前に現れる謎の敵の正体が少しずつ明かされていく展開に惹きつけられます。その後も味方の裏切りや意外な真実の開示によるどんでん返し、子供向けの番組でそんなことしちゃうの? というくらいのエグい展開、少年心をくすぐる仮面ライダー同士の公式試合など、熱い展開が盛り沢山。48話という話数にもかかわらず、終始飽きることなく見続けることができました。
とくに好きなエピソードは第47話「ゼロ度の炎」です。「家庭教師ヒットマンREBORN!」を読んで育ったオタクなのでこのサブタイトルからしてかっこいいなと思うのですが、このエピソードで1番かっこいいのはなんといってもサブライダーの1人・仮面ライダーグリス。ネタバレになるので詳細は割愛しますが、変身シーンで彼が言うセリフが短くシンプルながらも最高に決まってるんですよね…。あと個人的には最終話の終わり方も面白くて。最後の最後まで予想外の伏線回収(というより設定開示?)があるのが本作らしいなと思います。
ストーリーやキャラクター以外で印象に残ったところは、毎話の冒頭に入るナレーションです。序盤は「火星で発見されたパンドラボックスが引き起こした『スカイウォールの惨劇』から10年。 我が国は、東都、西都、北都の3つに分かれ、混沌を極めていた…… 」というナレーションからOPに入る流れがめちゃくちゃ好きでした。
欠点は戦兎が苦悩するシーンが多すぎて多少ぐだぐだするところと、心理描写が少しガバガバなところでしょうか。ただそれを補って余りある魅力のある作品でした。

仮面ライダーエグゼイド
監督:中澤祥次郎ほか, 脚本:高橋悠也
ビルドの前作にあたる平成仮面ライダーシリーズ第18作。2016年から2017年にかけて放送されていました。
この作品の最大の特徴は、なんといっても「医療」と「ゲーム」という一見かけ離れた2つのモチーフが組み合わされていること。そのためストーリーも設定もかなりユニークです。大まかなあらすじは、人間に感染する新型コンピューターウイルス・バグスターウイルスが発生した世界で、このウイルスが引き起こす通称“ゲーム病”を治療するため、医療関係者が仮面ライダーとなって奮闘する…というもの。そのため本作では戦闘=医療行為で、その敵は患者の体内で育まれ、ゲームキャラクターの姿を成すに至ったバグスターウイルスです。仮面ライダーのビジュアルそのものも目が描きこまれていたり髪があったりとかなり特殊なので、平成仮面ライダー史のなかではイロモノの部類に入るのかもしれません。
この作品はとにかくキャラクターがいい。本作のスタッフはギャップ萌え描写がうまいので、主人公である宝生永夢以外のライダーはだいたい第一印象が悪いのですが、物語が進んでいくにつれどんどんいいキャラになっていくんですよね。主義主張は違えど、それぞれ「患者の命を救う」「患者の命に対して責任を持つ」という信念にかけては一致していて。一見自己中心的に見える行動や、冷たい態度などが、実はそれらの信念に基づいていることが明かされていく。そのギャップに痺れるというか。
もちろんライダーの全員がそうではなくて、たとえば仮面ライダーゲンムは倫理観もクソもないサイコなキャラクターだったりするのですが、彼は彼でクセが強くて別の意味で魅力的です。とにかくサブライダーがみんないいんですよね。
それからエグゼイドはコンセプト、設定、対比関係がよく考えられていて、そこもお気に入りのポイントだったりします。たとえば「ゲーム」と「医療」が「コンテニュー可能なゲームとコンテニュー不可能な命を救う医療」というふうに対比されていたり。この対比に沿って(ネタバレ注意です)ゾンビもののホラーゲームをモチーフにした不死身のキャラクターが敵に据えられたりするのですが、こういったところはよく工夫されているなぁと思いました。
とくに好きなエピソードは第38話。あとなんといっても主題歌の「EXCITE」が最高にかっこよくて、iTunesで即ポチってしまいました。

仮面ライダー龍騎
監督:田﨑竜太ほか,脚本:小林靖子ほか
「戦わなければ、生き残れない!」のキャッチコピーでおなじみの平成仮面ライダーシリーズ第3作。2002年から2003年まで放送されていました。
物語の大きな枠組みは「13人の仮面ライダーたちが最後の1人になって願いを叶えるため、鏡の向こうの世界でバトルロワイヤルを繰り広げる」とシンプルかつ面白そう。ただ実際に見てみると時代もあってか結構ぐだるところが多いです。かなり年代も毛色も違うため比べるものでもないと思うのですが、やはりビルドやエグゼイドの方が数倍は面白かったなと。
ただ、この作品はエグゼイド同様にいいキャラクターが多いんですよね。とくに僕が好きなのは北岡秀一という若手のエリート弁護士。仮面ライダーゾルダという銃火器を使って戦う遠距離型のライダーに変身します。
このキャラクターの何がいいって、まず俳優がイケメンなんですよね。スッキリしたザ・二枚目という顔で、高身長で、ちょっと投げやりな感じの喋り方がカッコいい。また、このキャラクターは不治の病に罹っているのですが、それをほかのライダーや好きな女性には明かさず、カッコつけてるところもいいんですよね。そしてなにより、ほかのキャラクターに比べて、俗っぽいところ、人間臭いところがいいなと。
作品そのものの話に立ち返ると、個人的には最終回手前の展開も面白いなと思っています。あんまり言うとネタバレになるので言わないのですが、主人公が最終話手前であんなことになるってほかの作品ではあまり見ない気がします。その新鮮さもあいまって、心に残る終盤でした。


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