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オタ活まとめ:2020年冬クール

0,雑感


良くない癖だなーと思うのですが、目移りしがちで1個1個の作品をきちんと咀嚼せずに次の作品に行っちゃうんですよね。そんな人間がいる一方で、僕の友人には『うみねこのなく頃に』や『シャーマンキング』について1年も2年も延々と語っているキモオタクもいたりして。まぁキモいんですけどちょっと羨ましくもあるなぁ…。

冬クールは全体的にアニメがあんまよくなかった(あくまで個人の感想です)ため、自然と小説や漫画に触れることが多かったです。とくに漫画はマイブームだったので、いろいろ読みました。なのでほとんど漫画の話になりそうです。キリがなくなるので、完結を見届けた&最新話まで追ったものだけ振り返ろうと思います。

1,漫画(東京ラブストーリーチェンソーマン,ファイアパンチアクタージュ act-ageメイドインアビスめぞん一刻はねバド!呪術廻戦アイシールド21フルーツバスケット)


東京ラブストーリー
柴門ふみ

小学生の頃に読んだのですが、話を忘れてたので頭から読み返しました。きっかけは再ドラマ化の報せを聞いたこと。旧作の方は世代じゃないので見てないんですが、当時ハマってた人的には今回のドラマはどうなんですかね…。
読み直して改めて思ったのは三上が嫌いだなぁということ。こういう個人的なトラウマで他人を振り回す感傷的なナルシスト男って一番嫌いなタイプなんですよね。共感できる部分がすごいあるので同族嫌悪なんだと思いますが…彼は彼なりに大変だったんだよねとは思いつつ、やっぱさとみが可哀想だなという気持ちが先に立ちます。
とはいえ、こういういや〜なところのあるキャラ造形にはそれだけにリアリティがあって、そういうところ含めこの作品が好きみたいなところがあったので、読み直せてよかったなと。なおさとみが可哀想とか言いましたが、女性キャラなら個人的にはリカの方が好きです。まぁ一番なんだかよくわからないキャラクターではあるのですが…。

チェンソーマン
藤本タツキ

前々からTwitterで切り抜きが回ってきて気になってたので手に取った作品。とにかくSNS映えする良いシーンやセリフが多く、キャラクターもみんな魅力的ですね。個人的にはパワーちゃんが好きで、その次はマキマさんと姫野とレゼちゃんかな(女性キャラばっかり…)。性格悪いキャラとかクズキャラとかポンコツキャラとかが好きなので、パワーちゃんはどストライクでした。
特徴としては、話が面白いタイプのコンテンツというよりは瞬間瞬間のシーンやセリフで魅せるタイプのコンテンツということ、あと作者がそういうの苦手なんだと思うんですがウェットな人間ドラマや葛藤がないことですかね。そういう意味の人間味は姫野さん亡き後アキが1人で担ってる気がしますが、最近は天使の悪魔もそんな感じ…?

ファイアパンチ
藤本タツキ

『チェンソーマン』がめっちゃよかったので作家買いしました。ふつうに復讐譚だと思ったらあれよあれよとすごいことになるのでびっくり。正直ついていけないなとも思ったのですが、結構哲学的に面白い話だったなというのと、こういうものを積極的に作っていこうとする試み自体がいいなぁと思った作品でした。
個人的に連想したのは島田雅彦の『僕は模造人間』。キャラが自己を物語ったり定義したりしようとするたびに肘鉄を喰らわされるところに類似点を感じました。こういうの作る人が『チェンソーマン』を作るのはめちゃくちゃ納得できますね。藤本タツキへの信用が深まった作品。

アクタージュ act-age
原作:マツキタツヤ
漫画:宇佐崎しろ
『チェンソーマン』で味をしめ、ほかに面白いジャンプ漫画ないかな〜と手に取った作品。ここ最近読んだ漫画の中では一番ゾクゾクしました。
1〜3巻まではいいなぁ、くらいなのですが、3巻途中から始まる『銀河鉄道の夜』編やそのあとの『羅刹女』編がとにかく桁外れにいい。素晴らしいコマやモノローグのオンパレードで、キャラクターもめちゃくちゃ魅力的。演技を題材にした作品なのですが、作中で取り扱われる映画や演劇の物語と、キャラクター自身の境遇を重ね合わせてくる技法がまたニクい。あとはキャラクターたちの作品や役作りにかける熱の入れようが見どころだと思います。
キャラとしては百城千世子が一番好きなんですが、夜凪景も甲乙つけ難く感じる…人気投票の順位まんまなんでこれは読者の総意なんだろうな…。

メイドインアビス
つくしあきひと

言わずと知れた名作。ロリコン、ショタコン、ペドフィリア、ケモナー、失禁、リョナなど作者の性的嗜好をこれでもかと詰め込んだヤバい漫画です。これはいい意味ですが、この作品が世間的に評価されているのはすごいことだと思う。
世界観や設定のディテール、キャラクターの濃さなど良いところはいろいろありますが、一番にはアビスに感じる底知れない不気味さが魅力かなと。
好きなエピソードはベタですがナナチがミーティを失って泣くところと、黎明卿がプルシュカをカートリッジにしちゃったことがわかるところです。

めぞん一刻
高橋留美子

実は高校のときに友人から借りたのがきっかけでめちゃくちゃハマってたんですが、終わるのが嫌すぎて最終巻を読めていなかった作品です。でもいつまでもそんなこと言ってても仕方ないなと思い立ち、このたび最後まで読み通したという次第でした。
この作品の魅力はなんといっても五代くんと響子さん。五代くんの情けないところやどうしようもないところはめちゃくちゃ共感できるし、反面ひたむきで優しいところは尊敬できる。響子さんは男どもに(無意識に)気を持たせておきながらはっきりせず、そのくせ焼きもちだけは焼くというちょっと性格の悪いキャラクターですが、そこが可愛くもあり。この2人の人間味あるキャラクター造形が本当にいいんですよね…。掲載誌の問題か、ほかの高橋留美子作品よりリアル寄りな感じで。
あとは響子さんの未亡人という設定が作品全体にちょっとアンニュイな雰囲気を与えているのもいいのかもしれないですね。基本的にはコメディなんですが、ちょっぴり切ない。
好きなシーンはいろいろありすぎるのですが、終盤に絞るなら総一郎さんの墓前のシーンです。五代くんが響子さんの総一郎さんへの気持ちをどう受け止めるのかずっと気になっていたので、五代くんのセリフを読んで心底この男に惚れましたね…。名作。

はねバド!
濱田浩輔

以前、本作の特集記事で作者インタビューを読んだことがあり、それが印象に残っていたので手に取りました。これは最近一番ハマった漫画です。あまりに周りに語り合える人がいなくてフラストレーションが溜まったので紹介記事を書いたりしてました。
1〜3巻くらいまではそんなにでもないんですが、4巻あたりからどんどん面白くなる。伸び方がすごいコンテンツです。
絵柄がめちゃくちゃ変わったり、肝心の主人公の考えてることがとにかくわかりづらかったりと、問題だらけではあるのですが、それを補って余りある長所があります(なんなら絵柄の変化も僕は好きですが)。ケレン味たっぷりで、モノローグが独特、試合描写がいい。キャラクターも濃いです。1周目はなぎさと志波姫唯華が好きだったんですが、10回くらい読み直した今は綾乃とか益子泪も好き。でも語り出すとキリがないのでこれくらいにしておこうかな…。

呪術廻戦
芥見下々

周りが読んでたので読んだのですが、想像の5倍くらいよかった。実は『HUNTER×HUNTER』大好きなのですが、芥見先生も影響を受けているらしく「同志!」と言いたくなる演出や台詞回しがいっぱいあったのがポイント高かったです。
たぶんいろんな人が言ってると思いますが、筆致とかセリフ回しに凝るところとか雰囲気とかが『チェンソーマン』に似ていますよね。ただこっちの方がキャラが正しさとは何かみたいなことに悩んでたり、ストーリー展開がちゃんとしてたりして、少年漫画してる気がします。どちらがいいとか悪いとかではなく。
あと2作の共通点を挙げるとすれば、学歴差別発言が出てくるところですね。キャラクターが学歴差別をするジャンプ漫画は名作。

アイシールド21
原作:稲垣理一郎,作画:村田雄介

友人が事あるごとに勧めてきたので、そこまで言うなら読んでみるか…と読んでみた作品。『Dr.STONE』のアニメを見て稲垣理一郎の名前を知ったのもきっかけだったかな。
この作品も序盤はふつうに面白いくらいなんですが、アメリカ合宿あたりからどんどん良くなります。とくに最初にすごいなと感じたのはvs巨深ポセイドン戦。これはめっちゃしつこく言ってるんですが、凡人なら終盤のセナがタッチダウンしかけるところ、そのまま終わらせちゃうと思うんすよね。あそこで一捻り入れて面白くした上に小結に見せ場を作って締めるのは天才。ただ一番いい試合はvs神龍寺ナーガ戦かな。
それから個人的にこの作品の評価が上がったのは、エクストラステージともいえるクリスマスボウル後のアメリカンフットボールユースW杯編。アメフトなんだから最後はアメリカと戦わないとダメでしょって発想もすごくいいのですが、それにもましてここでこの作品のテーマがわかったのがよかったんですよね。
稲垣理一郎はいろんな対立項を作るのがうまいのですが、序盤から頻出するのは天才vs凡人という対立で、それはスポーツで言えばフィジカル面でどれくらい恵まれているのかということ。このエピソードにはそれが如実に現れていて、日本国内では一番ガタイのいい峨王や、(進などと並び)最速の脚力を持っていたセナが、アメリカの選手たちにそのお株を奪われてしまう。身体能力の差で敵わないんです。
だけど彼らは持たざる者として、それまでに培ってきた努力や経験や戦略をフル活用して相手に立ち向かっていく。この作品はそういうジャイアントキリングを1つのモチーフにしていて。でもそういう天才vs凡人とかジャイアントキリングみたいなことよりももっと普遍的なことを稲垣理一郎は伝えようとしてるんじゃないかと思うんです。
それは壁にぶつかったときに、どうやってその壁を乗り越えるか、そのあがき方みたいなものなのかなぁ、という。それは頭を使うということもそうだし、足りないものをいかに補うかということもそうだし、心が折れそうなときにどうやって気持ちを持ち直していけばいいかということもそう。そういう強くなる方法、困難に立ち向かう方法みたいなものを、アメフトという特定のスポーツを通じてさまざまな側面から描いているというか。で、じゃあそれを誰に向けて伝えているのかと言えば、少年にだと思うんですよね。そういう困難への立ち向かい方みたいなものって経験や環境に恵まれないとわからなかったりして、それがわからないと歳食ってからも自信が持てなかったり、鬱屈としたりするので、できれば子供のころや10代のうちに学んでおきたいことだったりする。なので、子供にそういうふうに困難を乗り越える方法を見せることってたぶん大事なことで…それを伝えようとしてるこの漫画ってめっちゃちゃんと少年漫画してるじゃんと。そういう意味ですごくいい作品だなと思いました。
ちなみに好きなキャラクターは蛭魔です。まぁ現実にいたら脅迫手帳作ってたりめちゃくちゃ最悪な奴なんですが、リアリストで計算高いのに、リスクを恐れず賭けに打って出る度胸や秘めた情熱があるところが好きですね。栗田やムサシとの関係もめちゃくちゃいいし…。
村田雄介の神がかった作画も相まって全体的にクオリティがめちゃくちゃ高い作品なのですが、強いて難点あげるとすればごくたまーにPC的に怒られが発生しそうな表現があるところでしょうか。

フルーツバスケット
高屋奈月

僕らの世代と、そのちょっと上くらいがどストライクな作品でしょうか。僕も幼い頃にちょっとだけ旧アニメを見ていて、岡崎律子の『For フルーツバスケット』がめっちゃ好きでした。ただアニメは最後まで見ておらず、原作も読んだことがなかったので、今回初めてその全容を知った形になります。
この作品についてまず思ったのは、キャラに共感できないな、ということでした。全体的に(絵的な意味ではなく心理的な意味で)キャラ造形がデフォルメされすぎていることが原因だと思うのですが、まず透くんはいい子すぎるし、十二支の皆さんは設定が設定なのでどれくらいつらいのかもわからず、なんであそこまで酷いことをされて慊人から離れられないのかも(設定としては理解できても気持ちとしては)よくわからない、という。各キャラのトラウマ回想で出てくる加害者側の人たちにしても、そんな露骨にひどいことふつう言わんだろう…と。僕が周囲の人間に恵まれっぱなしなのでそうなるのかもですが。
というわけで個々の具体的なエピソードについてはちょっと気持ちがついていけなかったのですが、言わんとしていることはわかるし共感できるので、そのおかげで最後まで読めたのかなぁという感じでした。
とくによかったのは終盤で、伏せられていた過去エピソードが語られたり、伏線が回収されていくにつれて物語にのめり込めるようになりました。こっちが気になってるキャラの気持ちや状況をどんどん描いてくれるのもすごくよかったですね。話の畳み方もよかったし、振り返ると過不足のないすごく適切な巻数だったなと。あと、やっぱり僕はいいところしか見えないキャラクターより欠点や醜い感情を見せてくれるキャラクターの方が好きなので、透くんのそういう側面が恋愛感情を通して描かれていたのもよかったです。16巻くらいからの流れですごく好きになれた作品でした。
共感できないと散々言いましたが、その中でも(おこがましいですが)由希くんは結構身近に感じられたキャラクターだったかなと思います。人との間に壁を作ってしまうところや、自分は詰まらない人間だという意識から、夾みたく人を自然と引きつける人に羨望を抱いてしまうところなど、めちゃくちゃわかるなぁ…と思いながら読んでました。でもそういうコンプレックスを抱えてても、それに酔ったりいじけたりして「自分が自分が」ってならずに、人に優しくできるのが由希くんのいいところですよね。それはもちろん透くんのおかげでもあるのですが。あと、終盤にある夾とお互いの気持ちをぶつけ合うところがほんとに好きで。あれはいいシーンが多いフルバ全編の中でも屈指の名シーンだと思います。

2,小説(月の満ち欠け,賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 ~愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド~)


月の満ち欠け
佐藤正午

初の佐藤正午でした。とにかく語りの順序や謎の仕掛け方でグイグイ読まされる、ものすごく面白い小説。
ただ、個人的にはこの作品の魅力はモチーフにあると思っていて…ファム・ファタールとか輪廻転生とか無限に好きなので最高でした。萩尾望都の『ヴィオリータ』や三島由紀夫の『豊饒の海』を思い出したりしましたね。

賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 ~愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド~
著者:有象利路,イラスト:かれい

シコる好き・自慰ライフの大いなる探求(意味深)ってことなんですが、要するに頭の悪い低俗小説です。こんなものを読んでいる人間はお里が知れるわよって感じなんですが、こういうメタ発言とかクソどうしようもない下ネタとかパロディとか満載のくだらない作品が昔から大好きなんですよね…。というわけでこの場合のくだらないは褒め言葉です。
かれいさんの描くサヨナちゃんが可愛い。

3,映画(ワイルド・スピード/スーパーコンボ,パラサイト 半地下の家族,劇場版『SHIROBAKO』)


ワイルド・スピード/スーパーコンボ
監督:デヴィッド・リーチ,脚本:クリス・モーガン,出演:ドウェイン・ジョンソン,ジェイソン・ステイサム ほか

こういう一回見てスカッとして忘れるタイプのよくあるアメリカ映画、マジで興味ないんですが、友達に見ようぜと言われて見ました。でもやっぱ見ると面白い。
ステイサムがいいよね…(にわか並みの感想)。

パラサイト 半地下の家族
監督:ポン・ジュノ,脚本:ポン・ジュノ,ハン・ジンウォン,出演:ソン・ガンホ ほか
なんか見た後にちゃんと感想をメモしなかったので、話がとにかく面白かったってことしか覚えてない…。監督にその意図はなかったとどっかのインタビュー記事で読んだ気がするのですが、こういうトラジコメディなテイストはすごい好きです。
個人的に家で寛いでたくだりがほんとうに心臓に悪くてやめてほしかったですね。サスペンス耐性がなさすぎる…。

劇場版『SHIROBAKO』
制作:P.A.WORKS,監督:水島努,シリーズ構成:横手美智子,キャラクターデザイン・総作画監督:関口可奈味

じつは最近、宮森あおいにガチ恋してしまいまして…なんで僕は2次元に生まれなかったのかと……。
劇場版、結構イマイチだったという人もいるらしく。そういう人は序盤で問題が提示され、何か決定的な事件が起こり、なんやかんやとキャラが東奔西走して、最後にドッカンと感情の振れ幅がデカいクライマックスが来て大団円、みたいなジ・映画的な構成を期待していったからアレだったのかなと個人的に考えているのですが、どうなんでしょう。
そういうタイプのストーリーではなかったと思うんですが、僕はすごい好きでした。やっぱりこの作品の魅力は横手美智子の台詞劇だと思うので、それが存分に楽しめたというのが1つ。それから「頑張っていても、どうしようもない偶然や不幸のせいで結果が伴わないこともある」というシビアな現実をちゃんと描いていたところもよかったし、おれたたエンドのくだりもすごいよかった。なんか語彙力死んでるんですが、一回しか見てなくて個々のシーンの記憶が薄れてきているので仕方ない…。
一番好きなシーンを挙げろと言われるとめちゃくちゃ迷うんですが、瀬川さんと遠藤さんがやりあった後で、瀬川さんがガチ落ち込みしてるとことか、あと遠藤さんと遠藤さんの奥さんが帰りにビール飲むとことかすんごい好きですね。あとは終盤の作中作に本作のテーマを重ねてくるところもよかった。SIVAのこと全然知らないのに演出とか台詞だけで泣かせてくるのなんなんだよと。あれ映した後で宮森が出てきて…すごくいい終わり方ですよね。ほかにああいう締め方する作品ってないんじゃないでしょうか。すごくユニークで素敵なアイデアだったと思います。
しかし、コロナウイルスのせいで興収伸びていないというのがなんとも。作品の内容と現実がマッチしすぎて悲しい気持ちになります。もっと儲けていい、本当にいい作品なのに…2度も劇場に足運ぶのは怖いけど、Blu-rayは絶対買って応援したいです。


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